県内経済の動向


県内経済動向調査結果(10月)


製造業:一般機械で企業の設備投資削減の影響大
建設業:公共事業は増加してきているが、来年度以降の事業量に不安
小売業:暖房機器は気温が高かったため売上は前年同月比マイナス

県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。
(対象企業215社)

 県内経済は、製造業では、主力の電気機械や精密機械の一部で順調に推移しているが、一般機械で企業の設備投資削減の影響を強く受け、輸送機械でも自動車販売の低迷を強く受けるなどその他多くの業種で生産額の減少が大きく、製造業全体では引き続き前年実績を下回っている。建設業では、土木工事において公共事業が出てきているが、来年度以降の事業量減少が懸念される。小売業では、生鮮食料品やワイン等、一部の商品で売上増が見られるが、小売業全体では引き続き前年同月比マイナスとなっている。全体としては、企業の景況感は依然厳しく、県内経済は低い水準で推移している。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は▲23.2から▲29.6、現在の資金繰りは▲25.1から▲23.0、3ヶ月先の業況見通しは▲23.7から▲41.3となった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.7%減、同4.6減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲26.1から▲38.3となった。電気機械では、大型液晶ディスプレイや電子回路基盤、コンデンサ等は好調であるが、半導体関連で生産額の落ち込みが見られる。また、輸送機械で自動車販売の低迷による影響を受け、一般機械でも企業の設備投資削減の影響から生産額は前年同月比で引き続き減少している。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比3.5%増、同21.4%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲25.8から▲35.5となった。建設業は、土木工事で公共事業が出てきているが、建築工事では物件不足が続いており明暗を分けている。また、来年度以降の公共事業量減少が懸念されている。
 小売業では、売上額は前年同月比3.4%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲18.0から▲50.0となった。飲食料品で、生鮮食料品、ワインを中心に売上が伸びている。しかし、衣料品ではセールの効果も現れず、消費の冷え込みが続いており、家電品でも10月の気温が高かったことから暖房機器の売上が悪く、小売業全体では売上の減少が続いている。
 有効求人倍率は、0.54倍から0.51倍と0.03ポイント減少し、7月以降0.5倍前半の低水準で推移している。求人の減少が続くなど、雇用情勢は依然厳しい状況が続いている。

DI値は各調査項目について、好転企業割合から悪化企業割合を差し引いた値です。

▼全業種 DI値の推移

製造業の動向

1. 食料品
「酒造で生産額の減少が続く」

 生産額は前年同月比7.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から▲37.5となった。
 米菓は、ヒット商品が依然好調に推移している。また、年末に向け、不振の続く贈答用に力を入れている。酒造は、前倒し需要による反動と清酒需要の低迷から、生産額は前年同月対比で大幅な落ち込みとなっている。ハム・ソーセージ類は、生産量は増加しているが、納入単価の下落幅が大きく、生産額は減少している。

2.繊維・衣服
「紳士服では厳しさが一層強まる」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.6%の増、同0.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲31.3から▲43.8となった。
 紳士服関連は、スラックスの生産が落ち込み、また、稼働日数を減少させるところが見られるなど、一層厳しさが増してきている。婦人服では冬物の受注が伸び悩んでおり、前年同月を下回っている。スポーツウェアは、来春用の受注が出始めたため、受注額は前年対比で増加してきている。

3.木材・木製品
「合板は大幅な生産額の落ち込みが続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比27.1%の減、同20.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲55.6から▲47.4となった。
 合板は、需要回復の兆しが窺えず、さらに、単価の落ち込みも見られることから生産額は前年同月比で大幅に減少している。そのため、コスト削減や雇用調整助成金の利用による生産調整を行っているところが見られるなど、厳しい状況が続いている。一般製材でも、新設住宅着工の低迷が続いていることから引き続き厳しい状況が続いている。

4.鉄鋼業
「鋳物は海外向けが大幅に減少」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比18.4%の減、同8.9%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲16.7から0.0となった。
 水道管継手は、首都圏向けの需要の落ち込みの影響が大きく、生産額は前年同月比で大幅に減少している。鋳物は、海外向けがアジア経済の低迷、通貨不安等により引き続き受注が減少している。引き抜き管は、主力の自動車向けの生産が大きく落ち込んでおり、また、今後生産拡大が予想される携帯電話関連についてもコスト面での厳しさが予想されることから先の見通しは暗い。

5.金属製品
「アルミサッシはビル建設低迷の影響により生産額は減少」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比12.4%の減、同29.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲11.1から▲66.7となった。
 アルミサッシは、生産の主要を占める都市部のビル建設低迷の影響が引き続き見られ、生産額は大幅に落ち込んでいる。建築鉄骨では公共事業が徐々に出てきたことにより受注が出てきているが、量的にまだ十分ではなく、先行きについても今後悪化する見通し。針金・鉄線類は受注がスポット的に見られるものの、全体的な回復の兆しは見られず、先の見通しも不透明感が強い。

6.一般機械
「業界全体で設備投資削減の影響を強く受ける」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比24.8%の減、同27.0%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲50.0で変わらず。
 弱電省力機械、一般産業機械などは、企業の設備投資削減の影響により、生産額は減少している。塗装用スプレーガンは特に自動車関連の落ち込みが大きく、生産額は減少している。

7.電気機械
「コンデンサ関連に回復の兆し」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比4.2%の増、同3.6%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲11.5から▲38.5となった。
 情報・通信関連部品は、電子回路基盤がノートパソコン中心に引き続き好調なほか省電力・省スペースをうたった大型液晶モニターも順調に推移している。また、コンデンサ関連においては、積層チップコンデンサで回復の兆しが見られ、アルミ電解コンデンサでは高い生産額の伸びを見せている。しかし、ダイオード、IC等半導体関連では半導体市況の落ち込みが大きく、生産額の落ち込みが続いている。

8.輸送機械
「自動車用部品は新車販売低迷により生産額は減少」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比13.5%の減、同13.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲42.9から0.0となった。
 自動車用シート、パワーステアリングポンプともに、新車販売低迷の影響から生産額は前年同月比で大きく落ち込んでいる。そのため、今後の新規車種の立ち上げによる生産拡大に期待している。ブレーキディスク関連は、2輪向けが順調に推移し、業績は安定している。

9.精密機械
「はかり類は引き続き好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比13.2%の増、同8.7%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲22.2で変わらず。
 はかり類は、ヒット商品が引き続き好調を維持している。腕時計類は、価格競争が続いていることから利益率は低下し、半導体関連部品では半導体業界の不調の影響を受け生産額は減少している。光学レンズでは、好調であったデジカメ用プリズムが減少傾向にあることから、全般的に受注が落ち込んでいる。

建設業の動向

「土木工事と建築工事で明暗を分ける」
 受注額、完工高は前年同月比3.5%の増、同21.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲25.8から▲35.5となった。
 建設業は、土木工事で公共事業が出てきていることから受注額が引き続き前年同月を上回っている。しかし、建築工事では、物件不足が続いており受注額は落ち込み明暗を分けている。
 また、来年度以降の公共事業量減少が懸念されることから、既存の設備のやりくりや建設機械をリース調達するなどしてコストダウンに努める傾向が見られる。

小売業の動向

1.衣料品
「紳士服に特に厳しさが見られる」

 売上額は前年同月比15.5の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲50.0から▲62.5となった。
 紳士服はスーツの下取りセール等で、消費意欲の掘り起こしを懸命に行っているが、回復の兆しは見られず、売上の減少が続いている。婦人服では秋物セールが好調で、売上が前年同月を上回っているが本格的な回復には至っていない。呉服は、依然として消費意欲が低迷しており、前年同月と比べ売上の減少が続いている。

2.身回品
「日用雑貨では近隣の大型店の影響を懸念」

 売上額は前年同月比10.0の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲33.3から▲66.7となった。
 カバンは、客足の減少、他店との競合により売上は引き続き前年同月比で減少している。玩具はヒット商品もなく売上額は大幅に落ち込んでいる。好調であった日用雑貨では、売上が減少しており、大型店による影響を懸念している。

3.飲食料品
「生鮮食料品、ワインが好調」

 売上額は前年同月比3.7%増。3ケ月先の業況見通しDIは▲14.3から▲30.0となった。
 スーパーは、生鮮食料品を中心とした食料品の伸びにより、売上は前年同月を上回っている。また、競合店の動向次第によっては、消費税還元セールを検討していることろも見られる。酒類では、依然としてワインの売り上げが好調であり、日本酒は固定客や贈答用の需要が大きく低迷している。

4.家電品
「気温が高く暖房機器の出足が鈍い」

 売上額は前年同月比24.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは21.4から▲50.0となった。
 家電品においては、ヒット商品がない中で、平面ブラウン管テレビを中心に販売強化しているが、消費の冷え込みの影響が強く見られ、買い控えの傾向が依然強く見られる。また、10月は暖かい日が続いたため、暖房機器の出足が鈍く、特に床暖房のような大型暖房機器の売り上げが落ち込んでいる。

バックナンバー集へ戻る