県内経済の動向


■ 8 月 概 況 ■


 県内経済は、製造業では主力の電気機械を中心にパソコン・携帯電話関連部品が好調を持続しており、増産のための設備投資の動きが散見される。また、全国的な住宅着工の増加を受けて、木材・木製品も生産額増加が続いており、輸送機械の生産も増加に転じた。一方、食料品や繊維・衣服などでは生産額の減少が続いている。建設業では、土木工事を中心とする公共事業の手持ち工事量は十分であるものの、年度後半の受注に対する懸念があるほか、民間事業は低迷が続いている。小売業では猛暑により、季節商品は好調であったものの、消費全体を押し上げるまでには至っていない。県内経済は、生産面では生産水準が増加に転じた業種に広がりが出てきており、回復に向かいつつあるが、消費面では底堅い動きを示しているものの、本格的な回復までには至っておらず、全体として回復の兆しはあるものの横ばいが続いている。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は6.9から▲2.7、現在の資金繰りは▲12.4から▲11.0、3ヶ月先の業況見通しは▲6.4から▲15.1となった。5ヶ月ぶりに再び全ての指標がマイナスとなった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比8.6%増、同7.8%増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲0.8から▲5.7となった。食料品や繊維・衣服などでは生産額の減少が続いているが、長らく生産額の減少が続いていた輸送機械で生産が前年同月比で増加に転じた。また、新築住宅着工の増加を受けて、木材・木製品では生産額・受注額共に前年同月比増が続いている。さらに、主力の電気機械などでは、パソコン・携帯電話関連部品を中心に高水準の生産が続いており、増産のための設備投資の動きが散見されるようになった。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比7.4%減、同10.2%減。3ヶ月先の業況見通しDIは6.3から▲15.6となった。公共事業の発注については一服感があるが、土木工事を中心として手持ち工事量は十分なところが多い。ただし、公共事業を主とする企業のうちには、年度後半の発注動向に懸念を持つ企業があり、3ヶ月先の業況見通しでは7ヶ月ぶりにマイナスに転じた。一方、民需については依然として物件が少ない中、受注競争が厳しい状況となっている
 小売業では、売上額は前年同月比0.1%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲23.4から▲32.8となった。月半ばまでの猛暑により、夏物衣料品やビール・ジュース類、さらにエアコン等の売上は好調であり、家電品については29ヶ月ぶりに前年同月の売上を上回ったものの、代わりに他の商品の売上は落ちるなど、全体的な景況の回復までには至っていない。また、エアコン等の動きについては一時的なものとする見方が多く、個人消費の本格的な回復には至っていない。
 一方、有効求人倍率は、0.48倍と依然低水準で推移しており、雇用情勢は厳しい状態が続いている。

 県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。(対象企業222社)

全業種 DI値の推移


輸送機械の生産が増加に転じる

1. 食料品
「生産額の減少が続く」

 生産額は前年同月比11.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲27.8から▲22.2となった。
 酒造は、猛暑により需要がビールや発泡酒に集中したほか、贈答品需要も盛り上がらず、生産額が大幅に減少した。パン・菓子類は、概ね横ばいが続いている。食肉加工では、中元受注が伸び悩み、生産額は減少した。うどん類でも中元物の動きが悪く、前年を下回っている。

2.繊維・衣服
「依然として生産額の減が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比12.2%の減、同19.4%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から12.5となった。
 スポーツウェアでは、海外発注の影響等により生産額の減少が続いている。紳士服では、依然として生産額が減少しているところが多いが、ブランド物の秋冬物の生産では前年を上回っているところもある。婦人服では、受注時期が遅くなっており、バーゲン時期の秋冬物の受注次第とするところもあるが、生産水準は前年を下回っている。一方、カジュアルウェアについては、当面の受注が十分なほか、先行きについても明るい見通しである。

3.木材・木製品
「製材、合板関係とも生産額増が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比26.6%の増、同19.1%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは5.3から▲35.0となった。
 合板は、生産額の増加が続いているが、コンクリートパネル等は好調なものの、ハードボード等は低迷しているほか、市況が弱含みになるなど先行きは微妙としている。一般製材やプレカット材、集成材等については、住宅着工の増加に伴って生産・受注の増加が続いている。

4.鉄鋼業
「水道管関係は生産額が増加」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.4%の減、同10.1%の減。3ヶ月先の業況見通しDI▲20.0で前月と変化なかった。
 水道管関係では、好調な公共工事を受けて、生産額の増が続いている。一方で、鋳物関連では、依然として受注の増加要因となるものが見あたらず、厳しい状況が続いている。

5.金属製品
「建築工事関連で生産額減が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比18.3%の減、同30.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から▲20.0となった。
 鉄骨等建築工事関連では、民間需要が回復していないことから、生産額の減が続いている。アルミサッシ、シャッター等建具関連でも、民需が依然として低迷しており、厳しい状況となっている。電気機器用品関連では、受注減が続いていたオフコン用筺体で回復の兆しが出ている。

6.一般機械
「生産額の増加が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比19.5%の増、同1.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは9.1から▲27.3となった。
 一般産業機械では、工場新設に伴って木材機械の生産が増えているほか、首都圏からの引き合い・受注が好転したことにより、生産額が増えているが、期待していたほど民間設備投資が進んでいないため、先行きについては不透明としている。

7.電気機械
「依然として好調が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比8.5%の増、同8.8%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは14.8から22.2となった。
 液晶ディスプレイは、ノートパソコンやディスクトップパソコン向けの14〜15インチ大型モニターが引き続き好調で、繁忙状態が続いている。電子回路関係でも、パソコン関連機器用を中心に好調を持続しているほか、コンデンサ類やダイオード等もパソコン・携帯電話・ゲーム機用を中心にフル稼働状態が続いている。しかし、納入先からの値下げ要請が多いほか、海外依存の割合の多いところでは、円高の推移に懸念を抱いている。また、光ファイバー関連部品の生産も活発化しており、先行きも受注が増加するものと見ている。

8.輸送機械
「20ヶ月ぶりに生産増加」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比16.0%の増、同13.6%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは28.6から14.3となった。生産額は20ヶ月ぶりに前年同月を上回った。
 パワステポンプ関連では、輸出向けの好調により、生産が上向いているが、一時的な動きとの見方をしている。シート関連では、競合車種の増加を受けて、生産が落ち込んでいる。エンジン・ミッション関連では、概ね横這いが続いている。

9.精密機械
「携帯電話関連部品で増産投資の動き」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比24.1%の増、同32.9%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲33.3から11.1となった。
 時計類は、価格競争が厳しい中で生産水準の今後の見通しは不透明としている。はかり類は、ヒット商品の体脂肪計付き体重計がライバル企業の参入にもかかわらず、好調を持続している。光学レンズ関連では、景気回復の期待感から受注が増加している。一方で、液晶等携帯電話関連部品は、受注・生産共に好調であり、生産設備増強の動きもある。


手持ち工事は充分なものの、公共事業の先行きに懸念

「公共事業の先行きに懸念」
 受注額、完工高は前年同月比7.4%の減、同10.2%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは6.3から▲15.6となった。
 公共工事の受注に関しては、春先からの高水準の発注がここにきて一服の感がある。ただ、公共工事でも、高速道路関係を中心とした土木工事の受注は比較的多いが、建築工事の受注は少ないままとなっている。また、受注競争が厳しく、公共工事を受注できたところとできなかったところとの明暗の差が大きい。土木関係を中心に、手持ち工事量は十分なところが多いが、今年度後半以降の受注には懸念を抱いている。また、一般住宅を中心とする企業の中には、春先に比べて動きが鈍くなったと指摘するところもある。それ以外の民需では、依然として物件が少ない中、受注競争が厳しくなっている。


猛暑によりエアコン等季節商品が好調

1.衣料品
「猛暑により夏物婦人服が好調」

 売上高は前年同月比13.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲18.8から▲31.3となった。
 紳士服では、カジュアルウエアで若干動きがあったものの、スーツ類の売上減少が続いており、依然として厳しい状況が続いている。婦人服では、猛暑が続いたため、セール等で夏物を充分に展開できたところでは前年を上回る売上を確保している一方、在庫切れ等により秋物の展開に切り替えたところでは動きが芳しくなかった。また、先行きについては下げ止まりとの見方をするところもある。逆に、呉服では猛暑により売上が低迷したところが多い。

2.身回品
「季節商品は好調だったが全体売上は減」

 売上高は前年同月比6.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲25.0から▲16.7となった。
 日用雑貨では、猛暑を受けて季節商品の売れ行きが好調であった一方で、贈答品関係は伸び悩んだ。猛暑の影響では、化粧品のうち日焼け止めが好調であった。カバン類は依然として好材料がなく、売上額の減少が続いている。時計・貴金属も、高額品を中心として時計類の動きが依然として鈍いとしている。

3.飲食料品
「猛暑によりビールやジュース類が好調」

 売上高は前年同月比0.7%増。3ケ月先の業況見通しDIは▲31.8から▲54.5となった。
 スーパーでは、猛暑により生鮮品の売上が低迷したものの、ビールやジュース等の売上増でカバーし、引き続き堅調な動きを示しているが、県内資本・県外資本に関わらず、出店競争が厳しくなっており、個別店舗ではそうした出店の影響の有無が大きな影響を与えている。酒類では、飲食店向けなど日本酒を中心とするところでは売上減少が続いているが、ビールや発泡酒の売上でカバーしたところもある。ディスカウントショップでもビールやジュース類は好調であった。菓子類では、猛暑により売上が落ち込んだほか、贈答品の動きも今ひとつであった。

4.家電品
「猛暑によりエアコン等は絶好調」

 売上高は前年同月比28.9%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲14.3で前月と変わらなかった。
 家電品は、猛暑によりエアコンや冷蔵庫等の売れ行きが絶好調であったことから、消費税率引き上げ前の平成9年3月以来、29ヶ月ぶりに前年同月の売上を上回ることとなった。ただ一方、テレビ等の売上は減少しており、エアコン等の売上増がそのまま家電品全体の景況改善を示していない。また、売上増も一時的なものとの見方が多く、先行きについても反動減に対する懸念を持つところもある。なお、売上増加に伴い、資金繰りは好転している。

■県内経済動向調査集計結果8月■

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