県内経済の動向


■ 10 月 概 況 ■


 県内経済は、製造業では、主力の電気機械を中心にパソコン・携帯電話関連部品が好調を持続しており、生産増加に対応する臨時雇用も出ている。一方、他の業種では、前年同月の生産水準を上下する動きを示す業種もあるなど、全面的な回復までには至っていない。建設業では、依然として民需が低迷する中、公共工事の発注に一服感があり、手持ち工事量は充分であるものの、年明け以降の工事量に対する懸念が広がっている。小売業では、衣料品を除いては底堅い動きを示しているものの、消費全体を押し上げるまでには至っていない。県内経済は、生産面では生産水準が増加に転じた業種が広がり、回復に向かいつつあるが、消費面では底堅い動きを示しているものの、本格的な回復までには至っておらず、全体として、回復の兆しはあるものの、なお横ばいが続いている。
 全業種のDI値を前月と比較すると、3ヶ月前との業況比較は▲6.9から▲8.5、現在の資金繰りは▲16.2から▲16.0、3ヶ月先の業況見通しは▲20.8から▲30.0となり、3ヶ月先の業況見通しは5ヶ月連続して前月より悪化した。
 製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.9%増、同6.4%増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲18.0から▲19.0となった。食料品や繊維・衣服などでは生産額の減少が続いているほか、先月まで生産水準が上向いていた輸送機械や精密機械で前年同月を下回るなど、全面的な回復までには至っていない。その一方で主力の電気機械などでは、パソコン・携帯電話関連部品を中心に高水準の生産が続いており、一部に増産のための設備投資の動きがあるほか、臨時雇用により生産増加に対応しているところも出てきている。
 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比0.2%減、同1.5%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲28.1から▲56.3となった。公共事業の発注については一服の感があり、土木工事を中心として手持ち工事量は十分なところが多いものの、昨年来の発注物件の中には完工工事も出てきている中、年明け以降の工事量に対する懸念が広がっている。一方、民需については依然として物件が少ない中、受注競争が厳しい状況が続いている。
 小売業では、売上額は前年同月比4.6%減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲22.6から▲38.3となった。家電品の売上が再びプラスに転じた一方、身回品の売上は減少に転じるなど、衣料品を除いては概ね昨年並みの売上となっており、個人消費は底堅い動きを示しているものの、本格的な回復には至っていない。
 一方、有効求人倍率は、0.50倍と依然低水準で推移しており、雇用情勢は厳しい状態が続いている。

 県内経済の動向は、全県から業種別に企業を抽出し、県の地方部と商政課が調査したものです。(対象企業222社)

全業種 DI値の推移


輸送機械・精密機械の生産がマイナスに

1. 食料品
「依然として生産額の減少が続く」

 生産額は前年同月比3.9%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲29.4から▲35.3となった。
 酒造は、引き続き飲食店需要の減少や発泡酒人気などによる日本酒需要の減少のため、生産額の減少が続いている。このため、今年度の仕込量を絞るところも出ている。パン・菓子類は、概ね横ばいが続いている。食肉加工では、生産量が増えているものもあるが単価が低下しており、生産額は減少した。うどん類はお歳暮ギフトにやや動きが見られたことから、生産額が増加に転じた。

2.繊維・衣服
「依然として生産額の減少が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比4.2%の減、同3.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲25.0から▲26.7となった。
 スポーツウェアでは、在庫増のため出荷が遅れ気味となっていることなどにより、生産額は微減している。紳士服では、依然として生産額の減少が続く中、工場の集約等生産体制の見直しをするところも出ている。婦人服では、小売の動向を見ながらの短納期・小ロットの受注が増えているほか、単価の低下等により利益率が低下しているところが多いが、生産水準は前年並みとなっている。一方、カジュアルウェアについては、高単価の製品の受注により生産額は増加している。また、子供服について受注の回復を指摘するところもある。

3.木材・木製品
「製材、合板関係とも生産増が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比10.5%の増、同30.1%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲30.0から▲20.0となった。
 合板は、生産額の増加が続いているが、コンクリートパネル等は好調なものの、単価が低迷している。一方、住宅向けのパーティクルボード等に若干の動きが出ている。一般製材やプレカット材、集成材等については、住宅着工の増加に伴う生産・受注の増加が続いているが、一部に需要の頭打ちを指摘するところがある。

4.鉄鋼業
「水道管関係は堅調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比2.0%の減、同9.1%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲20.0から▲40.0となった。
 水道管関係では、好調な公共工事を受けて、堅調な動きを示している。一方で、鋳物関連では、依然として厳しい状況が続いている。

5.金属製品
「公共工事関連での生産が増加」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比12.3%の減、同4.6%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲30.0で前月と変化なかった。
 橋梁・鉄骨等土木建築工事関連では、公共工事関連の生産が好調であったことから、生産額の増加が続いている。アルミサッシ、シャッター等建具関連では、生産額の減少が続いているが、一部民間ビル物件に動きが出てきている。
 電気機器用品関連では、短納期・小ロットの受注が多く、厳しい状況が続いている。

6.一般機械
「再び生産・受注が増加に」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比8.7%の増、同17.0%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは▲27.3から▲36.4となった。
 一般産業機械では、個々の企業により好不調が分かれているが、全体としては生産・受注額は増加に転じた。一方で、公共工事関連機械では、好調な生産が続いている。

7.電気機械
「依然として好調が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比12.2%の増、同12.9%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは14.8から7.4となった。
 液晶ディスプレイは、14〜15インチ大型モニターが引き続き好調で、繁忙状態が続いている。こうした中で増産体制が整ってきたほか、市況も持ち直している。コンデンサ類やダイオード等の電子部品もパソコン・携帯電話・ゲーム機用を中心にフル稼働状態が続いているが、Y2K問題に関連しての在庫積み増しに係る受注という見方もあり、年明けの受注減を懸念しているところもある。また、臨時雇用によりフル稼働に対応しているところも多いが、一部には正規雇用に転換したところもある。一方で、海外依存の割合の多いところでは、円高の推移に懸念を抱いている。電子回路関係でも、パソコン関連機器用を中心に好調を持続しているほか、光ファイバー関連部品の生産も活発化している。

8.輸送機械
「3ヶ月ぶりにに生産額が減少に」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.8%の減、同8.6%の減。3ヶ月先の業況見通しDは▲28.6から 0.0となった。
 パワステポンプ関連では、当月の生産は減少したが、先行きについてはグループ企業の生産体制見直しにより好転するとしている。シート関連、ブレーキ関連、エンジン・ミッション関連等では、個々に好不調の部門があるものの、全体としては概ね横這いとなっている。県内に関連企業の多い日産のリストラ策の影響については、具体的に指摘するところはなかった。

9.精密機械
「携帯電話関連部品では増産投資の動き」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比9.9%の減、同7.8%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲22.2で前月と変化なかった。
 時計類は、価格競争が厳しい中でグループ内での生産体制の見直しにより、生産額が減少した。はかり類は、ヒット商品の体脂肪計付き体重計がライバル企業の参入にもかかわらず、好調を持続している。光学レンズ関連では、受注が回復傾向にあり、景況は好転している。一方で、液晶等携帯電話関連部品は、受注・生産共に好調でフル稼働の状況にあり、生産設備を増強する動きもある。


手持ち工事は充分なものの、工事量の先行きに懸念

「工事量の先行きに懸念」
 受注額、完工高は前年同月比0.2%の減、同 1.5%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲28.1から▲56.3となった。
 公共工事の受注に関しては、昨年度後半からの高水準の発注がここにきて一段落している。また、受注競争が厳しく、公共工事を受注できたところとできなかったところとの明暗の差が大きい。こうした中、手持ち工事量が十分なところの中にも、昨年度以降の受注工事の中には完工を迎える物件も出てきており、年明け以降の人員体制の見直しの動きも出ている。一方で、一般住宅を中心とする企業の中は、依然として好調な受注が続いているところが多い。それ以外の民需では、依然として物件が少ない中、受注競争が厳しくなっている。


衣料品を除いては底堅い動き

1.衣料品
「全体として低調な動き」

 売上高は前年同月比10.7%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲12.5から▲25.0となった。
 紳士服では、スーツ類の売上減少が続いており、依然として厳しい状況が続いている。婦人服では、商品単価の高い商品に動きが見られたことなどにより、前年同月の売上額を上回った。呉服では、依然として消費者マインドが低迷しており、低調な動きを示している。

2.身回品
「再び売上が減少に転じる」

 売上高は前年同月比1.9%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲33.3から▲36.4となった。
 日用雑貨では、客単価が低下している中で昨年並みの売上をとなっている。玩具では、平均単価の低下がそのまま売上額の減少となっている。カバン類でも、客単価の低迷により前年割れとなっている。時計・貴金属では、眼鏡が順調だったことなどにより売上増加となっている。

3.飲食料品
「売上減少が続くが堅調な動き」

 売上高は前年同月比4.2%の減。3ヶ月先の業況見通しDIは▲40.0から▲50.0となった。
 スーパーでは、飲食料品を中心に引き続き堅調な動きを示しているが、県内資本・県外資本に関わらず、出店競争が厳しくなっており、個別店舗ではそうした出店の有無が大きな影響を与えている。酒類では、飲食店向けなど日本酒を中心とするところでは依然として売上減少が続いている。菓子類では、贈答品が堅調であったと指摘するところがある。

4.家電品
「再び売上額が増加に転じる」

 売上高は前年同月比6.6%の増。3ヶ月先の業況見通しDIは0.0から▲38.5となった。
 家電品は、依然としてパソコン・携帯電話関連の販売は好調であり、暖房器具の販売も好調な売上を確保したところもあり、売上額は再び増加に転じた。

■県内経済動向調査集計結果10月■

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