道路の拡幅も完了し、新しい第一歩を踏み出した秋田市・通町商店街。同商店街で昭和30年代から現在に至るまで、生鮮食品にこだわり、「通町の顔」として親しまれ、業績を伸ばしてきたのが(株)せきや。今号では、同社の専務、関谷佐久雄さん(昭和26年生まれ)に話しを聞いた。


「(株)せきや」の専務 関谷 佐久 氏

 当社は、大正元年に、現社長の関谷春雄さん(昭和4年生まれ)の父母が、昭和町・大久保で生鮮食料品店として創業。昭和33年に現社長が独立。間口6間の店を秋田市・通町に構えたのが、現在の「せきや」に至る実質的なスタートであった。
 創業以来、当社に根づいている考えの基本は「企業に与えられた使命とは、社会への貢献と従業員の幸福を追求すること」という。「食」というのは、生命を維持するために必要最低限の「人の本能」であるが、読んで字のごとく「人に良くする」のが「食」である、この「食」を通して使命を全うするというのが社長の理念である。
 また、当社に受け継がれてきた教えが2つある。一つは「鰻をはじめとする魚を取り扱う者として、これらの霊を敬い、供養すること」。そしてもう一つは「己の身を削っても(すり減らしても)人に尽くし、自己犠牲と献身によるサービス精神を持った商人になること」。店舗脇の敷地内には「鰻塚」と「すりこぎ棒」が祭られており、今なお教えは息づいている。

教えが息づく「鰻塚」と「すりこぎ棒」

 これだけ企業規模が拡大した現在、多店舗化は?という思いも沸いてくるが「企業としての社会的な貢献として、お客様の食を守るのが大事。仕入れから販売まで自分の目で確かめ、安心して召し上がっていただけるものを提供したい。自分達で目の届く範囲となると、多店舗化は難しい」という。こうした考えも、あくまでも「人」、「食」に対するこだわりから導き出されたものだ。


 当社は、鮮魚、野菜の専門店としてスタート。また、山王、川反に近かったこともあり、料理店やホテルなどにも多くの得意先を有している。必然的に鯛、きんき等の高級魚からイワシ、サンマといった大衆魚までを日常的に品揃えすることが求められた。これが「せきやに行けばなんでも揃う」との高い評価を受け、他店にはない強みとなっている。
 また、当社は、品揃えを充実させながら人件費を節約できるスーパー形式の良さと、対面販売により直接顧客のニーズを肌で感じ取れる市場形式の良さをミックスした独自のスタイルを確立しており、こちらも評価は高い。
 「信用は無限の資本」であり、「品揃え良く、良い商品を安く」にこだわった長年の営業により、蓄積された顧客からの信用が、他店との差別化を一層鮮明なものとしているようだ。


 それにしても、「せきや」の従業員の方々は活気に満ち溢れている。一体このパワーはどこから生まれてくるのであろうか。
 当社は、鮮魚部門だけをとっても、大衆魚を取り扱う「大口課」、近海物のみを取り扱う「近海課」、刺身を取り扱う「大物課」など5部門にわけられている。
 その各部、課長に仕入れから販売、ひいては部下教育の権限を与え、責任を持たせるようにしているとのこと。「大変で苦しいとは思うが、企業の繁栄はいかに多くの人間が、経営者的感覚を持って働いているかにかかっている。そう信じ、実践している」そうだ。

 このため、毎月1回、幹部従業員会議において実績チェックを徹底的に行う。成果と反省を明確にし、お互いに切磋琢磨出来るようにしている。
 「こういう商売は毎日毎日が勝負。頑張れば結果が即、目に見えるのが励みになっているようです」と関谷さんは幹部従業員に対して全幅の信頼をよせる。
 また、社長、専務は毎日店頭に立ち、陣頭指揮をとっているが、若手従業員に対し直接指導することは少ないそうだ。責任を持ち、活き活きと働く先輩を見ていれば、自ずと教育がなされていくということだろう。
 従業員の幸福は、企業の繁栄なくして成り立たない。先に述べた、当社の掲げる経営理念の一つ「従業員の幸福の追求」がなされているかどうか、店の雰囲気をみれば一目瞭然である。

 現在、専門店の経営は厳しさを増しているが、関谷さんは「自治体とか、中央資本に頼りすぎのように思う。大型の資本が入ってこなければ商店街が生き延びていけない、との前提に立って物事を考えすぎてはいないでしょうか」、「今は全国どこにいっても同じ考え方の商店街ばかり。そういう所、全てが活性化しているとは思えません。もっと肩肘はらずに、地元のお客様に愛される店づくりをするべき」と語る。
 この言葉通り、一層顧客に愛される店となっていくため、根強い要望がある、午前9時から午後6時までの営業時間の延長や、共働き家庭の増加等に対応した、惣菜部門の一層の充実なども検討していくそうだ。
 今後も新生通町商店街の中核店として、繁盛が期待されている。

CORPORATION DATA

 ■社  名 株式会社 せきや
 ■所在地  秋田市大町1-4-22
 ■創  業 大正元年(1912年)
 ■代表者名 関谷 春雄
 ■電  話 018-862-5477
 ■事業内容

  鮮魚、精肉、野菜、惣菜など、生鮮食料の販売。 関連会社に、(資)仕出しのせきや、(株)貝の沢温泉、ツーマチ・セキヤ(不動産部門)がある。

あきない拝見 バックナンバー集へ戻る