株式会社アクトラス


 ITベンチャーというと、今話題のネットショッピングやポータルサイトを思い浮かべる方も多いと思うが、確かな技術力に裏打ちされたITベンチャーが横手市に根付いている。
 (株)アクトラス代表取締役真田慎さんにお話を伺った。


画像通信システムの開発で経営改革に成功。請負型の企業から創造型の企業への脱皮を遂げる。 代表取締役 真田 慎

代表取締役
真田 慎


■ 便利屋からの脱却を図る
 もともと電機メーカーのシステムエンジニアだった真田さん。自らの技術力とサラリーマン時代に培った人的ネットワークの応援を受け、起業を決意したのが平成8年の夏のことであった。
 「一旗揚げてやろうというほどの欲はなかった。メーカーの便利屋的な存在になれれば・・・」との思いで、自らの会社アクトラスを有限会社として立ち上げた。
 メーカーの便利屋的な存在とは、メーカーの技術者が対応しきれない部分を補完する、サポート企業である。大手AV機器メーカーに対しては、ブラウン管モニターの検査システムを提供したほか、福祉関連機器やゲーム機のメダル識別装置の基盤部分を請け負う仕事も獲得した。

■ ニッチ分野の模索
株式会社アクトラス  創業5年目の平成13年、地味とはいえ堅実に業績を伸ばしていたアクトラスであるが、真田さん本人は、請負中心の業務展開に限界を感じていた。「受託開発が中心の受けの体制では、見通しが困難なことが分かった。ブラウン管モニターも、もはや斜陽製品であり、会社として次のステージを見据えなければならない時期が来たと思った。」と振り返る。
 「注目されていない分野、あるいは注目はされているが研究開発が進んでいない分野がきっとある。それを見つけてビジネスに繋げたい。」この時期の真田さんの思いである。大手が参入していないニッチ分野に進出していこうという姿勢が、真田さんを本格的ITベンチャー経営者へと変貌させたのである。
 真田さんは手始めに、音声認識システムの開発に取り組んだ。音声をデジタル処理した上で画像化し、人間や動物の発する音声によりパターン認証を行う。将来的には、鳴き声から、赤ん坊が今何を求めているのか、動物が怒っているのか喜んでいるのかなど、音声から感情認識しようとするシステムへの取り組みが秋田県創造的研究開発奨励事業に採択された。

株式会社アクトラス 株式会社アクトラス
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■ 受ける側から発する側へ
株式会社アクトラス  この研究を発端として、平成14年、秋田県の補助金事業「フェニックスプラン21」に採択された製品「ワイヤレスモニタリングシステム」を開発した。この製品は、ネットワークカメラを定点設置し、そのカメラの撮影範囲における通常の状態を決めておき、その撮影範囲に異変が起きたときに、直ちに設置者の携帯電話に異変画像メールを送信するという、迅速な画像処理能力を駆使した製品である。当時の「WORLD PC EXPO」にも出品し高い評価を得て、即効性の高い防犯システムを求めるセキュリティー会社や駐車場経営者、ゴミの不法投棄の悩みを抱える官公庁などから引き合いがあったそうだ。自然観測や研究観測にも適する汎用性から、現在は、NTT系列会社が販売代理店となり、幅広く売られている。
株式会社アクトラス  この「ワイヤレスモニタリングシステム」の開発に代表されるように、得意分野は画像処理。「ワイヤレスモニタリングシステム」の開発と並行して様々な画像処理ソフトウェアを開発している。
 デジタル画像が持つ色相や彩度を解析する「カラーアナライザー」は、DNAチップの分析に用いられ、医薬の分野に貢献していくことが期待されている。また、平面的なデジタル画像に奥行きを与えて3D画像として再利用することができる「3Dペインター」や異なるフォーカスを変化させて撮影した複数画像を合成して、全体的にフォーカスの合った画像を生成することができる「マルチイメージコンポーザー」は、一般生活の中でデジタルカメラのパソコン処理が多様化する中で生まれたアイデアであり、汎用性も高い。いずれは、これらのソフトを顕微鏡などに取り付け、付加価値の高い製品として売り出していく計画である。
 せっかく見つけたニッチ分野でも、大手にすぐに追いつかれるのでは、との質問をぶつけてみたが、真田さんは意に介さない。「他社が参入してくるのはやむを得ない。それよりも、同じ意識の経営者や研究者と連携して新しい市場を開拓する努力の方が大切です。そのためには、自分の持っている知識をできる限りオープンにするように心がけています。」

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■ ステージアップ、そして更なる高みへ
 「会社設立当初から付き合いのあるメーカーさんとは、いまでも取引させてもらっています。しかし、現在のアクトラスは、受託開発のみならず、自らがメーカー、製品提供者としての側面を併せ持つ企業にステージアップできたと思っています。」
 経営者として、常に危機感を抱きながら経営改革を経て更なる高みのステージへ。平成15年、有限会社アクトラスは、株式会社アクトラスへ組織変更を行い、現在に至っている。
 いわゆるナノテクノロジーの研究が深まり今まで我々の肉眼では捉えられなかった世界が広がる時代。そこは、真田さんが求めている誰にも手が付いていない分野の宝庫となるであろう。(株)アクトラスのさらなる発展に期待したい。

CORPORATION DATA
株式会社アクトラス
代表取締役 真田 慎
<本社>
〒013-0063
 横手市婦気大堤字谷地添99-2
TEL:0182-33-2301
FAX:0182-33-0339
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