キメ細かなサービスで
中核市に相応しいホテルを創る


株式会社 ホテル大和
代表取締役 佐渡谷 栄悦 氏



 秋田新幹線「こまち」の開通をひと月後に控え、首都圏などで積極的なPR運動を展開している県内観光業界。その活動の核となっている秋田県観光連盟の会長を務めるのが佐渡谷栄悦さん。自らも(株)ホテル大和(秋田市土崎港中央1―6―33)の経営者として敏腕をふるう一方、常に地域活性化のリーダーとして活躍してきた功績は、内外の多くの人が認めるところである。
 今号では、秋田市内でも数少ない地元資本のホテルオーナーである佐渡谷栄悦さんに話を聞いてみた。


ホテル大和さんの創業は・・・
佐渡谷
 私の両親が昭和32年に現在地に大和旅館を開いたのがそもそもの始まりです。ホテルに転身したのはそれから13年後の昭和45年のことです。折しも、秋田湾沿いに製紙工場ができ、火力発電所や精錬所の建設計画が発表された頃で、これからのビジネス客のニーズを考えた結果、ホテルへの衣替えは十分勝算を見込んでの決定でした。


株式会社ホテル大和


土崎地区唯一のホテルの誕生ですね・・・
佐渡谷
 土崎は古くから日本海交易で栄えた港町。現在でもJR土崎工場や自衛隊の駐屯地、税関や税務署といった官公庁や、港湾に付随するさまざまな大手企業の支店・営業所など、事業所の占める割合が極めて高いところです。それまでは、そこへ出張してくるほとんどの方が旧市内のホテルに宿泊していたのですから、ホテル開業当初はお客様からずいぶんと喜ばれたものです。


佐渡谷さんご自身がこのお仕事に就いたのは・・・
佐渡谷
 私は学生時代を含めた4年間、当時の衆議院議員であった故・佐々木義武先生の秘書を務めました。その後、秋田に戻って家業である大和旅館を継いだのが振り出しです。


当時に比べれば、土崎もずいぶんと様変わりしたのでは・・・
佐渡谷
 近隣への相次ぐ大型店の進出などで、地元商店の地盤沈下が顕著になってきました。それが引き金となって街全体に元気がなくなってきています。ポートタワーの建設などで起死回生を狙ってはいますが、それが街の中への誘客にまで反映されていないのが残念です。


秋田のホテル業界を取り巻く環境も変化してきましたね・・・
佐渡谷
 昭和59年の秋田ビューホテルを皮切りに大手チェーンの進出が相次ぎ、秋田市もホテル戦争の様相を見せ始めたわけですが、それも63年の三井アーバンを最後に一段落。景気低迷による国内観光客数の伸び悩み、民間企業の出張旅費の大幅削減など、バブル崩壊後のホテルの経営環境には厳しいものがあります。


大和さんの宿泊客は主にどんな方たちですか・・・
佐渡谷
 東京を中心とした首都圏からのお客様がおよそ6割。あとは、仙台と新潟がともに15%、残りの1割が県内といったところです。いずれも出張で土崎にいらっしゃる方がほとんどです。


宴会部門の方はいかがですか・・・
佐渡谷
 こちらは地元のお客様のご利用がほぼ00%です。特に400名までの収容が可能な600uのバンケットホール“大樹の間”は、パーティーや披露宴、各種展示会などに幅広くご利用いただき好評を得ています。そのほか、和室を含めた大小宴会場や会議室など、用途や人数に合せてお選びいただけます。宴会部門は年間ほぼコンスタントにご利用があり、当社の売上げの6割を占め、とりわけ10月から12月にかけてはフル回転の状態です。


大和さんは国際観光ホテルとして政府登録されてますね・・・
佐渡谷
 平成7年の登録でした。運輸省の管轄なのですが、資格を得るにはさまざまな項目をクリアしなければなりませんでした。客室や廊下の広さ、非常時の通路の設置状態、さらには外国語が話せる従業員の有無など・・・。いうなれば、ハード・ソフト両面に渡って厳しい審査がなされるのです。


登録されたことで制約などはないのですか・・・
佐渡谷
 多少の制約はあります。例えば、宿泊料金の改定が自由に行えませんし、勝手に部屋のリフォームをすることも許されません。しかし国際観光ホテルという肩書がついたことで、ホテルとしてのグレードアップになりました。


さて、秋田新幹線の開通が間近ですが観光連盟の会長さんとしてはお忙しいのでは・・・
佐渡谷
 3月22日の開通後は、東京・秋田間が最短で3時間49分となります。昨年来、いろんなところへ出かけていっては秋田を売り込みました。お陰様で、JRはもちろんJTBをはじめとする旅行エージェント各社のご協力で、4〜6月は秋田向けの企画商品が目白押しとなっています。


受入れ側としての具体策はありますか・・・
佐渡谷
 商品によっては何らかのプレミアムをつけます。例えば、旅行者に秋田こまちをプレゼントしたり・・・。しかしながら、何より大切なのは心のこもったおもてなしです。業界を挙げて接遇面を中心とした従業員教育を徹底し、ホスピタリティの追求に努めなくてはなりません。


これはホテル業界だけで解決できる問題ではないですね・・・
佐渡谷
 もちろんです。駅員からタクシー運転手、商店の販売員に至る観光産業に携わるすべての秋田人が、心をこめた応対をすることが大事なのです。そして、少しでもいい印象をもって帰路に就いていただく。その人たちが、やがてはリピーターとなって再度秋田を訪ねてくださることを願います。


大和さんの今後の目標は・・・
佐渡谷
 部屋数など規模を競っても大手チェーンにはかないません。それよりも、よりキメ細かなサービスを心がけたいと考えます。お手本は東京・丸の内にあるパレスホテルです。近隣に帝国、オークラといった大型の有名ホテルがありながら、徹底した社員教育で一歩も引けをとらないグレードを保っています。例えば、連泊のお客様に対しては2日めには顔を見ただけでキーをお渡しできるといった具合に・・・。その姿勢こそが、客室数わずか40室の当社が目指す道だと思うのです。


今年秋田は中核市になりますね・・・
佐渡谷
 その町のグレードは宿泊施設を見れば分かると言われています。言い換えれば、ホテルは町の顔なのです。従業員ともども、ホテルマンとしてそれを誇りに仕事するべきと心得ます。当社としても、佐竹20万石、人口30万超の中核市に相応しいホテルとなるべく精進する所存です。


 佐渡谷さんは現在55歳。前述の観光連盟会長のほか、県旅館ホテル環境衛生同業組合理事長、秋田・ソウル定期便開設期成同盟会会長の激務をこなす。単にホテル経営にとどまらず、地域の発展のために東奔西走する情熱こそが若さの秘訣なのかもしれない。

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