県内経済動向調査結果(9月)


製造業:コンデンサ類は海外向けを中心に好調
建設業:公共事業の受注に徐々に動きが見られる
小売業:紳士服、婦人服ともに売り上げ減少が続く

県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。(対象企業219社)



概  況


 県経済は、製造業においては、主力の電気機械が、コンデンサ類、液晶ディスプレイ、CD−ROMを中心に引き続き好調なほか、精密機械もはかり類、腕時計類等で前年の生産額・受注額を大幅に上回っている。木材・木製品、金属製品においては、長引く住宅着工数の低下の影響から一般製材、アルミサッシ、シャッター等で厳しい状況となっている。個人消費では、消費税率アップの影響等に伴う消費マインドの冷え込みが続くなど、県内経済全体において景気回復の足取りは重く、企業の景況に対する慎重感が増してきている。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は−16.0で変わらず、現在の資金繰りは−14.2から−16.9、3ヶ月先の業況見通しは−15.1から−17.8となった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年比5.6%増、同5.9%増。3ヶ月先の業況見通しDIは−15.6から−21.3となった。木材・木製品は、住宅着工数の低下に伴う沈滞ムードに加え、価格の下落に歯止めがかからず、特に一般製材において厳しい状況となっている。金属製品は、橋りょう・鉄骨で受注が低迷しており前年同月を大きく下回っている。電気機械は、コンデンサ類で海外向けを中心に堅調な伸びを示している。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年比18.3%増、同8.6%増。3ヶ月先の業況見通しDIは−9.4から−37.5となった。土木工事、建築工事ともに徐々に公共事業に動きが出てきているが、公共事業費削減など先行きに不安を感じているため、見通しは暗い。
 小売業では、売上額は前年比8.0%減。3ヶ月先の業況見通しDIは−16.9から−1.5となった。紳士服、婦人服ともに、消費の低迷や価格競争により前年同月実績を大きく下回っている。家電品は、ほとんどの店舗において売り上げが落ち込み、かなり厳しい状況となっている。
 有効求人倍率は、0.86から0.83となった。

 
DI値は各調査項目について、好転企業割合から悪化企業割合を差し引いた値です。

製造業の動向

1. 食料品
「ハム・ソーセージ類は価格低下などにより生産額が落ち込む」

 生産額は前年比0.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは−11.8から−5.9となった。
 パン類は、低価格志向にあった商品などきめ細やかなニーズに対応し、現状を維持している。酒造は特に若年層において日本酒離れが進行しており、お歳暮向け商品も他酒類商品との競合からあまり期待はできず厳しい状況にある。また10月1日に酒税法が改正されることにより、大幅な消費変動が予測され、先行きは不透明。ハム・ソーセージ類では、数量で微減が続いているうえに、売れ筋商品の単価も低下しており、生産額は前年同月を下回っている。

2.繊維・衣服
「婦人服、スポーツ衣料は好調に推移」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比1.7%の減、同0.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは−18.8から−12.5となった。
 ジーパンは子供用商品の受注が続いており、好調に推移している。婦人服では、秋冬物の生産が順調に進み、生産額を伸ばしている。スポーツ衣料は引き続き来春の受注が入っており、先行きは明るい。子供服は、単価が低下し、生産額、受注額ともに前年同月を下回っており、依然厳しい状況が続いている。

3.木材・木製品
「一般製材で生産額、受注額が著しく落ち込む」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比13.4%の減、同22.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは−45.0から−60.0となった。
 集成材は公共事業等の建築工事の受注があり受注額、生産額ともに前年同月を大きく上回っている。合板は、住宅着工数の低下に伴う沈滞ムードに加え、価格の下落に歯止めがかからず、厳しい状況となっている。業界全体としては、生産額、受注額ともに前年同月を大幅に下回っており、先行きも不透明感が強く、特に、一般製材において、受注が大幅に落ち込んでいる。

4.鉄鋼業
「鋳物、鋳鋼は依然スポット受注の傾向が強い」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比3.0%の増、同2.5%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−14.3から0.0となった。
 鋳物は依然スポット受注の傾向が強く、受注額そのものも低迷している。鋳鋼は海外向けの受注が増加しているが、鋳物同様にスポット受注の傾向が強いため、先行きも不透明。水道管継手は、引き続き生産額、受注額ともに前年並みで推移するものの、公共事業費削減による影響が懸念される。引き抜き管は、主として自動車向けの生産が大きく落ち込んでいるが、今後、携帯電話用の新規部品の受注に期待している。

5.金属製品
「橋りょう・鉄骨は前年同月を大幅に下回る」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比23.8%の減、同26.3%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは−11.1で変わらず。
 橋りょう・鉄骨は公共事業受注の低迷から、前年同月を大幅に下回った。シャッター、アルミサッシは建築工事不振による影響を工場間の生産調整を行うなどして、前年並みの受注を確保している。

6.一般機械
「金型、自動化省力化機械は引き続き好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比1.5%の増、同7.3%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−14.3から−28.6となった。
 金型及び自動化省力化機械は引き続き好調に推移しており、前年同月を大幅に上回っている。印刷機械、弱電省力化機械はともに好調で、今後も現状を維持する模様。スプレーガン類は輸出向けが好調であり、受注額、生産額ともに安定している。

7.電気機械
「コンデンサ類は海外向けを中心に引き続き堅調に推移」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比13.9%の増、同15.7%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは4.2から−4.2となった。
 積層チップコンデンサは海外向けを中心に受注が伸びており、アルミ電解コンデンサも受注額、生産額ともに伸ばし、引き続き好調となっている。しかし、この業種において今まで受注増加の主要因であったパソコン等の情報機器からの受注が減少傾向に転じたため、先行きが懸念される。液晶ディスプレイは引き続き好調に推移し、生産を伸ばしている。CD−ROM部品も、新製品の需要が増加し、フル稼働状態となっている。

8.輸送機械
「自動車用シートは新規車種の生産が好調に推移」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比1.7%の増同2.2%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは16.7から0.0となった。
 パワーステアリング関連製品は、前年に比べやや低調に推移している。また、今まで好調であった海外向けが今後落ち込むことが見込まれており、先行きは暗い。2輪車用部品はブレーキディスクやネジ工具が比較的好調で、前年の生産額を上回っている。自動車用シートは、新規車種の生産が好調に推移しており、来春ぐらいまでは受注が確保できる見通し。

9.精密機械
「腕時計類は安定した状況」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比22.7%の増、同21.0%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−33.3から−55.6となった。
 はかり類は、ヒット商品が引き続き好調に推移しており、生産額、受注額ともに大きく伸ばしている。光学レンズ類は、昨年ほどではないが、比較的好調に推移している。腕時計部品は、円安傾向にあることから、国内生産重視にシフトしており、安定した状況となっている。


建設業の動向

「公共事業の受注に徐々に動きが見られる」
 受注額、完工高はそれぞれ前年比18.3%の増、同8.6%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−9.4から−37.5となった。
 土木工事、建築工事ともに、一部の企業で公共施設建築工事や空港関連工事等の大型公共事業の受注があり、大きく実績を伸ばしているところがあるものの、企業によって格差が見られる。県全体としては徐々にではあるが公共事業の受注に動きが見られる。しかし、公共事業費削減などの懸念材料をかかえていることから、先の見通しは暗い。


小売業の動向

1.衣料品
「紳士服、婦人服で引き続き厳しい状況が続く」

 売上額は前年比8.1%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から−22.2となった。
 呉服は引き続き前年同月の売上高を上回り、好調となっているが、紳士服、婦人服ともに消費の低迷や価格競争激化により、売り上げが前年同月を大きく下回っている。大型店においても、売り上げの減少傾向とともに、落ち込みの幅も大きくなるなど厳しい状況となっている。

2.身回品
「日用雑貨は引き続き客足が好調」

 売上額は前年比0.3%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−25.0で変わらず。
 玩具は、利幅の大きい一般玩具が売れており、前年同月をやや上回る売り上げを確保している。日用雑貨は引き続き客足が好調で、売り上げが前年同月を大きく上回っている。カバン類は、売り上げの減少傾向が続いており、回復の兆しも遠い。

3.飲食料品
「酒類は大規模店との競合等により低迷している」

 売上額は前年比6.3%の減。3ケ月先の業況見通しDIは−47.6から−4.8となった。
 スーパーは消費税率アップの影響が和らぐどころか、次第に顕著になってきている感があり、前年割れの売り上げが続き、先行きも不透明。酒類は、大規模店との競合や飲食店の不振により低迷。

4.家電品
「家電品は依然かなり厳しい状況にある」

 売上額は前年比24.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは14.3から50.0となった。
 家電品は、オーバーストアの状況にあることからほとんどの店舗において大幅な売り上げの減少が続いており、かなり厳しい状況にある。暖房器具の出足も悪く、今後、年末商戦に期待したいところだが、この厳しい状況はしばらく続くことが予想され、先行きは暗い。



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