秋田市にパティオ(中庭)のある
新たな商業施設が誕生

秋田パティオ協同組合(秋田市) 竹屋理事長


平成9年4月、秋田市大町1丁目の旧秋田魁新報社跡地に新しい商業施設が誕生し、全国的にも先進事例として注目を集めている。名称は「サン・パティオ大町」。2,252平方メートルの敷地にパティオ(スペイン語で「中庭」の意)を囲んで洗練された建物6棟を配置し、それぞれに個性的な10店舗が新装開店した。事業主体は「秋田パティオ協同組合」(理事長:竹屋直太郎、組合員9名)、秋田にはめずらしい都会的な商業空間としてにぎわいを見せている。

 
●大町の空洞化を危惧●

 パティオの立地する大町・通町地区は、秋田市の外町(商人の町)として栄えた歴史のある商店街だが、昭和30年代から秋田駅前や広小路地区へ商業の中心が移り、地盤沈下が進んできた。さらに、相次ぐ郊外へのショッピングセンター進出などにより、大型店の占有率は6割を超え、秋田市中心部の空洞化が大きな問題となっている。
 こうした状況を打開するため、大町地区では平成2年度からコミュニティマート構想など大規模な再開発計画を検討してきたが、事業化には結びつかず模索が続いていた。その後、同新聞社の移転計画が示され、「大町がさらに空洞化することを危惧した」竹屋理事長は、平成6年に高度化資金助成制度の一環として創設された「商店街パティオ事業」を導入して、集客核となる商業施設づくりに活路を見出そうとした。


パティオ(中庭)内のにぎわい

●共同化への取り組み●


 高度化制度の基本は、中小企業が共同して行う事業への助成である。「専門店としての独立性を保ち、自分でシャッターの上げ下ろしができること」にこだわる竹屋理事長も、パティオ事業ならやれると考えたが、それでもなお「組合に集約していくことには決断を要した」と言う。
 竹屋理事長の構想に賛同した商業者が、中小商業活性化事業の支援も得て、早速計画づくりに取り組んだが、ここでも産みの苦しみを味わうことになる。共同化事業の経験が少ない上、事例がないために、問題があれば組合員それぞれの主張を聞き、議論を重ね、話し合いで解決しなければならなかった。「当初の目的が達成できたのは、組合員の団結と周囲の人に恵まれたおかげ。それがなければ挫折していた。特に、コンサルタントの田中信先生や中小企業事業団、関係機関等には一方ならぬお世話になった。」と回想する。

●広場が集客効果を発揮●

 平成8年2月、県と中小企業事業団の診断が終了すると、計画は急速に具体化した。3月までに組合設立と土地の先行取得を終え、中小小売商業振興法の認定を受けて建設に着工したのが9月、平成9年3月下旬に竣工し、4月5日のオープンを迎えた。総事業費は18億円。うち高度化資金11.9億円に加え、広場や共同駐車場(40台収容)には1.9億円の補助金を受けている。
 設計はそれぞれの建物が個性を発揮しながら全体の回遊性に配慮されており、立体地盤やデッキで変化をもたせた。パティオのコンセプトである「出会いの回廊」、「にぎわいの場」、「くつろぎの空間」を演出し、ステージを客席が取り巻くような雰囲気が特徴である。ファッションショーなどのイベントに広場を活用し期待以上の集客効果を発揮している。

1階配置図

2階配置図

3階配置図

● 街を変える起爆剤●


 「サン・パティオ大町」がオープンし、商店街ににぎわいが戻ってきたことで、周辺の開発も動き始めた。南側にはカルチャースクールが開校し、東側には秋田市の中央部交流センター構想(平成11年開設予定)、地ビール製造販売を取り込んだ複合ビル計画(平成9年11月一部オープン予定)など、パティオを核として面的な再開発が進もうとしている。通町の商店街近代化事業も完成に近づき、街区全体の回遊性が高まり集客力向上がさらに期待される。
 街を変えるきっかけを作った竹屋理事長は「大規模な開発構想を立てて頓挫する例が多い中で、小さくても出来ることから着手し、周辺の再生を誘発できたことは、モデルケースになるのではないか」と自信を深めている。

● 変化への対応力に期待●

 オープニングは芸能人のトークショーとオークション。広場に溢れんばかりの人々を前に、これからが本当のスタートと気を引き締めていた竹屋理事長は「あるお客様から『こんなに楽しい所を作ってくれてありがとう』と言われたとき、今までの苦労がようやく報われ本当にうれしかった」と語る。お客様にいつまでも好印象を持っていただけるよう「変化への対応力」を基本理念とする「サン・パティオ大町」の一層の飛躍が期待される。


大町通りから見た外観

組合の概要

組合名   秋田パティオ協同組合
役 員   理事長 竹屋直太郎 外8名
設立年月日 平成8年3月1日
出資金   44,290千円(払込済額)
事務局   秋田市大町1丁目2番7号(株)竹半内
       TEL 0188-66-8810 FAX 0188-62-4752
組合員名簿
企業名代表者名パティオでの業種
(株)竹半代表取締役 竹屋 直太郎物販(スポーツ用品)
(株)ペペロンチーノ代表取締役 雑賀 清一飲食(イタリアンレストラン)
(有)あーく代表取締役 舩山 仁サービス(理美容)
和食すがわら      菅原 いく子飲食(味和食)
(株)総合教育アカデミー代表取締役 山崎 俊比古サービス(学習塾)
(株)時幸堂代表取締役 藤井 厚生物販(宝石・時計)
(株)松屋代表取締役 新開 仁物販(婦人服)
(株)F.Tフードサービス代表取締役 古川 毅飲食(レストラン&カフェ)
ヤマヨ商事(株)代表取締役 米澤 栄飲食(そば処)

事業主体:5人以上の中小小売商業者または中小サービス業者等が参加する事業協同組合
設置場所:商店街の区域または隣接地
制度要件:500平方メートル以上の敷地に店舗を建設し、併せて敷地の1/3以上を占めるオープンスペースに共同施設としての広場を一体的に整備すること
支援措置:小売商業振興法の認定を受けた場合
     1. 高度化資金の融資
      ・ 貸付対象施設(土地・建物等)
       設置費の80%以内
      ・ 償還期限20年以内(無利子)
     2. 商業基盤施設等整備費補助金
      ・ 公共的共同施設(広場・駐車場等)
       整備費の1/2以内
問合せ先:秋田県商工労働部商政課
       TEL 0188-60-2216

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