県内経済動向調査結果(11月)


製造業:パソコン・移動体通信機器関連は頭打ち傾向が強まる
建設業:今後の公共事業量に不安感を強める
小売業:ハイビジョンテレビはオリンピック効果が期待薄   

 県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。(対象企業216社)



概  況


 県経済は、製造業においては、主力の電気機械がパソコン・移動体通信機器関連で頭打ち傾向にあることから、受注・生産の伸び率が落ち込んでいる。精密機械は、特に、はかり類において新商品投入やメディアを利用したPR戦略により、好調に推移している。建設業では、今後の公共事業量に不安感を強めており、個人消費では、長引く景気の低迷や金融不安により消費マインドの冷え込みが強まってきていることから、県内景気は総じて足踏み状態で、企業の景況感にも厳しさが増してきている。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は-15.4から-29.6、現在の資金繰りは-15.9から-22.2、3ヶ月先の業況見通しは-36.0から-46.3となった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年比0.5%増、同1.8%増。3ヶ月先の業況見通しDIは-34.5から-35.0となった。県内の主力産業の電気機械は、パソコン・移動体通信機器関連が頭打ち傾向にあることから低い伸び率になっている。木材・木製品は、業績が対前年同月で約3割減少し、先行きに対する不安感も強まるなど厳しい状況が続いている。輸送機械は、国内市場の低迷を支えてきた輸出向けに陰りが見え始め、今後落ち込みがしばらく続く見通し。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年比0.9%減、同24.0%増。3ヶ月先の業況見通しDIは-46.9から-65.6となった。土木工事は、大口公共事業が終了し受注が減少している企業が多く目立つ。建築工事は、企業間の受注量に大きな格差が見られる。ともに、今後の公共事業量に対し不安感を強めている。
 小売業では、売上額は前年比3.8%減。3ヶ月先の業況見通しDIは-33.3から-57.8となった。消費に対するマインドの冷え込みから特に家電品において売り上げの減少が目立つ。
 長野オリンピック効果によるハイビジョンテレビの売り上げも、期待したほどの成果が出てきてない。
 有効求人倍率は、0.81から0.82となった。

 
DI値は各調査項目について、好転企業割合から悪化企業割合を差し引いた値です。


製造業の動向

1. 食料品
「ハム・ソーセージ類はお歳暮向けが伸び悩む」

 生産額は前年比2.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは-33.3から-47.1となった。
 牛乳・乳製品は生産額が前年を下回り、落ち幅もだんだん大きくなっている。酒造は、引き続き消費者離れによる需要低迷と酒税法改正の影響から低迷している。ハム・ソーセージ類は、お歳暮向け商品の需要が低く製造が低調に推移したため、生産額を落とすとともに、先行きの不透明感が強まっている。

2.繊維・衣服
「婦人服は暖冬の影響から生産額が前年同月を下回る」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比9.4%の減、同6.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは-18.8から-25.0となった。
 ジーパンは、新製品の受注を確保し当分は順調に推移する見通し。スポーツ衣料も、引き続き来春の受注が入っており、安定している。婦人服は、暖冬の影響によりコートを中心に冬物の売れ行きが低調なことから、生産額が前年同月を下回っている。

3.木材・木製品
「木材全体で引き続き先行きに対する不安感を強めている」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比26.4%の減、同30.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは-75.0から-68.4となった。
 合板、秋田杉ともに、昨年の3割減の生産となっており、厳しい状況が続いている。円安傾向にあることから、集成材では輸入材の仕入れの調整を行うなどして対処している。木材チップでは、製紙向け需要の増加により引き続き好調である。

4.鉄鋼業
「鉄鋼業全体で8月以降前年並に安定推移」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比0.5%の減、同3.1%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは-14.3で変わらず。
 建設機械部品、水道管継手は、引き続き前年並みで推移しているが、来年度以降の公共事業費削減の影響を懸念している。引き抜き管も同様に推移してきたが、自動車向けの出荷が大きく落ち込んでいることから生産調整を実施している。鋳物は依然スポット受注の傾向が強く、加えて継続受注が減少傾向にあるため、先行きに不安感がある。

5.金属製品
「アルミサッシは建築不振から業績は大きく悪化」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比6.8%の減、同8.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは-22.2で変わらず。
 アルミサッシは、住宅建築、ビル建築両方の不振のあおりを受け、シャッターも生産が伸びず4月以降もっとも落ち込みが大きくなっている。橋りょう・鉄骨は官公需物件の減少を小口の民需で対処している。

6.一般機械
「自動化省力化機械は企業の設備投資意欲の減退から受注減少」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比3.7%の減同7.6%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは-30.8から-57.1となった。
 産業機械は、依然受注額は前年同月を上回っているが、景気の停滞により引き合いの減少傾向が続いていることから、今後はやや厳しい見通しを持っている。スプレーガン類は、円安傾向により輸出が好調であり、業績が回復している。自動化省力化機械は、企業の設備投資意欲の減退から受注量の減少が目立っている。

7.電気機械
「パソコン・移動体通信機器関連の頭打ち傾向が強まる」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比7.9%の増、同10.7%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは-25.0から-16.7となった。
 コンデンサ類は、円安傾向もあり引き続き好調を維持しているが、一部のコンデンサはアジア経済混迷の影響から先行きに不安を感じている。液晶ディスプレイ、CD−ROM部品は引き続き堅調に推移しているが、業界全体としてはパソコン・移動体通信機器向けの部品の頭打ち傾向が強くなってきていることから、低い伸び率となっている。今後は、DVD(デジタルビデオディスク)等のデジタル画像処理技術分野の市場への参入が予測されている。

8.輸送機械
「自動車部品関連は輸出向けにも陰りが見え始める」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比3.1%の減、同3.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは-33.3から20.0となった。
 自動車部品は、東南アジア市場が不安定なことから、国内市場の低迷を支えてきた輸出向けに陰りが見え始めてきており、受注額がマイナスに転じた企業も出てくるなど、しばらく落ち込みが続く見込み。しかしながら、2輪向け部品等は堅調に推移し、今後も特に不安材料が出てきていないことから、安定した推移が見込まれている。

9.精密機械
「はかり類は引き続き業績を大きく伸ばす」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比13.1%の増、同16.4%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは-33.3で変わらず。
 はかり類は、新商品の投入やメディアを利用したPR戦略を展開し、引き続き受注額、生産額を大きく伸ばしている。光学レンズ類は、従来よりも高性能な製品に生産シフトするなど、高い技術力を生かし、安定した受注を確保している。


建設業の動向

「建設業全体で今後の公共事業量に不安を強めている」
 受注額、完工高はそれぞれ前年比0.9%の減、同24.0%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは-46.9から-65.6となった。
 土木工事は、高速道路等の大口公共事業が終了するなど、受注が減少している企業が多く見られるが、完工高は今までに受注した公共事業により順調である。建築工事は、公共住宅や公共施設等の建築により受注を伸ばしているところがあるが、企業により大きな格差が依然見られる。全体としては、DI値にも見られるように、引き続き公共事業費削減に対する不安感を強めている。


小売業の動向

1.衣料品
「婦人服で依然低迷が続く」

 売上額は前年比5.0%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは-38.9から-88.9となった。
 紳士服は冬物がやや動き出してきており、前年並の売り上げにまで戻しているが、婦人服の動きが鈍く前年同月を大きく下回るなど、動きが一致していない。呉服は、地域外や大型店への流出による土・日曜の来客数の減少などから、前年同月の売り上げを下回り苦戦している。

2.身回品
「カバンは売り上げの減少が続き回復の見込みはたっていない」

 売上額は前年比5.2%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは-41.7から-50.0となった。
 日用雑貨は引き続き客足が好調で、売り上げが前年同月を大きく上回っている。玩具は、利幅の大きい一般玩具やヨーヨー等のブーム商品が引き続き好調で、前年同月の売り上げをやや上回っているが、カバンは4月以降売り上げの減少が続き、ここ数ヶ月続いている消費者の低価格志向も依然根強く回復の見込みはたっていない。

3.飲食料品
「酒類はターゲットを絞り個性化により売り上げを伸ばしているところがある」

 売上額は前年比1.7%の増。3ケ月先の業況見通しDIは-36.8から-35.0となった。
 スーパーは、店舗改装により売り上げを伸ばしたところがあるが、既存店では引き続き売り上げが減少していることから、業界全体では消費の回復傾向にはまだ遠い。既存の酒店はディスカウントストアやコンビニエンスストア等におされ、厳しい状況となっているが、取扱品目を高級ワイン、吟醸酒等に高級化し、贈答用にターゲットを絞ってきた結果、徐々に売り上げを伸ばしているところも見られる。

4.家電品
「ハイビジョンテレビはオリンピック効果が期待薄」

 売上額は前年比30.1%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは-14.3から-57.1となった。
 家電品は、長引く景気の低迷や先行きの不透明感に加えて暖冬傾向にあることから、好調であったパソコン、情報機器関連は大幅ダウンし、床暖やFF式などの工事を伴う暖房機器売り上げも伸びず、例年ほどのボーナス商戦の感触はつかめていない。ハイビジョンテレビもオリンピック効果が期待したほど見られず目立った動きはない。



バックナンバー集へ戻る