このコーナーでは、積極的な経営展開を図り市場から評価を得ている企業や、商業者の新たな取り組み、アントレプレナー(起業家)の挑戦などを紹介します。

東北冷凍販売有限会社「東冷フーズ」
東北冷凍販売有限会社「東冷フーズ」  冷凍食品の宅配を行う東冷フーズが、良質の食材と自社開発商品を豊富に盛り込んだ商品群を武器に首都圏や東海地区などにも市場を拡大し業績を伸長させている。
 同社は、10年ほど前から県外市場開拓を目的として徐々に流通体制を整備、商品開発や販路拡大を図ってきたもので、関東地区などで加盟店を募り、これまで県外で20社ほどが加盟、加盟店には自社で扱う商品のカタログを販売、注文に応じて商品を提供するシステムを確立している。
 当社にとって欠かせないのは豊富な商品群に対応する食材の調達であるが、最大のポイントは約200社に上る独自仕入れルートを確立したことにある。多くの流通チャンネルを持つことで、それぞれの業者が得意とする食材を入手することが可能となり、良質の食材と自社開発商品を組み合わせた豊富な商品アイテムを提供することができるようになった。車えびを使ったフライやグラタンなど、スーパーなどで扱いづらい高品質な商品の提供や百貨店のカタログ販売に負けない商品も取り入れるなど、差別化を図ることで独自の宅配市場を開拓している。
東北冷凍販売有限会社「東冷フーズ」 また最近は、秋田の地場産品にも目を向けている。比内地鶏の大きさの揃わない卵を買い取り、比内地鶏のだし巻き卵として商品化、その味は顧客から高い評価を得ている。さらには矢島の低温殺菌牛乳やミルジーのジャージーアイスクリーム、鳥海のたけのこ、角館の煮豆、八森の目鯛、神岡の幸せの岡アイスキャンディなど秋田の生産者が持っている良質の商品の県外提供にも力を入れている。
東北冷凍販売有限会社「東冷フーズ」
 姉崎社長は、「県内で加工される食材には価格設定や流通経路などに問題があり、広く流通させたくても県内でできない商品も多い。また、最近は安いものが大量に出回る中で本物の味が失われている商品も多い。当社の商品購入者には本物の味を知ってもらいたいし、そのような食材を数多く提供したい。より良い商品を豊富に、しかも手頃な価格で提供できれば、顧客拡大につながり、秋田に少しでも雇用が生まれれば」と、新たな商品開発と市場開拓に意欲的に取り組んでいる。

有限会社マーヴェリックコーポレーション
有限会社マーヴェリックコーポレーション  アップル・マッキントッシュ・コンピュータ、通称「マック」に関して、秋田県内随一の知識とメンテナンス技術を有する会社が、秋田市南通のマーヴェリック・コーポレーションである。
 マックは、医療関係従事者やデザイナーなどの専門性の高い職業に従事している方に愛好者の多いコンピュータであるが、実は、同社の田宮昇社長も熱狂的な「マック・ファン」なのである。一度目の転職で就職した会社でマックに出会って、メインスイッチを押した時に発せられた起動音を聞いた瞬間、マックの虜になったのだと言う。田宮社長に言わせると、それは「アメリカの音」だったそうだ。「今の自分があるのは、マックに出会ったおかげ、『あの音』は僕の運命を決定づける音だった」。田宮社長自身、幼少からアメリカを訪れる機会が多くあり、幼い頃に刷り込まれた先進国アメリカの記憶を呼び覚ます音だったのであろう。
 以来、マックの素晴らしさを発見し続けることになり、「一番の売りは、頭に思い浮かべたものを、そのままに描くことができること。数値などに置き換えるような面倒な作業はいらないのです。このようなマックの楽しさをどんな形でもいいから伝えたかった。」と田宮社長は語る。
有限会社マーヴェリックコーポレーション  田宮社長が同社を立ち上げたのは、昨年10月。秋田市内のマック販売店に就職して、マックの楽しさを伝える仕事をしていたのであるが、昨年8月にこの販売店が突然閉鎖を宣言し、田宮氏は解雇された。「東京に出て、アップル・ジャパン社に就職することも考えましたが、販売店勤務時代の顧客に言われた「ひと言」が独立のきっかけでした」。その「ひと言」とは、販売店が閉鎖し、自身が解雇され、秋田を離れることになるかも知れないことを伝えに顧客回りをしていたときに、あるデザイナーから言われた「俺たちも一緒に死ね、ということか」というものであった。「頭を打ち抜かれましたね。正直、これだけ信頼されているということに、新たな責任感が湧いてきました。もちろん僕もお客様のことは全員信頼している。だったら独立してやろう。」
 会社として1期目の決算が終わり、めでたく黒字を計上できた。2期目となる今期は、粗利で2,000万円以上となる予定だという。「売り上げ云々とは別に、まだまだマックの良さを伝えていかなければならないと思っています。そのためには、いずれ社員を増やして、店舗を構えたいと思っています。そこは、訪れる顧客同士がマックについて情報交換し合えるような空間でありたいと思っています。」
 今のところ、事務所は自宅駐車場を改造した簡素なものであり、事務所内は、一人で何役もこなさなければならない現実を表しているような雑然としたものではあるが、デスク上の2台のコンピュータは、何年も使用しているとは思えないほど綺麗に、大切に使用されており、田宮社長自身のマックへの愛情が窺えた。

NPO白神ねっと
NPO白神ねっと  去る9月30日、能代・山本地域の特産品ポータルサイト『白神百撰』がオープンした。サイトはNPO白神ねっとが管理・運営を行っている。サイトを立ち上げたきっかけは、昨年末に当財団主催の「ソフト産業展2004」で楽天(株)取締役杉原氏の基調講演を聴講し、触発され、中心市街地商業活性化推進事業の一環で採用されたことによる。
 開設準備中は多少の不安があったようだが、掲載募集を開始したところ予想を上回る参加数があり、やはり潜在的な需要があったと実感したとのこと。参加店51店、掲載アイテム約200点でオープンに漕ぎ着けた。
NPO白神ねっと  サイトに掲載される特産品は、能代市と山本郡内の特産品である。海や山の特産物はもちろんのこと、白神酵母を使用した様々な加工品、秋田杉の木工品、祭りを収録したDVDなど多種多様な商品を取り揃えている。また、『ヒャクログ』と題し、掲載店主のひと言をブログに掲載する面白い試みも行っている。
 オープンして1ヶ月、宣伝活動も特に行っていなかったが、県内に次いで東京・大阪、そして北海道からのアクセスが多いという。現在は検索エンジンの主流であるGoogleやYahoo!などへ広告を掲載しており、Googleについては「秋田」というキーワードで検索するとスポンサー欄に当サイトのリンクが表示される。 11月初旬現在で二番目に表示される状態になっているので、今後のアクセス数の伸びが期待されるところだ。
NPO白神ねっと  また、期間限定で畠町商店街内に『白神百撰』の店舗も10月10日にオープンしている。サイト掲載されている商品の一部を陳列し、アンテナショップ的な活動を実施している。毎週月曜日には、白神酵母のパンも陳列され人気を博している。また、店舗スタッフも白神ねっとのスタッフが行っており、週に3回、『白神百撰メールマガジン』を発行し、好評を得ている。
 理事である納谷さんは、「インターネットを活用したビジネスには、まだまだ可能性があるということを実感しております。プロバイダ事業も行っているので、今後、地域活性化につながるサービス拡充も予定しております」と熱く語った。事業を活用し、新たなビジネスチャンスの場を提供した当サイトに今後も注目したい。

ドッグハウス ソラ
ドッグハウス ソラ  今年9月、県内で初めての、トリミング、カフェ、グッズ販売複合型のドッグカフェ『ドッグハウス ソラ』がオープンした。国道から少し入ったのどかな住宅街にあり、店の前には田んぼが広がる。顧客の9割は愛犬と一緒に訪れるとのことだが、もちろん犬を連れていなくても大丈夫。オーナーの佐藤さんの愛犬『ソラ』ちゃんが、外のデッキを走り回ったり、気持ちよさそうに日向ぼっこしている姿を見ながらお茶を飲んでいると、本当に癒される。
ドッグハウス ソラ 佐藤さんが開業を思い立ったのは3年ほど前、「子育てを卒業した」と感じた時だった。とはいえ、最初からドッグカフェを考えていたわけではない。犬が大好きで「何か犬と一緒にやれることを」という漠然とした思いだけだったという。しかし、創業セミナー等に参加しビジネスプランを学ぶうちに、やりたいことが具体化してきた。そして、トリミングの研修などで足りなかったことをクリアし、2〜3年かけて開業に漕ぎつけた。「縁が助けてくれました。開業に際して力を貸してくれた方、来店して下さるお客様やワンちゃん。全ての縁に感謝しているし、大事にしたいですね」と佐藤さんは言う。
ドッグハウス ソラ  ここはドッグカフェだが、前述のとおり、プロのトリマーによるトリミングも行っている。実はこのトリミングが当店の特徴。殺菌力が高く安全なオゾン水を使用するので、シャンプーは脱臭効果があり、毛の艶も向上する。皮膚の弱い犬でも安心だ。また、カフェ併設という独特のスタイルや、トリミングルームの窓から変身していく愛犬が見えるので安心と、多くの飼い主から好評だ。
ドッグハウス ソラ  現在、外のデッキはオープンスタイルのため冬場の使用が難しい状況。しかし、いずれは一年中使えるようにする予定だ。また、長年犬を飼ってきた経験や自身のトリミング経験、顧客との情報交換などで得た知識から、犬に関する様々なアドバイスをしている佐藤さんだが、今後は動物病院との提携も実現し、更に多くの困り事にも対応していきたいとのこと。多くの飼い主とその愛犬たちにとって、いつまでも癒しの空間であり続けて欲しい。
ドッグハウス ソラ