県内経済の動向


県内経済動向調査結果(12月)


製造業:製造業全体の生産額は2ヶ月連続で前年並みで推移
建設業:経済対策の効果を受け、受注額、完工高ともにプラス
小売業:一部の商品を除き買い控え傾向が続く

県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。
(対象企業215社)

 県内経済は、製造業では、企業の設備投資削減の影響の大きい一般機械等で引き続き生産額の減少が続いているが、主力の電気機械でパソコン関連製品を中心に好調なほか、低迷の続いている木材・木製品では生産額の減少幅が小さくなってきている。建設業では、経済対策の効果を受け受注額、完工高ともに前年同月比でプラスとなっている。小売業では、生鮮食料品など一部を除き買い控えの傾向が続いている。全体としては、企業の景況感は依然厳しさが見られるものの、県内経済は製造業の一部業種や建設業に回復の兆しが見られることから、景気は一部に底打ち感が見られる。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は▲23.2から▲25.8、現在の資金繰りは▲20.4から▲25.8、3ヶ月先の業況見通しは▲34.6から▲29.6となった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比1.0%減、同2.3減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲25.2から▲20.8となった。一般機械で、企業の設備投資削減の影響が大きく、輸送機械でも自動車業界の低迷から生産額の減少が続いているが、主力の電気機械で、大型液晶ディスプレイ等のパソコン関連製品が好調で生産額を大幅に伸ばしているほか、大幅な生産額の減少が続いてきた木材・木製品では生産額の減少幅が小さくなってきたため、製造業全体の生産額は前年同月比で2ヶ月連続で前年並みになっている。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比24.9%増、同9.0%増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲29.0から▲18.8となった。経済対策を受けて公共事業は出てきており、受注額は順調に推移しており、完工高も8ヶ月ぶりにプラスに転じているが、以前に比べ利益率が落ちており数字ほど経営状況は良くなっていない。一方民間事業は引き続き低迷が続いている。
 小売業では、売上額は前年同月比2.0%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲55.7から▲52.5となった。飲食料品では、青果や鮮魚など生鮮食料品を中心に売上が伸びているが、衣料品では総じて売り上げの減少が続き、家電品でも暖房機器など一部を除き、売り上げが伸び悩んでいる。また、今後発行される地域振興券について、一時的な売上の増加があるだけで、消費の拡大に繋がらないとする悲観的な見方が多く、その効果の大部分も大型店に吸収されると見ている。そのため、小売業全体では売り上げの減少が続き、先の見通しも不透明感が強くなっている。
 有効求人倍率は、先月に引き続き0.48倍となっており、雇用情勢は依然厳しい状況が続いている。

DI値は各調査項目について、好転企業割合から悪化企業割合を差し引いた値です。

▼全業種 DI値の推移

製造業の動向

1. 食料品
「米菓はヒット商品が通信販売を中心に好調」

 生産額は前年同月比4.0%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲43.8から▲52.9となった。
 米菓は、ヒット商品が通信販売を中心に好調に推移し、全体の生産額の減少をカバーしている。
 酒造は、贈答品において前年並みの売り上げを確保しているが、一般小売や飲食店向けが伸び悩んだため生産額は前年同月比でやや減少している。ハム・ソーセージ類は、生産量は前年並みになっているが、納入価格下落の影響が大きく生産額は減少している。

2.繊維・衣服
「紳士服、婦人服ともに厳しい状況が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.3%の減、同11.1%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲26.7から▲20.0となった。
 紳士服関連では、堅調に推移していたYシャツに生産の落ち込みが見られ、婦人服では受注量の伸び悩みに加え、製品単価の低下が見られる。また、紳士服と同様に小ロット、短納期等の厳しい状況が続いている。スポーツウェアは、学校向けは来春用の受注が出始めたため、受注額は前年同月比で増加している。

3.木材・木製品
「合板は減産体制、雇用調整助成金の利用が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比15.0%の減、同3.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲21.1から▲5.3となった。
 合板は、競合している輸入合板の情勢の変化により単価に持ち直しの傾向が出始めているが、需要がまだ本格的でないことから減産体制が続いており、雇用調整助成金制度の利用も引き続き見られる。また、一般製材は、外材を扱うところでは国産材からの切り替え需要もあり一頃に比べると売り上げを確保しているが、国産材を扱うところでは需要が県内に限定され、採算がとれない状況が見られるなど厳しい状況となっている。業界全体としては、一部に回復の兆しが見られ、生産額の減少幅も小さくなってきていることから底打ち感が見られる。

4.鉄鋼業
「水道管継手は単価の低下により受注額減少」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比18.1%の減、同16.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から16.7となっている。
 水道管継手は、受注量が出てきたが、単価の低下が見られたため、受注額は減少している。鋳物は、建設・機械部品関連の生産を中心とするところでは、公共事業量の回復による効果が得られず厳しさが続いている。

5.金属製品
「シャッター、アルミサッシは受注の減少が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比8.9%の減、同28.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲55.6で変わらず。
 橋梁は大規模な公共事業の受注により受注額は大幅に増加している。オフコン用型枠は需要の低迷により受注額は大幅に減少している。アルミサッシ、シャッターは、ともに生産額が前年同月比で大幅減少が続いており、先行きについても不透明感が強くなっている。

6.一般機械
「全体的に企業の設備投資削減の影響大」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.5%の減、同21.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から▲8.3となった。
 合理化・省力化機械、一般産業機械などは、景気低迷による民間企業の設備投資削減の影響から、引き合いが減少し、製品単価の引き下げも続き生産額は減少している。塗装用スプレーガンは特に自動車関連の落ち込みが大きいことから生産額は減少しており、在庫も過剰気味であることから厳しい状況となっている。

7.電気機械
「コンデンサは輸出向けが好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比5.7%の増、同4.1%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲23.1から▲11.5となった。
 コンデンサ関連においては、フル稼働状態が続いており、特にアメリカ、EU等海外向けが中心に好調となっているが、輸出が中心であることから為替レートの動向が注目される。情報・通信関連部品は、電子回路基盤がノートパソコンや周辺機器を中心に引き続き好調なほか、省電力・省スペースをうたった大型液晶ディスプレイも好調に推移し、生産額、受注額は前年同月比で大幅に増加している。また、ダイオード、トランスなど半導体関連では半導体市況の落ち込みが続き、依然厳しい状況となっているが、下げ止まりの感が見られ、一時期の不振を脱している。

8.輸送機械
「パワステポンプで販売不振によるリストラ策が取られる」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比10.0%の減、同10.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは28.6から42.6となった。
 自動車シートは平年並みで順調に推移しているが、パワーステアリングポンプは資本提携や車種の絞り込みなど販売不振に伴うリストラ策が取られ厳しい状況が続いている。ブレーキディスク関連は、2輪向けが海外からの受注が入るなど順調に推移している。なお、市場では新規格により軽自動車が好調な動きを見せているが、小型乗用車やトラックでは販売の低迷が続いている。

9.精密機械
「はかり類は価格競争の激化が予想される」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比2.7%の増、同9.6%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲66.7から▲77.8となった。
 はかり類は、ヒット商品が引き続き堅調に推移しているが、ライバル企業の参入により価格競争の激化が予想される。腕時計類においても、ライバル企業との価格競争が続いている。光学レンズでは、医療向けの生産は好調に推移しているが、カメラ用レンズ等その他は、受注がやや減少している。

建設業の動向

「受注額は順調に推移し、完工高も8ヶ月ぶりに前年同月比プラス」
 受注額、完工高は前年同月比24.9%の増、同9.0%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲29.0から▲18.8となった。
 経済対策を受けて公共事業は出てきており、受注額は順調に推移しており、完工高も8ヶ月ぶりにプラスに転じているが、以前に比べ利益率が落ちており数字ほど経営状況は良くなっていない。一方民間事業は依然落ち込みが続いている。また、企業により工事量の確保に差があり、受注額が大幅に落ち込んでいるところも見られる。県内の建設業の倒産件数は平成10年中45件(平成9年38件)と上半期の倒産多発により、高水準となった。

小売業の動向

1.衣料品
「紳士服、婦人服では冬物に動きが見られず」

 売上額は前年同月比21.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲29.0から▲62.5となった。
 紳士服は、冬物の動きが悪く、スーツの下取りセール等の各種セールも低調で依然厳しい状況となっている。今後については、フレッシュマンセールを控えているためやや良としている。婦人服、呉服も売り上げの減少が続いており、依然として厳しい状況となっている。

2.身回品
「消費低迷が続き、クリスマス需要も期待薄」

 売上額は前年同月比16.8の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲63.6で変わらず。
 カバンは、店の立地条件により売り上げに差が見られ、新入学セールも客足が鈍く、全体としては売上額は前年同月比で減少が続いている。高級品に対する需要が依然落ち込んでいることから、時計、貴金属等の高額商品は大幅な減少が続いている。玩具はクリスマスの需要期であったが客足、単価ともに落ち込み、売り上げは減少している。

3.飲食料品
「食料品は特に鮮魚部門、青果部門が好調」

 売上額は前年同月比5.5%増。3ケ月先の業況見通しDIは▲38.1で変わらず。
 スーパーでは、ハタハタの好漁の影響が見られた鮮魚部門や青果部門で売り上げの伸びが見られた。酒類では、種類別に見るとワイン発泡酒など一部商品が前年に比べ伸びているものの、清酒その他は伸び悩んでいる。業態別に見ると、既存の小売酒店はディスカウントショップとの競争が続き、値下げを余儀なくされており厳しい状況となっている。

4.家電品
「白物家電、AV関連を中心に低迷が続く」

 売上額は前年同月比7.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲64.4から▲52.5となった。
 家電品は、パソコン、携帯電話等の情報通信機器やFF温風ヒーターが好調だった暖房機器にやや動きが見られたが、白物家電やAV関連等中心にその他多くの製品は低迷が続いている。

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