県内経済の動向


県内経済動向調査結果(5月)


製造業:輸送機械は国内市場の低迷により生産額は引き続き前年同月比で大幅減
建設業:「総合経済対策」による公共事業の早期発注に期待
小売業:食料品で徐々に動きが見られるが全体としては厳しい状況が続く

県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。
(対象企業219社)

 県内経済は、製造業では、精密機械が円安の影響により輸出向けが好調のほか、主力の電気機械で、液晶ディスプレイが好調を維持している。反面、木材木製品では依然業界の冷え込みが続き、生産額が前年同月比で大幅に減少しているほか、輸送機械でも国内市場の低迷により生産額が前年同月比で大幅減のため、製造業全体としては引き続き前年同月比マイナスで推移している。また、建設業においては、資金繰りの厳しい企業が増加していることから、「総合経済対策」による公共事業の早期発注に期待が寄せられている。また、小売業では、食料品において回復傾向が見られるほかは引き続き売上の減少が続いている。全体としては、企業の景況感に引き続き厳しさが見られ、県内経済は後退している。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は▲26.0から▲26.9、現在の資金繰りは▲26.5から▲26.0、3ヶ月先の業況見通しは▲19.6から▲18.7となった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.5%減、同6.2%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲21.1から▲25.2となった。電気機械は、液晶ディスプレイで主力製品の移行により堅調な生産をしているが、CD−ROM部品では生産の減少幅が拡大していることから、パソコン関連は、前年並みに推移している。精密機械では、はかり類、腕時計類ともに円安の影響から輸出向けが好調となっている。木材・木製品は、合板の一部で動きが見られたほか在庫調整も徐々に進みつつあるが、本格的な回復には遠く、依然厳しい状況が続いている。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比51.0%減、同12.5%減。3ヶ月先の業況見通しDIは15.6で変わらず。長期にわたる景気の低迷から資金繰りの厳しい企業が増加しており、多くの事業者は今後の「総合経済対策」による本格的な公共事業の早期発注に期待を寄せている。
 小売業では、売上額は前年同月比2.5%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲34.4から▲23.4となった。衣料品は客数、客単価の減少により、厳しい状況が続いている。飲食料品は、スーパーで同業者との競合が見られる中で、生鮮食料品が徐々に売上を伸ばしてきている。家電品は、売上の落ち込みの大きい大型耐久財の中において、エアコンが健闘している。
 有効求人倍率は、0.63倍から0.64倍と前月より0.01ポイント上回ったが、雇用情勢は依然として厳しい状況が続いている。

DI値は各調査項目について、好転企業割合から悪化企業割合を差し引いた値です。

▼全業種 DI値の推移

製造業の動向

1. 食料品
「ハム・ソーセージはお中元需要に期待」

 生産額は前年同月比9.3%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲52.9から▲17.6となった。
 酒造は、生産額が前年同月比で大幅に減少している。ハム・ソーセージ類は、小売り段階での売上が低迷していることから、生産額は前年同月実績を下回っており、今後はお中元用の需要に期待を寄せている。稲庭うどんは、お中元向けの商品の動きが鈍く、また、単価引き下げの傾向が見られ、景況は厳しい。

2.繊維・衣服
「紳士服は生産額・受注額ともに引き続き低調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比2.2%の増、同16.3%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から▲6.3となった。
 紳士服は、秋冬物の受注が遅れており、生産額・受注額ともに引き続き低調に推移している。婦人服は、夏物の需要が伸び悩んでいるなかで、輸出向けが多い企業では円安が唯一の追い風となっている。スポーツ衣料は、遅れていたメーカーからの夏物の発注が一度に入ったことから、生産額・受注額ともに前年同月実績を大きく上回っている。

3.木材・木製品
「依然業界の冷え込みは続いている」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比33.0%の減、同22.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲31.6から10.5となった。
 合板は、唯一塗装合板において需要が見られ、在庫調整も徐々に進みつつあるが、依然住宅建築業界の冷え込みが厳しく、生産額は前年同月実績を下回っている。一般製材は、北洋材で昨年秋以降の落ち込みは回復せず、低水準で推移しているほか、秋田杉でも、生産額が前年同月比大幅減と深刻な状況が続いている。

4.鉄鋼業
「建設機械部品は生産額・受注額ともに大幅減少」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比21.5%の減、同23.2%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲28.6で変わらず。
 建設機械部品は、取引先の物件不足や下請け量の減少等により、生産額、受注額ともに引き続き大幅に減少している。水道管継手においても、生産額・受注額ともに前年同月比で大きく減少し、回復の兆しは見えていない。引き抜き管は、生産の7割を占める自動車向けが国内市場の低迷から、引き続き生産額を大きく落としており、先行きも依然として厳しい状態となっている。

5.金属製品
「シャッターは一般住宅建築や民間設備投資不振の影響大」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比9.9%の減、同11.8%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲44.4から▲55.6となった。
 シャッターは、一般住宅建築や民間設備投資の不振が大きく、当面厳しい状態が続くと見ている。アルミサッシは、生産額・受注額ともに引き続き前年同月を大きく下回っており、売上構成の主要を占める都市部のビル建設低迷が大きく影響している。橋梁・鉄骨は、受注件数が低調であることから先行きが不透明なため、今後の公共物件に回復の期待を寄せている。

6.一般機械
「産業機械は引き合いが減少傾向」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比17.2%の減、同26.9%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲38.5から▲61.5となった。
 金型、省力化機械は、受注が前年同月比約4割減と大幅な落ち込みとなっている。産業機械は、引き合いが減少傾向にあり、受注も確保が難しくなってきている。鉄道用機器は受注額・生産額ともに伸ばしてきている。スプレーガン類は、コスト低減への取り組みが効果を発揮してきているものの、国内需要の低下から厳しい状態が続いている。印刷機械は、依然業界全体での不況感が強く、需要の落ち込みが目立っている。

7.電気機械
「液晶ディスプレイは堅調な動きを見せるがCD−ROM部品は引き続き生産が減少」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.7%の増、同0.3%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは7.7から▲30.8となった。
 情報・通信関連部品は、液晶ディスプレイで主力製品がノートパソコン用から大型モニター用に移行してきており、堅調な動きを見せている。パソコン回路基盤においては、ノートパソコン用部品が引き続き好調で、生産・受注ともに前年同月比で大幅増となっている。CD-ROM部品は、生産額が対前年同月比で減少幅をさらに拡大したことから、この分野が成熟期に達したとの見方をしており、今後、新分野への転換を検討している。積層セラミックコンデンサは、携帯電話の需要に頭打ちの傾向が見られ、今後の受注への影響が懸念される。家電関連部品は、高電圧コンデンサ、バリスターが、海外での需要増を反映して、フル稼働状態が続いている。情報通信関連、家電関連ともに、今後の受注回復のきっかけとして、ウィンドウズ98の発売、夏のエアコン需要に期待を寄せている。

8.輸送機械
「パワーステアリングポンプはモデルチェンジや新規車種需要に期待薄」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比13.8%の減、同13.2%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から▲57.1となった。
 自動車用シートは、国内市場向けの出荷が低迷している反面、最近の円安の進行により、出荷の5割を占める輸出向けが伸びている。パワーステアリングポンプは、モデルチェンジや新規車種立ち上げに期待を寄せてはいるものの、国内市場の低迷感が強いことから、業況の回復は見込めないとの見方をしている。2輪用ブレーキディスク関連は、堅調な動きを見せている。

9.精密機械
「はかり類、腕時計類ともに円安の影響で輸出向けが好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比4.9%の増、同2.6%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲22.2で変わらず。
 はかり類は、輸出関連の受注により、ここ数ヶ月は好調が続く見込み。腕時計類は輸出向けが多いことから、円安による利幅が大きくなっている。光学レンズ類では、受注を安定して確保しているが、不況の長期化による需要の落ち込みが懸念される。

建設業の動向

「今後の総合経済対策による公共事業の早期発注に期待」
 受注額、完工高前年同月比51.0%の減、同12.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは15.6で変わらず。
 一般住宅において新規分譲地で順調に売上を確保したため、大幅な受注増となっているところが見られるが、長期にわたる景気の低迷により資金繰りの厳しい企業が増加しているため、特に小規模事業者の淘汰を懸念する声が強まっている。今後、多くの事業者が「総合経済対策」による本格的な公共事業の早期発注に期待を寄せている。

小売業の動向

1.衣料品
「紳士服・婦人服ともに客数、客単価減少により厳しい状況が続いている」

 売上額は前年同月比6.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲64.7から▲58.8となった。
 紳士服・婦人服ともに消費者の倹約ムードが強く、客数・客単価減少により、消費税改正直後の前年をさらに下回っている。現在、在庫調整の強化を図り、商品回転数を高めようとしているが、依然厳しい状況が続いている。消費低迷の影響は、高額商品である呉服で顕著に出ており、前年同月比で売上額が減少している。

2.身回品
「カバンは、業界の低迷にスポーツ店との競合も見られ厳しさが続いている」

 売上額は前年同月比4.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲50.0から▲41.7となった。
 日用雑貨は、好調を維持している。玩具は、客単価が低く収益は良くない。カバンは、消費の冷え込みから、皮革等の高級製品はほとんど動きはなく、スポーツ店との競合商品も伸び悩んでおり、前年同月の売上を下回っている。

3.飲食料品
「スーパーは生鮮食料品が順調に売上を伸ばす」

 売上額は前年同月比0.7%増。3ケ月先の業況見通しDIは▲14.3から9.5となった。
 スーパーは、同業者との競合が見られるものの、生鮮食料品は順調に売上を伸ばしてきている。酒類は、飲食店向けの日本酒の売上は良くないものの、家庭におけるニーズの変化に応じて取扱商品の多様化を図った結果、ブームの赤ワインや発泡酒の売上は伸びてきている。

4.家電品
「大型耐久財が大きく落ち込む中でエアコンが健闘している」

 売上額は前年同月比20.0%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲14.3で変わらず。
 家電品は、ワールドカップ効果によるテレビ需要に期待したが、大型テレビなどの高額商品の動きは鈍く、消費者マインドの冷え込みが強く見られる。このような状況において大型耐久財の中では唯一、エアコンの売り上げが比較的好調となっており、夏場にかけての売り上げ増にさらなる期待を寄せている。

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