県内経済動向調査結果(10月)


製造業:木材業界は先行きに対する不安を一層深める
建設業:公共事業の受注が減少し、前年同月比でマイナスに転じる
小売業:暖冬の傾向が見られコート、暖房器具の出足が鈍い

県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。(対象企業214社)



概  況


 県経済は、製造業においては、主力の電気機械が以前ほどの勢いはなくなったものの、コンデンサ類、液晶ディスプレイを中心に引き続き好調に推移している。木材・木製品は、長引く住宅着工戸数の低下の影響から受注額を大きく減少させ、先行きに対する不安も一層深っている。個人消費では、大手金融機関の破綻や医療費負担の増加など消費者にとって暗いニュースが続き、消費意欲の低下が一層強まっており、県内経済は総じて景気は足踏み状態で、企業の景況に対する慎重感も一層増してきている。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は−16.0から−15.4、現在 の資金繰りは−16.9から−15.9、3ヶ月先の業況見通しは−17.8から−36.0となった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年比4.5%増、同5.5%増。3ヶ月先の業況見通 しDIは−21.3から−34.5となった。県内の主力産業の電気機械は、コンデンサ類で為替が円安傾向にあることも手伝い、海外向けを中心に堅調に推移している。木材・木製品は、住宅着工戸数の低下に伴う沈滞ムードに加え、価格の下落に歯止めがかからず、特に一般製材、合板において受注の落ち込みが著しく、好転する材料が見つからないこともあって先行きに対する不安感を強めている。受注が前年同月比でマイナスに転じていた金属製品は、県外からの受注獲得によりプラスに回復している。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年比14.5%減、同30.0%増。3ヶ月先の業況見通しDIは−37.5から−46.9となった。土木工事、建築工事ともに手持ち工事により完工高を上げているが、大規模公共事業を中心に受注が減少し、前年同月比でマイナスに転じている。
 小売業では、売上額は前年比2.8%減。3ヶ月先の業況見通しDIは−1.5から−33.3となった。消費マインドの冷え込みと暖冬等の傾向が見られ、暖房器具やコートなど冬物の出足が鈍くなっている。
 有効求人倍率は、0.83から0.81と低下し、今年度で最低値となっている。

 
DI値は各調査項目について、好転企業割合から悪化企業割合を差し引いた値です。

製造業の動向

1. 食料品
「酒造は、消費者の嗜好の変化や酒税法改正により低迷」

 生産額は前年比6.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは−5.9から−33.3となった。
 酒造は、ワイン等に押され、かつ、需要そのものの落ち込みから依然低迷している。さらに、酒税法改正によりウィスキーのシェアが伸びてきており、先行きも不透明。ハム・ソーセージ類は、お歳暮向け商品の引き合いが弱く、価格も低下していることから生産額を落としている。米菓は、消費税率アップによる影響をほとんど受けておらず、生産額は前年並みに推移している。

2.繊維・衣服
「子供服で暖冬による影響を懸念」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比8.2%の減、同5.2%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは−12.5から−18.8となった。
 ジーパンは子供用製品に加え、レディース製品の受注も確保し、年内は順調に推移する見通し。また、試作品のヒットに期待をよせており、先の見通しは明るい。スポーツ衣料も、引き続き来春の受注が入っており、先の見通しは明るい。子供服は、製品の単価が依然低迷しており、先行きも暖冬が予測されることから厳しい状況が続く見通し。

3.木材・木製品
「一般製材、合板とも落ち込みが著しい」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比21.4%の減、同33.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは−60.0から−75.0となった。
 一般製材、合板ともに、住宅着工戸数の低下に伴う沈滞ムードに加え、価格の下落に歯止めがかからず、受注額、生産額ともに大幅に落とし、厳しい状況が続いている。北洋材は、他の木材に比べ安価な製品を製造しているためか前年並みに推移しているが、市況の悪化が進んでいるため先の見通しは不透明。業界全体としては、生産額、受注額ともに引き続き前年同月を大幅に下回り、先行きも、3カ月先の見通しD.Iが−75.0と不透明感が一層深まっており、製造業の中において最も厳しい状況にある。

4.鉄鋼業
「鋳物で引き続きスポット受注の傾向が見られる」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比1.0%の増、同3.3%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−14.3で変わらず。
 建設機械部品は、弱含みながら前年並みの実績を確保しているが、価格の低下が止まっていないため収益面での改善は見られない。鋳物は依然スポット受注が多く、加えて継続受注が減少傾向にあるため、先行きに不安感がある。水道管継手は、受注額、生産額が月々によって変動するものの、通年でみると前年並みに落ち着く見通し。業界全体としては、生産額が8月以降減少傾向にある。

5.金属製品
「橋りょう・鉄骨は定期的受注が少なく回復ムードは低い」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比13.2%の増、同44.4%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−11.1から−22.2となった。
 橋りょう・鉄骨は、公共事業受注の低迷を、他県からの受注によりカバーし、生産額を大幅に伸ばしているが、スポット受注であるため上昇ムードには遠い。シャッターは、住宅建築不振の影響による受注の減少を、他県の工場との生産調整を行うなどして前年並みを確保しているが、この状況は当分続く見通し。

6.一般機械
「スプレーガンは円安傾向から輸出向けが好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比6.0%の減、同2.2%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−28.6から−30.8となった。
 産業機械は、ここ数カ月の需要増加傾向が続いており受注額を伸ばしているが、引き合いが減少傾向にあり、今後に不安を感じている。印刷機械類は、海外製品との競合が円安傾向によって緩和しており、全体的な受注低迷から脱しつつある。スプレーガン類においても、円安傾向により輸出向けが好調であり、受注額、生産額ともに回復してきている。

7.電気機械
「コンデンサ類、液晶ディスプレイ等は好調に推移するも、先行きに不安」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比11.0%の増、同12.6%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−4.2から−25.0となった。
 積層チップコンデンサ、アルミ電解コンデンサが海外向けを中心に堅調に推移するなど、コンデンサ類は総じて各用途で依然引き合いが多い。液晶ディスプレイ、CD−ROM部品も工場の稼働状況が良く経営は良好となっている。しかし、パソコン、移動体通信機器といった情報関連機器の需要が頭打ち傾向にあることなどから、先の見通しは良くない。

8.輸送機械
「パワーステアリング関連は輸出向けが好調であるが、国内向けが低迷」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比8.2%の増、同6.7%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から−33.3となった。
 パワーステアリング関連においては、米国経済が引き続き好調を維持し、円安傾向が続いていることから輸出向けが好調となっているが、国内市場が低迷していることから弱含みで推移している。4輪・2輪車用部品は、主要輸出先である東南アジアの市場が不安定なことから、輸出に陰りが見え出してきた。自動車用シートは、新規車種の受注、生産が好調で前年同月、前月を大幅に上回っているが、今後予定されていた受注が削減されることから、年内いっぱいで忙しさは落ち着く見込み。

9.精密機械
「光学レンズは高度な技術力により受注を確保」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比8.3%の増、同8.6%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−55.6から−33.3となった。
 はかり類は、ヒット商品が引き続き好調であることと、新商品の投入やメディアを利用した戦略 を展開し、受注額、生産額を大きく伸ばしている。光学レンズ類は、高度な技術力を生かして受注を安定して確保している。プラスチック金型関連は、前年同月に比べ大きく生産額を伸ばしているが、 主要取引先からの受注が減少傾向にあることから先行きに懸念を抱いている。


建設業の動向

「公共事業関連の受注が減少し前年同月比マイナスに転じる」
 受注額、完工高はそれぞれ前年比14.5%の減、同30.3%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは−37.5から−46.9となった。
 土木工事、建築工事ともに、一部の企業において大規模公共事業の受注を確保し数字を伸ばすなど、公共事業の受注の成否により明暗を分けている。全体としては、手持ち工事によりある程度の完工高を上げているが、大規模公共事業を中心に受注が減少し前年比マイナスに転じている。また、公共事業費削減などの懸念材料を抱え、先の見通しは不透明感を一層深めている。


小売業の動向

1.衣料品
「紳士服、婦人服は暖冬等の影響から出足が鈍い」

 売上額は前年比4.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは−22.2から−38.9となった。
 呉服は、イベント等の影響により引き続き売り上げを伸ばしている。紳士服、婦人服ともに冬物の売り出しの時期にあるが、消費マインドの低迷と気温が例年よりも高めに推移しているため、コートを中心とした高額商品の出足が鈍い。

2.身回品
「日用雑貨は冬場の客足に懸念」

 売上額は前年比4.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは−25.0から−41.7となった。
 日用雑貨は引き続き客足が好調で、売り上げが前年同月を大きく上回っているが、今後、冬場に向けて予想される客足の減少を、年末商戦で対処するとしている。玩具は、利幅の大きい一般玩具やブーム商品が好調で、前年同月の売り上げをやや上回っているが、カバン類は、消費マインドの低下と低価格志向の定着により、引き続き低調に推移している。

3.飲食料品
「酒類は販売形態の違いにより格差あり」

 売上額は前年比1.4%の減。3ケ月先の業況見通しDIは−4.8から−36.8となった。
 スーパーは、景気低迷による消費マインドの冷え込みや同業者との競合により、前年割れの売り上げが続いているが、店舗の改装や品揃えの差別化を図り売り上げ減少に対抗している。酒類は、従来形態の酒店はディスカウントストアやコンビニエンスストア等におされ、配達の需要も少なく厳しい状況が続くなど、販売形態の違いによる売り上げの格差が見られる。

4.家電品
「暖冬傾向から暖房器具は動きが鈍い」

 売上額は前年比22.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは−50.0から−14.3となった。
 家電品は、景況の不透明感が引き続き見られ、冷蔵庫やパソコン等の高額商品を中心に売り上げが低調で、また、暖冬傾向にあることから暖房器具の出足も鈍く厳しい状況にある。今後、年末商戦や初売りでの売り上げ回復に期待したい。



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