県内経済動向調査結果(12月)


製造業:精密機械で、はかり類のヒット商品が好調
建設業:今後の公共事業量に不安感を強める
小売業:ボーナス商戦不発に終わり、消費低迷続く   

 県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。(対象企業218社)



概  況


 県内経済においては、製造業で、主力の電気機械が情報通信関連部品に以前ほどの勢いが見られないものの、引き続き好調に推移し、精密機械は、はかり類のヒット商品が好調なほか、腕時計、光学レンズ類も安定している。一方、建設業では、受注が少なく、今後の公共事業量に不安感を強めているほか、小売業においても、ボーナス商戦が不発に終わるなど、個人消費の低迷が続いている。全体としては引き続き足踏み状態で、企業の景況感にも厳しさが増してきている。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は-29.6から-28.4、現在の資金繰りは-22.2から-22.0、3ヶ月先の業況見通しは-46.3から-45.4となった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年比2.2%増、同2.8%増。3ヶ月先の業況見通しDIは-35.0から-38.0となった。主力の電気機械は、情報通信機器の需要が頭打ち傾向にあることから、伸び率が鈍化してきているものの、引き続き好調を維持している。木材・木製品は、新設住宅着工の低迷から業績が落ち込み、それにより、一般機械で木材機械の受注が減少するなど、他の業種にも影響が及んでいる。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年比13.8%減、同4.8%減。3ヶ月先の業況見通しDIは-65.6から-59.4となった。土木工事、建築工事ともに企業間により受注量に差が見られるが、全体的には受注が少なく、今後さらに公共事業量が減少するものと予想されることから、先行きに対する不安感を強めている。
 小売業では、売上額は前年比7.1%減。3ヶ月先の業況見通しDIは-57.8から-52.3となった。一部の商品でクリスマス需要により売り上げが伸びたものもあるが、家電品などのボーナス商戦は不発に終わり、消費回復の兆しは見られない
 有効求人倍率は、0.82から0.81となった。

 
DI値は各調査項目について、好転企業割合から悪化企業割合を差し引いた値です。


▼全業種 DI値の推移


製造業の動向

1. 食料品
「パン類はクリスマスシーズンを迎え、順調に推移」

 生産額は前年比4.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは―47.1から―41.2となった。
 パン類はクリスマスシーズンを迎え、年間で最大の繁忙期に入り、生産額もほぼ前年並みと順調である。牛乳・乳製品は業界全体が低迷しており、業績が悪化している。ハム・ソーセージ類はお歳暮向け製品が伸び悩み、生産額は大きく減少した。

2.繊維・衣服
「スポーツ衣料はオリンピック向け製品の受注により安定推移」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比0.7%の増、同5.1%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは―25.0から―18.8となった。
 ジーパンは、荷動きの悪さと過剰在庫の傾向があり、市場全体で停滞気味となっている。スポーツ衣料は、長野オリンピック向け製品の受注を獲得するなど、前年同月並みの生産額・受注額を確保しており状況は安定している。紳士服は、業界が低迷している中で、高い技術力を生かし安定した業績を上げているところがある。

3.木材・木製品
「業界全体で厳しい状況が依然続」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比26.4%の減、同31.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは―68.4から―52.6となった。
 合板、秋田杉ともに、生産額、受注額を大きく落とし、生産調整、在庫調整を行っている。好調であった北洋材も受注額、生産額が減少傾向にあり、落ち込み幅も大きくなっている。円安傾向から集成材は輸入を手控えている。業界全体としては、住宅着工戸数の低迷により受注が減少しており、雇用調整を行う事業所が出てくるなど厳しい状況が続いている。

4.鉄鋼業
「建設機械部品は安定推移しているが、今後に不安感を強めている」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比4.6%の減、同3.9%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは―14.3から―57.1となった。
 水道管継手は、引き続き前年並みで推移しているが、来年度以降の公共事業費削減の影響を懸念している。建設機械部品も前年並みで推移してきたが、今後厳しい状況が続くと見ている。引き抜き管は、海外向けの出荷が大きく減少しており生産調整を行っている。鋳物は大型受注を獲得するなどある程度の受注を確保しているが、依然スポット的な受注傾向が強い。

5.金属製品
「コンピューター筐体は企業の設備投資増により受注大幅増」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比29.8%の増、同6.8%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは―22.2で変わらず。
 アルミサッシは、手持ち工事により前年並みの生産額を上げているが、受注が大幅に減少しており先が見えない状況となっている。橋りょう・鉄骨は官公需物件の減少を小口の民需で対処している。シャッターは徐々に落ち込み幅が小さくなってきているが、先行きの不安は依然強まっている。オフィスコンピューター向けの筐体は設備投資により効率化を図る企業の増加などにより受注を大幅に伸ばしている。また、市中金融業者による無人契約機の普及によりATMの筐体も好調に推移している。

6.一般機械
「木材機械は木材業界不振の影響から受注減が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比10.9%の減、同22.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは―57.1で変わらず。
 スプレーガン類は、コスト削減への取り組みが効果を発揮しつつあり、収益面で好転している。印刷機械は全体的な受注低迷期から脱しつつあるが、小口の受注が多く、利幅が少ない状況にある。木材機械は木材業界不振の影響により受注減が続いている。

7.電気機械
「情報通信関連部品は以前ほどの勢いは見られないものの堅調に推移している」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比6.6%の増、同11.3%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは―16.7から―37.5となった。
 液晶ディスプレイはパソコン需要が頭打ちにあることから出荷台数を落としており、生産調整を行っているがそれほど厳しい状況にはない。通信機器用のアイソレーターも携帯電話関連の需要が一段落しており、受注額・生産額を落としている。CD−ROM部品はフル稼働の状況が続き、好調に推移している。工業用ミシン関連は、アジア向けの輸出が経済不安の影響を受け落ち込んでいるが、円安の影響やアメリカ経済の安定により好調に推移している北米向けでカバーしている。

8.輸送機械
「自動車用シートは新規車種向け受注が好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比4.9%の増、同4.9%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは20.0から16.7となった。
 パワーステアリングは国内市場の低迷が続き、前年並みの生産額で推移し、2、3月の新車需要に期待している。自動車用シートは引き続き新規車種向けの生産が順調に立ち上がり、前年を上回る生産額をあげている。二輪ブレーキディスクやネジ工具も好調に推移しており、全体としては、生産額が4月以降前年同月をやや上回るかたちで推移し、3ヶ月先の業況の見通しが先月からプラスに転じるなど業況は安定している。

9.精密機械
「腕時計類は国内重視の生産により安定推移」

 生産額、受注額はそれぞれ前年比19.8%の増、同16.8%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは―33.3から―44.4となった。
 はかり類は、新商品の投入やマスメディアを利用したPR戦略を展開し、ヒット商品を中心に引き続き好調を維持しているが、アジアでの経済不安から先行きに対する不透明感を強くしている。腕時計類は国内重視の生産により安定した状況にある。光学レンズ類は、従来よりも高性能な製品に生産シフトするなど、高い技術力を生かし、引き続き安定した受注を確保している。


建設業の動向

「今後の公共事業量に不安感を強める」
 受注額、完工高はそれぞれ前年比13.8%の減、同4.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは―65.6から―59.4となった。
 土木工事、建築工事ともに受注が少ないが、完工高は今までに受注した空港関連工事、市町村の公共施設建築工事等によりある程度の業績を上げている。一般住宅建築では受注、完工ともに住宅着工の低迷を反映して低調が続いており、回復の兆しは見えない。受注がほとんどないところや民間需要中心に受注しているところ、大口公共事業の受注を獲得しているところなど、企業により業績の格差が大きい。全体的には今後さらに公共事業量が少なくなると見ており、来年度以降の工事量に不安感を抱いている。


小売業の動向

1.衣料品
「紳士服、婦人服ともに期待したほどのボーナス効果は見られず」

 売上額は前年比8.1%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは―88.9から―50.0となった。
 紳士服、婦人服ともにボーナス商戦により他の月よりも売り上げを伸ばしたものの、期待したほどではなく前年同月と比べると落ち込んでおり、消費回復の手応えは感じられない。呉服は、売り上げが伸びず前年同月をやや下回っている。

2.身回品
「玩具はクリスマスの需要増により前年同月の売り上げを上回る」

 売上額は前年比7.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは―50.0で変わらず。
 日用雑貨は引き続き客足が好調で、年末の需要もあり引き続き売り上げを大きく伸ばしている。玩具は、クリスマスの需要期に利幅の大きい一般玩具やヨーヨー等のブーム商品が引き続き好調で、前年同月の売り上げをやや上回っているが、カバンは売り上げ増加が見込まれるボーナス、クリスマスに需要がほとんど感じられず、厳しい状況が続いている。

3.飲食料品
「スーパーは前年割れの売り上げが続く」

 売上額は前年比1.5%の減。3ケ月先の業況見通しDIは−35.0から―52.4となった。
 スーパーは、競合店の新規出店や長引く消費の冷え込みにより、前年割れの売り上げが続いている。既存の酒店は好調なディスカウントストアやコンビニエンスストア等におされ、厳しい状況が続いているが、取扱品目を高級化し、贈答用にターゲットを絞ったり、ディスカウント店には無い宅配サービスを行った結果、徐々に売り上げを伸ばしているところも見られる。

4.家電品
「ボーナス商戦は不発に終わり引き続き売り上げが伸び悩む」

 売上額は前年比35.1%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは―57.1で変わらず。
 家電品は、長引く消費マインドの冷え込みや長引く景況の不透明感により引き続き売り上げが低迷しており、ボーナス商戦に期待をかけたが、前年と比べ大幅に売り上げを落としている。ハイビジョンテレビもキャンペーンによりやや売り上げを伸ばしているところがあるが、オリンピック効果は期待したほどではなく、また最近は買い換えよりも、修理を望む顧客が増えており、それも売り上げ減少の1つの要因になっている。



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