このコーナーでは、積極的な経営展開を図り市場から評価を得ている企業や、商業者の新たな取り組み、アントレプレナー(起業家)の挑戦などを紹介します。

株式会社丸新製作所
株式会社丸新製作所  学校向け木製学習机「杉デスくん」で木のかおる環境にやさしい自然の空間を提供している能代市の丸新製作所が、家庭用学習机分野に進出し、インタ−ネット販売で売上を伸ばしている。
 同社の学習机「ぼくのつくえは木のつくえ」は、素材が全て国産無垢材の秋田杉とヒノキで作られたもので合板(ベニヤ板)は一切使用していない。塗料も有機溶剤を含まない安全なものを使用し、「地球と人にやさしいものづくり」をテーマに「木の香り」「やすらぎ」「重厚感」にこだわり、一品一品丁寧に仕上げる自信作だ。
株式会社丸新製作所  2002年の販売開始当初は順調な滑り出しとは行かなかったが、常務で後継者の櫻庭司さんが家具店での販売ではなく個人向けにインターネットでの直接販売を検討、名前も知られていない当社の製品を見てもらうにはどうしたらよいか、製品の良さをホームページでアピールしようと研究を重ねた。その結果、検索上位に掲載されたことがキッカケとなり全国に販路が広がったという。最近は「次の子供にも同じものを」というリピーターも増えてきているといい、櫻庭社長は「当社の名前も聞いたことが無いはずの全国の消費者から、これだけ注文や問い合わせを受けるとは思わなかった。健康や環境に関心のある人が増え、当社のオール国産材や製品に対するこだわりがインターネットを通じてわかってもらえたのではないか」と製品への自信を深めている。
株式会社丸新製作所  今年は1月上旬で既に110セット以上の予約が入り、これからシーズンピークを迎え300セットの販売を見込んでいるとのことで、3月末までの納品を希望する方には早めの予約を呼びかけている。
 また、「杉デスくん」も進化を続けている。発売からこれまで6千セット以上を納品、現在は「杉デスくん21」として、さらに新たな技術を採用し軽量、高強度を実現した。今年も能代市内の中学校、高校への納品も決まるなど、県内の小中学校、養護学校などを中心に年々浸透度を高めている。
 櫻庭社長は「今後も、県産材の活用と環境に徹底的にこだわり、顧客重視の視点を強く持ち、改良を重ね、より良い製品作りに努めたい」と意欲的に語ってくれた。

有限会社 よこて発酵厨房 蔵ら
有限会社 よこて発酵厨房 蔵ら  県内有数の米麹の生産地である横手平鹿地区は、古代に出端(イデハ)と呼ばれ、東に奥羽山脈を眺め、横手川を中心に水と緑が豊富で、古くから味噌や醤油といった発酵食品の製造元が栄えていた土地である。
 その伝統の食文化を守り、未来へ向けて継承したいと考えた一人の地元の男が、有限会社よこて発酵厨房蔵ら代表取締役小川晴資さんである。「かつては、横手平鹿地区では発酵食品づくりは各家庭の中に深く入り込んでいましたが、この地域も核家族化が進んでおりまして、貴重な伝統文化が衰退していく危機感がありました」。何か方策はないかと思案を重ね、辿り着いたのが、発酵食品がメインのレストランの立ち上げであった。
有限会社 よこて発酵厨房 蔵ら  小川さんはもともと首都圏のレストランを渡り歩いた料理人であり、この結論を導き出したのは必然の感があるが、この結論が結果として、市街地の活性化や地域興しの一役を担うことになる。横手市役所内に事務局がある「横手発酵文化研究所」や第三セクターの町おこし会社「トライ21」など地域の活性化策を求めていた官公庁が小川さんのアイデアに飛びつき、創業を後押ししてくれたという。
 「店舗用として市役所に紹介された『蔵』の賃貸が決まって、開店の道筋が見えました。市役所やあきた企業活性化センターの協 有限会社 よこて発酵厨房 蔵ら 力はもちろんですが、地元の農家の方々をはじめさまざまな皆様の御協力があり創業できました」。開店準備は総じて順調であったが、唯一苦心したのがメニューづくりだったそうだ。「発酵食品というと、味噌・醤油、そして納豆・チーズをイメージするでしょう。確かにこれらが発酵食品の代表ではあるのですが、私は、これらに加えて、豊かな大地で育てられた野菜類も広い意味での発酵食品であると捉えているのです。これらをメニューに加えることで、ずいぶん幅が広がりました」。
 古代イデハの伝統料理である肉類を酒粕で焼く「杜氏焼き」をメインメニューに据え、昨年11月3日にオープンした「発酵厨房蔵ら」は、蔵を改造した風情ある店構えとともに県内外の食通から好評を博している。「協力者やお客さんから『もっと発酵食品を全面に出して』との要請もあるので、そういったメニューを現在試作中です。 有限会社 よこて発酵厨房 蔵ら このメニューを提供できれば、まずは第1段階クリアです。それから先は、食文化のみならずこの地域に伝わる様々な文化を未来に繋げる空間を創り出していきたですね」。
 情報収集といえば、インターネットに頼りがちな昨今であるが、大地に根付いた伝統文化の確かな情報がここにある。

テルメックス東北株式会社 『やく石の癒』秋田本荘店
テルメックス東北株式会社 『やく石の癒』秋田本荘店  「美」と「健康」を求める女性を中心に、“癒し”をテーマにしたビジネスが注目を集めている今日、由利本荘市に岩盤浴施設「やく石の癒」がオープンし、連日、多くの利用客で賑わっている。
 岩盤浴は、一般的な乾湿高温サウナに比べ低温で入浴しやすく、高温サウナが苦手な人に加え、ストレスを多く抱える現代人の“癒し空間”としても人気が高い。また、同社が運営する「やく石の癒」は、他社と比較して多くの差別化された特長を持っている。
 まず、岩盤浴パネルに使用している石は、天然トルマリン鉱石と黒曜石の混合石をふんだんに使用している。一般にトルマリン鉱石は、マイナスイオンや遠赤外線を発生させる効果が高いといわれ、さらに黒曜石の持つ熱伝導媒体効果を組み合せることにより、体の芯からじっくり温めることができる。そして、入浴温度38℃〜42℃、湿度80%という低温高湿の入浴環境を実現し、身体への負荷を抑え、「冷え症」に起因する体調不良の改善や、女性の間で注目を浴びているデトックス(解毒・体内の老廃物を排泄し健康を維持する健康法)にも大きな効果を発揮している。小野社長自身も「椎間板、腰痛を患ったとき岩盤浴と出会い今の健康を取り戻した。この喜びを多くの人々に感じてほしい」という。
テルメックス東北株式会社 『やく石の癒』秋田本荘店
 また、同社は、中心市街地にある商業施設敷地内に立地することにより、“買い物”と“癒し”というコラボレーションを実現した。テルメックス東北株式会社 『やく石の癒』秋田本荘店「これからの時代、他社といかに差別化し、顧客の心をつかむのかが成功の条件。商業施設とのタイアップによりプラスα経営を目指したい」。石にこだわった岩盤浴のみならず、女性心理を巧みに経営に生かしたことが、開業3週間で多くのリピーターを生んでいる要因ではないだろうか。
 癒しビジネス市場は、高齢社会の進展、健康志向の高まりなどから、一層の拡大が見込まれる。「顧客が求めるサービスの提供。これに基づく差別化により由利本荘地域以外にも店舗を展開していくことが目標」と、さらなる意欲を見せている。

有限会社 千秋ケアサービス まごころタクシー

有限会社 千秋ケアサービス まごころタクシー有限会社 千秋ケアサービス まごころタクシー

 昨年10月、秋田市に、福祉介護タクシー専門の「まごころタクシー」が開業した。全国一高齢化率が高く、介護タクシー利用対象者が11.1万人もいる本県だが、許可事業者はわずか19社(26台)というのが実態。そのような中での開業ということで、交通弱者といわれる高齢者、障害者の期待は大きく、問い合わせ・注文は日々増えている。
 佐藤さんが介護タクシーで起業したのは、長年に渡り父の介護を経験したことに因る。「自分のしていることは本当に父の為になっているのだろうか」との思いから介護の勉強を始め、ヘルパーの資格を取得した。ところが間もなく父は他界、「父と同じような人に何かできることはないか」と考えていた時、移動の際に利用していた介護タクシーのことを思い出した。そして、佐藤さんが思い描く理想の介護タクシーで交通弱者の人々が少しでも快適に外出できるようにお手伝いしたいと考え起業を決意、妻の夕子さんにもヘルパーの資格と二種免許を取得してもらい、開業した。
有限会社 千秋ケアサービス まごころタクシー  当社の車は既存のタクシーよりも車内が広い、車いすのまま乗車できるリフト付の特殊車両だが(貸出車いすあり:無料)、車いす利用者でなくても要介護、要支援認定者、ケガや腰痛、障害などで外出が困難な人も利用できる。通院や薬局などへの送迎、買物や食事、趣味や銀行など日常の外出、また行楽などに利用できるほか、タクシーを利用しなくても、病院への診察券の提出や薬の受取り、荷物の発送代行や買物などの「生活救援サービス」も受けられる。料金は一般タクシーと同じ。身体・知的障害者手帳があれば1割引で、福祉タクシーチケットも利用できる。「県内どこでも伺います。誰にも気兼ねなく外出できるよう、また楽しい時間を過ごせるよう、まごころ込めてお手伝いします」と佐藤さんは力を込める。
 稼動車両は現在1台だが、近くストレッチャーが積める車も導入する。また、訪問介護事業所を開設し介護保険にも対応できるようにする予定とのことで、更に利用しやすくなる。今はまだ秋田市内が中心だが、高齢者、障害者の足として「まごころタクシー」が県内各地を走る姿を目にする日は近い。