県内経済の動向


県内経済動向調査結果(9月)


製造業:電気機械を除く全業種で生産額が前年割れ
建設業:公共事業に動きが見られるが、先行きに不安が残る
小売業:飲食料品で生鮮食料品を中心に好調

県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。
(対象企業219社)

 県内経済は、製造業では、主力の電気機械が、大型液晶ディスプレイなどパソコン関連の一部好調製品により、かろうじて前年並みを維持しているが、一般機械、精密機械など電気機械を除く全業種で前年実績を下回っているため、製造業全体では引き続き前年実績を下回っている。建設業においては、経済対策により公共事業が出てきているが、先行きに不安が見られる。小売業では、全体的に売上が落ち込んでいる中で生鮮食料品を中心とする飲食料品関連で売上増が見られるが、衣料品、家電品では消費の冷え込みの影響が色濃く出ており、売上の減少が続いている。全体としては、企業の景況感は依然厳しく、県内経済は引き続き後退している。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は▲19.1から▲23.2、現在の資金繰りは▲24.2から▲25.1、3ヶ月先の業況見通しは▲24.7から▲23.7となった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比5.3%減、同5.3減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲20.8から▲26.1となった。電気機械では、電子回路基盤や大型液晶ディスプレイ等パソコン関連の一部において好調であるが、ダイオード、IC等半導体関連では生産が落ち込みが見られ、また、一般機械においても、企業の設備投資削減の影響から、生産額の落ち込みが見られる。そのため、製造業のほとんどの業種で前年同月実績を下回っており、全体として生産額は10年1月以降9ヶ月連続で前年同月比を下回っている。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比33.0%増、同16.3%減。
 3ヶ月先の業況見通しDIは▲12.9から▲25.8となった。10年4月以来5ヶ月ぶりに受注額が前年同月を大幅に上回っており、公共事業は受注が増加してきているものの、年度の前半の受注量が少なかったことから、1年間のトータルとしては前年度をやや下回ると見ている。また、来年度の公共事業量についても懸念されている小売業では、売上額は前年同月比0.5%増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲37.5から▲18.0となった。飲食料品で、生鮮食料品を中心に売上が伸び、売上は前年同月比を上回っている。しかし、衣料品、家電品では、消費の冷え込みの影響が色濃く出ており、売上の減少が続いている。
 有効求人倍率は、0.53倍から0.54倍と0.01ポイント回復したが、7月以降ほぼ横ばいで低水準に推移している。求人の減少が続いており、雇用情勢は依然厳しい状況が続いている。

DI値は各調査項目について、好転企業割合から悪化企業割合を差し引いた値です。

▼全業種 DI値の推移

製造業の動向

1. 食料品
「米菓は新商品の売れ行きが好調」

 生産額は前年同月比3.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは5.9から0.0となった。
 米菓は、贈答用等高単価商品の需要低迷が続く中で、新商品の売れ行きが好調で、生産額は前年同月対比で増加している。酒造は、8月に天候不順の影響で、前倒し的な需要による生産増があったため、生産額は前年同月対比で大幅な落ち込みとなっている。ハム・ソーセージ類は、生産に大きな動きはなく、昨今の急激な円高による輸入牛のコスト低減効果に期待している。

2.繊維・衣服
「紳士服・婦人服ともに引き続き厳しい状況」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.5%の減、同7.3%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲13.3から▲31.3となった。
 紳士服関連は、スラックスの低迷が続き、さらに、順調に推移していたYシャツにおいても春物の減産兆候が感じられるため、今後は厳しい局面が予想される。婦人服では受注減と製品単価の低下が依然続いている。スポーツウェアは、秋冬物の受注が大きく伸びているが、次シーズンの企画が決まっていないめ、年末の受注量に不安を感じている。

3.木材・木製品
「合板は生産の減少と製品単価の低下により状況は深刻」

 生産額、受注額はそれぞれ同年同月比30.0%の減、同24.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲52.6から▲55.6となった。
 合板は、需要回復の兆しが窺えず生産額は前年同月対比で大幅に減少している。さらに、他メーカーの値下げや輸入品に商社が動き出したことから、製品の相場は下げ基調に転じ、雇用調整助成金の利用による生産調整を行うなど、一層厳しい状況を迎えている。一般製材では、秋田杉が、首都圏向けを中心に需要が低迷し、さらに、合板同様に価格低迷があいまって、厳しさが続いている。

4.鉄鋼業
「水道管継手で首都圏向けの需要の影響を受ける」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比21.0%の減、同17.1%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から▲16.7となった。
 水道管継手は、首都圏向けの需要の落ち込みが大きく、生産調整を行っている。鋳物は、海外向けがアジア経済の低迷、通貨不安等により引き続き受注が減少している。引き抜き管は、主力の輸送用機械向けの生産が低迷しており、また、今後は一層、業者間での受注競争が厳しくなっていく状況にある。

5.金属製品
「シャッターは県外向けが受注減少」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比9.7%の減、同8.4%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲22.2から▲11.1となった。
 アルミサッシは、生産の主要を占める都市部のビル建設低迷の影響により、業績は大きく落ち込んでいる。一般住宅・小規模店舗向けシャッターは、一般住宅建築や民間設備投資の低迷の影響を受け、特に県外受注が落ち込んでおり生産額は前年同月を大幅に下回っている。針金・鉄線類は予想していた8月になっても回復の兆しは見られず、かろうじて現状を維持している。

6.一般機械
「設備投資削減の影響から業界全体で業績が悪化」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比19.9%の減、同21.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲33.3から▲50.0となった。
 弱電省力機械、一般産業機械など設備投資に関連のある機械は、景気の低迷により、企業の設備投資用の受注が極端に減少し、状況は悪化してきている。特に木材機械は、木材業界低迷の影響が大きく、引き続き減産体制となり、深刻な状況となっている。

7.電気機械
「電子回路基盤がノートパソコンを中心に好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.1%の増、同0.8%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲11.5で変わらず。
 情報・通信関連部品は、電子回路基盤がノートパソコン中心に引き続き好調で、大幅に生産を伸ばしており、今後も順調に推移する見通し。また、液晶ディスプレイは省電力・省スペースをうたった大型液晶モニターが市場で高い評価を得ており、同様に引き続き好調に推移している。また、コンデンサ関連では、アルミ電解コンデンサで単価の高い製品に傾斜したことから生産額は増加しているが、ダイオード、IC等半導体関連では生産が落ち込みが見られる。

8.輸送機械
「自動車用シートは納入単価の引き下げにより利益は減少」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比2.9%の減、同5.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲14.3から▲42.9となった。
 自動車用シートは、海外向けの増産や新規車種の立ち上げにより、受注量は増加しているが、納入単価の引き下げにより利益は減少している。パワーステアリングポンプは、生産額が引き続き前年同月比で大きく落ち込んでいる。ブレーキディスク関連は、2輪向けが順調に推移しているが4輪向けの落ち込みにより全体的には前年並みの水準となっている。

9.精密機械
「はかり類は輸出向けを中心に好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比13.0%の減、同18.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲44.4から▲22.2となった。
 はかり類は、ヒット商品が引き続き好調を維持しているが、欧米向けの輸出が一段落する見込みのため、来月以降は生産額はやや落ち込む見通し。腕時計類は、輸出が中心のため急激な円高による影響を受け、先月に引き続き生産額が落ち込んでいる。

建設業の動向

「公共事業は受注額が5ヶ月ぶりに前年同月対比で増加」
 受注額、完工高は前年同月比33.0%の増、同16.3%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲12.9から▲25.8となった。
 建設業は、10年4月以来5ヶ月ぶりに受注額が前年同月を大幅に上回っており、公共事業は出てきているものの、年度の前半の受注量が少なかったことから、1年間のトータルとしては前年度をやや下回ると見ている。
 また、来年度の公共事業量についても懸念されている。

小売業の動向

1.衣料品
「紳士服・婦人服ともに秋冬物に期待」

 売上額は前年同月比12.3%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲29.4から▲50.0となった。
 紳士服はスーツの下取りセール等で、消費意欲の掘り起こしを懸命に行っているが、売上の大幅減少が続き、婦人服も紳士服ほどではないものの、売上の減少が続いており、消費の冷え込みが一段と進んでいると見ている。
 今後は単価の高い秋冬物が出始めることから、売上の回復に期待しているが、しばらくは苦戦を強いられるものと見ている。呉服は、展示会を開催するものの、来客数、売上額ともに落ち込んだのが響き売上は悪化している。

2.身回品
「カバンは若者の低価格指向の影響を受け売上減少」

 売上額は前年同月比11.1の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲58.3から▲33.3となった。
 カバンは、消費の冷え込みと他店との競合に加え、若者の流行がナイロンや布製などの低価格製品によることから、売上は引き続き前年同月比で減少している。日用雑貨は、前年を上回る売上が続いており、今後は冬場の季節商品に期待している。

3.飲食料品
「生鮮食料品が好調」

 売上額は前年同月比6.9%増。3ケ月先の業況見通しDIは▲52.4から▲14.3となった。
 スーパーは、生鮮食料品を中心とした食料品の伸びにより、売上は前年同月比を大幅に上回っている。近隣への大型店の新規開業や同業者との競争の激化といった不安要素が依然として残っている。酒類では、種類別には健康に配慮したワインや低価格が売りの発泡酒は前年より売上が増加しているが、ビールは飲食店向けを中心に売上が減少している。
 また、業態別に見ると、ディスカウントショップでは引き続き順調に推移しているものの、既存の小売店ではディスカウントショップへの客の流れや配達需要の減少により苦戦を強いられている。

4.家電品
「販売は減少、修理依頼が増加傾向」

 売上額は前年同月比20.2%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲7.1から21.4となった。
 家電品においては、消費の冷え込みの影響が他の業種に比べ強く見られ、製品の販売となると買い控えの傾向が依然強く、客数、客単価の低下が続いている。反面、修理依頼は増加してきている。

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