アップル・マッキントッシュ・コンピュータ、通称「マック」に関して、秋田県内随一の知識とメンテナンス技術を有する会社が、秋田市南通のマーヴェリック・コーポレーションである。
マックは、医療関係従事者やデザイナーなどの専門性の高い職業に従事している方に愛好者の多いコンピュータであるが、実は、同社の田宮昇社長も熱狂的な「マック・ファン」なのである。一度目の転職で就職した会社でマックに出会って、メインスイッチを押した時に発せられた起動音を聞いた瞬間、マックの虜になったのだと言う。田宮社長に言わせると、それは「アメリカの音」だったそうだ。「今の自分があるのは、マックに出会ったおかげ、『あの音』は僕の運命を決定づける音だった」。田宮社長自身、幼少からアメリカを訪れる機会が多くあり、幼い頃に刷り込まれた先進国アメリカの記憶を呼び覚ます音だったのであろう。
以来、マックの素晴らしさを発見し続けることになり、「一番の売りは、頭に思い浮かべたものを、そのままに描くことができること。数値などに置き換えるような面倒な作業はいらないのです。このようなマックの楽しさをどんな形でもいいから伝えたかった。」と田宮社長は語る。
田宮社長が同社を立ち上げたのは、昨年10月。秋田市内のマック販売店に就職して、マックの楽しさを伝える仕事をしていたのであるが、昨年8月にこの販売店が突然閉鎖を宣言し、田宮氏は解雇された。「東京に出て、アップル・ジャパン社に就職することも考えましたが、販売店勤務時代の顧客に言われた「ひと言」が独立のきっかけでした」。その「ひと言」とは、販売店が閉鎖し、自身が解雇され、秋田を離れることになるかも知れないことを伝えに顧客回りをしていたときに、あるデザイナーから言われた「俺たちも一緒に死ね、ということか」というものであった。「頭を打ち抜かれましたね。正直、これだけ信頼されているということに、新たな責任感が湧いてきました。もちろん僕もお客様のことは全員信頼している。だったら独立してやろう。」
会社として1期目の決算が終わり、めでたく黒字を計上できた。2期目となる今期は、粗利で2,000万円以上となる予定だという。「売り上げ云々とは別に、まだまだマックの良さを伝えていかなければならないと思っています。そのためには、いずれ社員を増やして、店舗を構えたいと思っています。そこは、訪れる顧客同士がマックについて情報交換し合えるような空間でありたいと思っています。」
今のところ、事務所は自宅駐車場を改造した簡素なものであり、事務所内は、一人で何役もこなさなければならない現実を表しているような雑然としたものではあるが、デスク上の2台のコンピュータは、何年も使用しているとは思えないほど綺麗に、大切に使用されており、田宮社長自身のマックへの愛情が窺えた。
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