県内経済の動向


■ 9 月 概 況 ■


 県内経済は、製造業では、主力の電気機械を中心にパソコン・携帯電話関連部品が好調を持続しており、生産増加に対応する臨時雇用も出ている。一方、食料品や繊維・衣服などでは生産額の減少が続いているものの、その他の多くの業種で生産は増加している。建設業では、依然として民需が低迷する中、公共工事の発注が一服の感があり、手持ち工事量は充分であるものの、年度後半の受注に対する懸念が出ている。小売業では、衣料品を除いては底堅い動きを示しているものの、消費全体を押し上げるまでには至っていない。県内経済は、生産面では生産水準が増加に転じた業種が広がり、回復に向かいつつあるが、消費面では底堅い動きを示しているものの、本格的な回復までには至っておらず、全体として、回復の兆しはあるものの横ばいが続いている。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は▲2.7から▲6.9、現在の資金繰りは▲11.0から▲16.2、3ヶ月先の業況見通しは▲15.1から▲20.8となった。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.9%増、同7.9%増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲5.7から▲18.0となった。食料品や繊維・衣服などでは生産額の減少が続いているが、その他の多くの業種において生産額が増加している。さらに、主力の電気機械などでは、パソコン・携帯電話関連部品を中心に高水準の生産が続いており、一部に増産のための設備投資の動きがあるほか、臨時的雇用により生産増加に対応しているところも出てきている。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比81.6%減、同19.8%増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲15.6から▲28.1となった。公共事業の発注については一服の感があり、土木工事を中心として手持ち工事量は十分なところが多いものの、昨年来の発注物件の中に完工工事も出てきている中、年度後半の発注動向に懸念を持つ企業がある。一方、民需については依然として物件が少ない中、受注競争が厳しい状況が続いている。
 小売業では、売上額は前年同月比2.4%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲32.8から▲22.6となった。先月の反動もあり、家電品の売上がマイナスになったほか、飲食料品の売上もマイナスに転じたが、その一方で身回品は増加に転じるなど、衣料品を除いては概ね昨年並みの売上となっており、個人消費は底堅い動きを示しているものの、本格的な回復には至っていない。
 一方、有効求人倍率は、0.50倍と依然低水準で推移しており、雇用情勢は厳しい状態が続いている。

 県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。(対象企業222社)

全業種 DI値の推移


多くの業種で生産水準が増加

1. 食料品
「依然として生産額の減少が続く」

 生産額は前年同月比3.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲22.2から▲29.4となった。
 酒造は、引き続き飲食店需要の減少や発泡酒人気などにより、日本酒需要が減少しており、先行きの見通しも悪化と見るところが多い。パン・菓子類は、概ね横ばいが続いている。食肉加工では、生産量が増えているものもあるが単価が低下しており、生産額は減少した。うどん類でも消費者マインドの低迷から需要がやや落ち込んでおり、生産額は前年を下回っている。

2.繊維・衣服
「依然として生産額の減少が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比10.8%の減、同7.3%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは12.5から▲25.0なった。
 スポーツウェアでは、メーカーの発注が細切れになっていることなどにより、生産額の減少が続いている。紳士服では、依然として生産額が減少しているところが多いほか、先行きについても懸念が強い。婦人服では、小売の動向を見ながらの短納期・小ロットの受注が増えているほか、単価の低下等により利益率が低下しているところが多いが、生産水準は前年並みとなっている。一方、カジュアルウェアについては、当面の受注が充分なほか、先行きについても明るい見通しでる。

3.木材・木製品
「製材、合板関係とも生産増が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比16.5%の増、同17.8%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲35.0から▲30.0となった。
 合板は、生産額の増加が続いているが、コンクリートパネル等は好調なものの、市況が弱含みとなり利益率が低下しているほか、先行きについても流通在庫が増えていることによる懸念が出ている。一方、ハードボード・パーティクルボード等は不振が続いている。一般製材やプレカット材、集成材等については、住宅着工の増加に伴う生産・受注の増加が続いているが、一部に需要の一巡を指摘するところがある。

4.鉄鋼業
「水道管関係は堅調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.5%の増、同0.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDI▲20.0で前月と変化なかった。
 水道管関係では、好調な公共工事を受けて、堅調な動きを示している。一方で、鋳物関連では、依然として厳しい状況が続いている。

5.金属製品
「公共工事関連での生産が大幅増加」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比33.2%の増、同2.3%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲20.0から▲30.0となった。
 橋梁・鉄骨等建築工事関連では、公共橋梁物件の生産が好調であったことから、前年同月を大幅に上回る生産額となっている。アルミサッシ、シャッター等建具関連では、民需が依然として低迷しており、厳しい状況となっている。
 電気機器用品関連では、受注減が続いていたオフコン用筺体で回復の兆しが出ている。

6.一般機械
「3ヶ月ぶりに生産額が減少に」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比15.5%の減、同14.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲27.3で前月と変化なかった。
 一般産業機械では、3ヶ月ぶりに前年同月の生産額を下回った。個々の企業により好不調が分かれているほか、全体として、期待していたほど民間設備投資が回復していないため、先行きについては不透明としている。一方で、公共工事関連機械では、好調な生産が続いているところもある。

7.電気機械
「依然として好調が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比5.8%の増、同6.9%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは22.2から14.8となった。
 液晶ディスプレイは、14〜15インチ大型モニターが引き続き好調で、繁忙状態が続いている。市況も持ち直しているほか、先行きについても増産体制が整ってきている。コンデンサ類やダイオード等の電子部品もパソコン・携帯電話・ゲーム機用を中心にフル稼働状態が続いているが、Y2K問題に関連しての在庫積み増しに係る受注という見方もあり、そうしたところでは年明けの受注減を想定している。また、臨時雇用によりフル稼働に対応しているところも多いが、正規雇用の増加については慎重である。一方で、海外依存の割合の多いところでは、円高の推移に懸念を抱いている。電子回路関係でも、パソコン関連機器用を中心に好調を持続しているほか、光ファイバー関連部品の生産も活発化しており、先行きも受注が増加するものと見ている。なお、台湾中部地震の影響を指摘するところはなかった。

8.輸送機械
「前月に引き続き生産増加」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比4.5%の増、同3.9%の増。3ヶ月先の業況見通しDは14.3から▲28.6となった。
 パワステポンプ関連では、モデルチェンジの効果により、生産が上向いているが、先行きについてはやや落ち込むとの見方をしている。シート関連、ブレーキ関連、エンジン・ミッション関連等では、個々に好不調の部門があるものの、全体としては概ね横這いとなっている。

9.精密機械
「携帯電話関連部品ではフル稼働」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比28.3%の増、同42.0%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは11.1から▲22.2となった。
 時計類は、価格競争が厳しい中で生産水準の今後の見通しは不透明としている。はかり類は、ヒット商品の体脂肪計付き体重計がライバル企業の参入にもかかわらず、好調を持続している。光学レンズ関連では、受注が回復傾向にあり、景況は好転する見通しである。一方で、液晶等携帯電話関連部品は、受注・生産共に好調であり、フル稼働の状況にある。


手持ち工事は充分なものの、公共事業の先行きに懸念

「公共事業の先行きに懸念」
 受注額、完工高は前年同月比81.6%の減、同19.8%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲15.6から▲28.1となった。一部企業において民間工事の解約案件があったため、受注が大幅に減少しているが、それを除いても、前年同月比で3割以上の減少になっている。
 公共工事の受注に関しては、昨年度後半からの高水準の発注がここにきて一段落している。また、受注競争が厳しく、公共工事を受注できたところとできなかったところとの明暗の差が大きい。こうした中、昨年度受注の工事の中には完工した物件も出てきており、手持ち工事量が十分なところが多いものの、今年度後半以降の受注には懸念を抱いている。また、一般住宅を中心とする企業の中は、依然として好調な受注が続いているところが多い。それ以外の民需では、依然として物件が少ない中、受注競争が厳しくなっている。


衣料品を除いては底堅い動き

1.衣料品
「全体として低調な動き」

 売上高は前年同月比12.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲31.3から▲12.5となった。
 紳士服では、スーツ類の売上減少が続いており、依然として厳しい状況が続いている。婦人服では、気温の高い日が続いたことや、好調だった夏物の反動などにより前年同月の売上額を割り込んだところが多かった。呉服では、依然として消費者マインドが低迷しており、低調な動きを示している。

2.身回品
「3ヶ月ぶりに売上が増加に転じる」

 売上高は前年同月比5.1%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲16.7から▲33.3となった。
 日用雑貨では、客単価が低下している中で昨年並みの売上となっている。玩具では、平均単価の低下がそのまま売上額の減少となっている。カバン類では、旅行シーズンということでキャリーバッグなどに動きが見られるが、概ね昨年並みである。時計・貴金属では、貴金属の企画セールにより売上を確保したところがあり、3ヶ月ぶりの売上増加につながっている。

3.飲食料品
「売上減少に転じるも堅調な動き」

 売上高は前年同月比1.1%の減。3ケ月先の業況見通しDIは▲54.5から▲40.0となった。
 スーパーでは、飲食料品を中心に引き続き堅調な動きを示しているが、県内資本・県外資本に関わらず、出店競争が厳しくなっており、個別店舗ではそうした出店の影響の有無が大きな影響を与えている。酒類では、飲食店向けなど日本酒を中心とするところでは依然として売上減少が続いている。菓子類では、暑さが一段落したことにより、売上が回復してきている。

4.家電品
「再び売上額は減少に転じる」

 売上高は前年同月比2.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲14.3から0.0となった。
 家電品は、前月の反動もあり、売上額は減少に転じた。依然として、パソコン・携帯電話関連の販売は好調である一方で、気温が高かったこともあり、暖房器具の販売は低調であった。先行きについては、気温の動向による暖房器具の売上次第との見方がある。

■県内経済動向調査集計結果9月■

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