県内経済の動向(3月)


県内経済動向調査結果(3月)


製造業:電気機械で情報関連機器の低迷から業績が前年同月比でマイナスに転じる
建設業:公共事業量に不足感が見られる
小売業:減税の効果が見られず、スーパーは前年割れの売り上げが続く

県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。
(対象企業215社)

 県内経済は、製造業で、好調に推移していた主力の電気機械において、パソコン等の情報関連機器の需要が低迷していることから生産額、受注額ともに前年同月比でマイナスに転じている。また、建設業においては、国の公共事業が前倒し発注されたことから一時的に受注額を伸ばしているが、長期的には公共事業量に不足感が見られるほか、小売業では、減税による効果が見られず、スーパーでは個人消費の冷え込みから前年割れの売り上げが続いている。全体としては、企業の景況感に引き続き厳しさが見られ、県内経済に後退色が窺える。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は▲48.8から▲31.6、現在の資金繰りは▲37.2から▲28.8、3ヶ月先の業況見通しは▲31.6から▲29.3となった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比7.7%減、同14.0%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲40.3から▲30.3となった。電気機械は、セラミックコンデンサなどの一部の製品が比較的好調を維持しているが、情報関連部品で需要が減少傾向にあり全体として生産額、受注額ともに前年同月比でマイナスに転じている。輸送機械では、自動車用シート、パワーステアリングポンプともに、新車販売の低迷が続いていることから生産は低調に推移している。木材・木製品は合板を中心に業界全般で生産額、受注額が大幅に落ち込んでおり、倒産する企業が出てくるなど深刻な状況が続いている。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比20.1%増、同10.6%減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から▲3.1となった。国の補正予算による公共事業の前倒し発注により一時的に受注額を伸ばしているが、長期的には公共事業量に不足感が見られるため、今後の国の経済対策による公共事業増加、早期発注へ期待感を寄せている。
 小売業では、売上額は前年同月比11.0%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲31.3から▲40.6となった。衣料品では、紳士服、婦人服ともに減税による効果が見られず、個人消費の低迷が長期化している。スーパーは同業者との競合や消費の冷え込みから前年割れの売り上げが続いている。家電品においても、個人消費が引き続き低迷していることから、大手家電チェーン店、商店街立地型店ともに前年同月に比べ大きく売り上げが落ち込んでいる。
 有効求人倍率は、0.73から0.68と、平成6年7月以来の0.6倍台となっており、労働需給環境の悪化が著しくなっている。

DI値は各調査項目について、好転企業割合から悪化企業割合を差し引いた値です。

▼全業種 DI値の推移

製造業の動向

1. 食料品
「酒造は需要低迷が続き生産額は大きく減少」

 生産額は前年同月比8.2%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲18.8で変わらず。
 牛乳・乳製品は業界の需要低迷から引き続き業績が悪化している。ハム・ソーセージ類は、消費マインドの低下と昨年度の消費税率引き上げ前の駆け込み需要により、生産額を落としている。酒造では、日本酒需要の低迷が続いていることに加えて、ワインブームの影響もあったことから生産額は大きく減少している。先行きも需要回復に期待が持てず、低調に推移する見通し。

2.繊維・衣服
「スポーツ衣料は順調に推移する見通し」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.7%の増、同2.3%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲43.8から▲25.0となった。
 スポーツ衣料は、利益率の高い商品を受注し、しばらくは順調に推移する見通し。ジーパンは、取引先において過剰在庫を抱えているため、引き続き減産傾向にある。紳士物では、Yシャツの生産は比較的順調となっている。スラックスでは生産額は前年同月を上回っているものの、粗利が大きく落ち込んでいる。婦人服では、春物の受注が伸びず、依然として厳しい状況が続いている。

3.木材・木製品
「木材業界全般で先の見えない状況が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比49.3%の減、同50.3%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲63.2から▲61.1となった。
 合板は、原料となる輸入材の約3割を占める東南アジアの経済不安や住宅着工の低迷、在庫品の滞留などにより、受注の減少幅は拡大しており、今後についても好転の期待できる材料が見あたらないことから、極めて深刻な状況にある。一般製材においては、秋田杉が1、2月に比べやや増加しているものの、前年同月比で4割減と合板同様深刻な状況にある。
 木材業界全般で前年同月に比べ、生産額、受注額ともに引き続き減少幅が拡大し、3ヶ月先の業況見通しDIも▲60前後で推移するなど、先の見えない状況が続いている。

4.鉄鋼業
「引き抜き管は大企業との競合から受注確保は厳しい」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比12.7%の減、同37.2%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲42.9から▲28.6となった。
 建設機械部品は生産、受注ともに大幅な落ち込みが続き、回復の兆しが全く立っておらず、新規需要の掘り起こしに力を入れている。
 水道管継手は受注が大きく減少してきており、今後の見通しが悪くなってきている。鋳物は、印刷機械メーカー等の不振を受けて、引き続き受注が大幅に減少している。引き抜き管は、大企業との競争の激化から受注確保が厳しくなってきている。

5.金属製品
「オフィスコンピューター型枠は受注に陰りが見られる」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.3%の減、同29.0%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲44.4から▲22.2となった。
 アルミサッシは都市部のビル建設低迷の影響を大きく受け、引き続き生産額、受注額が減少している。シャッターは、木材、鉄鋼と同様に住宅建築の不振と企業の設備投資の伸び悩みの影響が顕著に現れ、業績を落としている。橋りょう・鉄骨は前年同月の生産額を上回ったものの昨年の秋口以降の大口物件が取れないことから厳しい状況が続いている。
 オフィスコンピューター型枠は、受注の伸びに陰りが見えてきており、例年並に推移している。

6.一般機械
「印刷機械は業界全体で不況感が強く、需要の落ち込みが目立つ」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比9.9%の減、同47.0%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲64.3で変わらず。
 産業機械は、利益率が低く、需要も減少傾向にあり、今後も厳しい状況が続く見通し。
 印刷機械は、小口受注が多く、利幅も少ない状況にあり、業界全体でも不況感が強く、需要の落ち込みが目立っている。省力化機械は企業の設備投資意欲が依然弱いことから低迷している。

7.電気機械
「セラミックコンデンサは海外向けを中心に比較的好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比2.6%の減、同2.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲8.7から▲4.2となった。
 セラミックコンデンサは海外向けが比較的好調であり、受注についても堅調に推移している。高圧コンデンサ、バリスター等の情報関連部品は、小売り段階での商品販売の伸び悩みを受けて落ち込んでいる。一方、トランス・コイル等の家電向け部品は今夏に向けて受注増が見込まれる。パソコン基盤関連は今夏のウィンドウズ98発売によるパソコンブーム再来に期待を寄せている。

8.輸送機械
「自動車用シートは一部を除き減産傾向」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.7%の減、同6.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲66.7から▲33.3となった。
 自動車用シートは一部の新規車種の生産が好調であるが、その他の車種においては減産傾向にあり、取引先からの製造原価低減圧力が強まっていること等が懸念される。パワーステアリングポンプは依然として国内新車販売の低迷が続いていることから、4月以降の生産も低調に推移する見通し。

9.精密機械
「はかり類は引き続き好調を維持」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.7%の減、同1.5%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲55.6から▲22.2となった。
 はかり類は、以前ほどの勢いが見られなくなったものの、引き続き好調を維持している。
 光学レンズ類では、従来よりも高性能な製品に生産シフトするなど、高い技術力を生かし、引き続き安定した受注を確保している。光ファイバーは、需要があり、引き続き堅調な生産額を維持している。

建設業の動向

「公共事業量に不足感が見られる」
 受注額、完工高はそれぞれ前年同月比20.4%の増、同10.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から▲3.1となった。
 土木工事は、道路工事を中心に受注が増加しており、やや回復傾向が見られる。建築工事では、一般住宅の受注量の減少が懸念されるが、アパート建築等を多く手がける事業所は引き続き受注が多くなっているほか、空港関連工事、市町村の公共施設建築工事により順調な完工高を上げているところが見られる。
 全体としては国の補正予算による公共事業の前倒し発注により一時的に受注額を伸ばしているが、長期的には公共事業量に不足感が見られるため、今後の国の経済対策による公共事業増加、早期発注へ期待感を寄せている。

小売業の動向

1.衣料品
「紳士服・婦人服ともに減税効果が見られず消費の落ち込みが続く」

 売上額は前年同月比9.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲44.4から▲61.1となった。
 紳士服、婦人服ともに、減税効果が見られず、消費の落ち込みが依然続いている。呉服は、需要が減少傾向にあることに加え、大型店への流客が見られ厳しい状況が続く見通し。

2.身回品
「日用雑貨は春物商品に動きが見られる」

 売上額は前年同月比18.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲50.0から▲66.7となった。
 日用雑貨は春物商品が動き出し、売り上げは増加傾向にある。玩具は、人気のキャラクター商品が売れているものの、一時期のたまごっちのようなヒット商品が無かったため、売り上げは前年同月を下回っている。カバンは、入進学時の需要があまり伸びず、売り上げの減少が続いている。

3.飲食料品
「スーパーは消費の冷え込みから前年割れの売り上げが続く」

 売上額は前年同月比3.2%減。3ケ月先の業況見通しDIは▲10.0から▲5.0となった。
 スーパーは、店舗を改装し売り上げを伸ばしているところもあるが、その他は同業者との競合や個人消費の冷え込み等の理由により前年割れの売り上げが続いている。酒類は、ワインの売り上げが比較的好調なものの、全体的には個人消費が冷え込んでおり、さらに、ディスカウントストアの進出による価格競争の激化から、既存の酒店を取り巻く環境はさらに厳しいものとなっている。また、5月1日からの酒税改正によるウイスキーの売り上げ増加に期待を寄せている。

4.家電品
「大手家電チェーン店、商店街立地型店ともに売り上げが大幅に落ち込む」

 売上額は前年同月比46.2%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲28.6から▲42.9となった。
 家電品は、前年の消費税率アップ前の駆け込み需要と個人消費が引き続き低迷していることから、大手家電チェーン店、商店街立地型店ともに前年同月に比べ大幅に売り上げが落ち込んでいる。ハイビジョンテレビは、オリンピック以降売り上げが減少傾向にある。
 入進学、就職者向けの冷蔵庫、テレビ、電話等の生活家電の動きも鈍く、商品の単価も低下傾向にあり、依然として厳しい状況が続いている。

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