このコーナーでは、積極的な経営展開を図り市場から評価を得ている企業や、商業者の新たな取り組み、アントレプレナー(起業家)の挑戦などを紹介します。

株式会社三栄機械  各種省力化機械や治工具の設計・製作を手掛ける由利本荘市の三栄機械が、航空機分野の受注が好調で操業度を上げている。
 当社が手掛けるのは、航空機の整備用器材、機体製造用治具と呼ばれるもので、航空機の機器検査や機体の製作時に精度や作業効率を高めるために使用されるものである。
 初めて納入した整備用器材は、航空自衛隊浜松基地に配備されているAWACS搭載のレーダードーム点検に使用するものだった。直流モーターを使用し地上14mまで自在に伸縮するこの器材は、レーダーという感度や精度が極めて高い機器の検査に使用することから、作業時に機器を傷つけないことや操作性・安全性に配慮し、提案から納入まで3年を要した製品である。このほか、ボーイング747型機の胴体製造時の治具も、従来の製造工程や作業性の改善に大きく寄与するものであった。このような、技術力や提案力が認められ、取引先の信頼を得ることで徐々に同部門の比率が高まっている。
 同業界への参入は、当社にAターンで入社した日本飛行機出身者がいたことがキッカケとなったが、専用の設計設備が必要なことや、これまでとは違う設計ノウハウ、資格審査など、当社にとって業務拡大とともにチャレンジ精神を向上させる意味でも大きな収穫であったという。
株式会社三栄機械  細矢社長は、「これまで様々な製造現場で使用する治工具や省力化・合理化機械を製作し、ものづくりの現場に精通しているという当社の強みを活かし、今後さらなる発展実現のために人材育成、技術習得に力を注いで行きたい。」と意欲を見せている。
 航空業界は2001年9月の米国同時多発テロ以来、落ち込みが続いていたが、今年に入り、ボーイング社の次期主力旅客機B787の製造を日本企業が約35%担当することが発表され、世界各国から同機の受注が相次いでいることなど、国内航空機業界も活気づいている。同社にとって航空機部門のさらなる飛躍が期待される。
株式会社三栄機械

株式会社秋田今野商店  大仙市刈和野にある株式会社秋田今野商店は、先祖の代から営んでいた醤油醸造業から転じ、醸造食品に欠かせない種麹菌(麹培養の基となる種)の生産・販売を行っているユニークな企業である。
 「もし、国歌や国鳥のように国の菌があるとすれば、間違いなく麹菌である。」今野社長が語るように、麹菌は清酒・焼酎等酒類、味噌・醤油等調味料、漬物といった日本の「旨いもの」に目立たず存在する隠し味となっている。
 およそ千年前に麹菌を用いた酒造法が興って以来、我が国では、「食用カビ」の研究が、食文化のレベルアップに大きく貢献してきた。同時に、分子生物学や遺伝子工学といったバイオテクノロジー分野の研究手法の手本となっているのである。
株式会社秋田今野商店 株式会社秋田今野商店
 秋田今野商店も昭和20年代に東京大学との共同研究により、「白ウサミ菌」なるヒット作品を世に出して以来、秋田県内の地ビール「田沢湖ビール」や「あぐらビール」はもちろん、北は北海道帯広の「十勝ビール」、南は沖縄県の「へリオスビール」まで、全国津々浦々の地ビール、また、鹿児島県の焼酎「薩摩白波」を始めとする各種焼酎に「種麹」を提供してきている。
 現在、秋田今野商店は、主力である「種麹」の生産・販売のほか、平成12年から秋田県の補助金を利用して、「環境にやさしい農薬」の開発など食品製造以外の分野での製品開発にも意欲的に取り組んでいる。「菌類はもっと世の中に貢献できる。特に医薬分野で貢献できるはずである。そういった真菌を数多く発見することが我が社の使命」と今野社長は言う。

株式会社秋田今野商店  大きさにしてわずか5ミクロン、1/1000ミリの種麹。縫い針の穴に100個並べられる小さな微生物が、今後刈和野の地から様々な分野にその大いなる存在感を知らしめることだろう。しかし、それは限りなく控えめな存在感であるに違いない。

はなやの森  全国的に有名な田沢湖町玉川地区。去る5月27日に湯宿『はなやの森』がオープンした。宝仙湖畔の当施設は、玉川ダムが建設され宝仙湖に沈んでしまった玉川小学校宝仙台分校の青写真を基に忠実に再現された湯宿である。
はなやの森  当湯宿の代表取締役である滝沢さんは長野県の出身。長野県昼神温泉郷で「はなや」というホテルも営んでおり常連客との旅行で玉川温泉に宿泊し、その粗朴な魅力に惹かれ、何度か来秋する内にとある絵と出会った。その絵こそ当湯宿開業のキッカケとなった『玉川小学校宝仙台分校』の絵画だった。「玉川で温泉宿を開きたいという気持ちが高まり、玉川の方に良くしていただいたお礼も込めて、分校を再現し湯宿にしようと決めたのです。」と滝沢さんは語る。
はなやの森  分校を再現するということで教育委員会から分校の青写真を提供してもらい、分校で教鞭を執っていた先生や分校を取材していた記者の方々など、人の輪が拡がったことも強く滝沢さんの心を捉え、湯宿開業の力となり今春の開業に漕ぎ付いた。
 当宿の温泉は、玉川温泉とは全く異なる泉質である。玉川温泉は強酸性泉(ph1.2)であるが、当宿は中性泉(ph6.7)である。泉質はナトリウム−硫酸塩泉(旧泉名:芒硝泉)で傷や脳卒中に効能があるといわれ、分析結果では飲用可という結果も得られており、国内でも初となる『飲泉台』を設置している。飲んでみると、まろやかでわずかに塩気が感じられる美味しい味。滝沢さんのお奨めでは『冷やして焼酎の割り水』が良いとのことだ。
飲泉台
はなやの森  当湯宿は木造平屋建、分校部分は男女浴場・休憩所となっている。休憩所は分校当時の職員室とのこと。客室は、全室数20室、そのうち露天風呂付の部屋は13室となり、各部屋から宝仙湖や白樺林が望めるなど部屋によって眺望も様々な造りとなっている。また、入浴のみや玉川温泉までの無料送迎も行っており、温泉愛好家や湯治客への対応も万全である。
 玉川地区に宿泊の際には是非、『はなやの森』を利用し『飲泉』を試してみてはいかがだろうか?

ココラボ  絵画や陶芸、演劇やレクチャーなど表現方法は何であれ、また、プロはだし、一流を目指して勉強中などレベルに拘わらず、ものづくりをする人にとって「展示会や発表会を開く」というのは共通する目標ではないだろうか?しかし悲しい哉、秋田にはこれまで、公的な施設以外には「自分の作品や思いを自由に発表する場が少ない」というのが実態だった。
 ところが今年5月、発表の場を求める人たちに希望を与える貸しスペースが出現した。秋田市大町の川反通りにオープンしたギャラリー『ココラボラトリー』である。ここでは、様々なジャンルのアート作品の展示のほか、演劇や音楽、レクチャー、ワークショップ等あらゆる表現活動を発表することができる。最近では、中国茶アドバイザーによる「中国茶会」、夏至に電気を消してキャンドルで絵画を鑑賞する「100万人のキャンドルナイト」を催し、好評を得ている。 ココラボ
ココラボ  『ココラボ』は、代表である笹尾さんが京都での活動に一区切りをつけ秋田に帰ってきた時に、「日常的に様々なアートに触れることのできるスペースが欲しい」と感じたことをきっかけに誕生した。いろんな発表に対応できる設備・備品があり、貸出も可能。展示やPR活動にも協力してくれるため、初心者も気後れせずに安心して利用できる。
 今後もユニークな催しが予定されているので、気になる催しをチェックして足を運んでみるといい。「ココを新しい話題を提供する情報発信の場にする」のが目標というから、何か新しい情報を得るために訪れるだけでも価値があるだろう。また、「こんな活動を発表してみたい」という人も、思い切って一度企画を持ち込んでみては?笹尾さんが丁寧に相談に乗ってくれる。
ココラボ  『ココラボ』での体験は、表現するあなた、鑑賞するあなた、どちらにとっても新たな世界の入り口となるかも知れない。