街づくりには文化が不可欠
劇場建設でメセナ事業にも参入


アイホームプラザ 株式会社
代表取締役 渡部 久志 氏



 宅地建物取引業法は、免許制度を実施し、その業務の適正な運営を図り、依頼者などの保護と宅 地建物の流通の円滑化を図ろうとするものであり、現在、県内の宅地建物取引業者、つまりは不動産取引業者の数はおよそ260。バブル経済崩壊後のここ数年は各社とも減益の一途を辿ってきたが、昨年は消費税引き上げ前の駆け込み需要も手伝ってか、業界全体が久々に活況を呈した。
 アイホームプラザ(株)(天王町天王字追分西24−26)は昭和57年設立の不動産会社で、秋田市北部から南秋・男鹿を中心に展開。平成5年には、飯田川町にアイホーム本多劇場を建設しメセナ事 業にも参入、全国から注目を集めたことは記憶に新しい。
 今号では、そのアイホームプラザの代表取締役渡部久志さんに話を聞いてみた。

消費税引き上げを前に、何かとお忙しいのでは・・・
渡部
●お蔭様で昨年は超多忙な年でした。しかしながら、これはあくまでも駆け込み需要に過ぎません。不動産取引は額面が大きいですから、単純に2%の引き上げといってもバカになりませんからね。その分、4月以降は業界全体が苦しくなるはずです。
渡部さんが不動産業界を選んだきっかけは・・・
渡部
●高校を卒業後、秋田市内の木材会社に5年、建設会社に10年勤務してからの独立でした。木材、建築と不動産とは切っても切れない業界に身を置いてきたこともありましたが、何といっても街づくりができるということがいちばんの魅力でした。
アイホームの設立は昭和57年のことですね・・・
渡部
●57年の12月でした。一時期、不動産詐欺が横行したしたこともあってか、設立当時は新興の不動産屋が信用を得るのは大変な時代でした。

 アイホームの取扱い物件の9割は宅地売買で、建売住宅やマンションなど
の販売は1割に過ぎない。そしてそのほとんどを造成から手掛ける。
販売先は一般消費者で、ハウスメーカーなど業者への販売はしない。
しかも、この15年足らずの間に917区画、実に30万平米を造成したという。
スタッフわずか5名の小規模企業としては、前代未聞の躍進ぶりだ。


アイホーム本多劇場
 
渡部●できるだけ良い物件を安く提供したいし、お客様にもじっくり選んでいただきたい。ただ、ひとつの団地を造成し、エンドユーザーに販売するまでには半年以上は掛かります。その間、5〜7億の借り入れをし金利を払うわけですから、当社としてはできるだけ早く売りたいというのが正直なところです。

 庭に鳥海山の石を置き、お祝いに果樹を植えたりした。それが毎年実をつけることで、当社と買い主との縁は続く。


いろんなお客様がいらっしゃるでしょうね・・・
渡部
●不動産というのは、大体がその人の人生で一度しかない、しかもいちばん大きな買い物です。 それだけに、お客様は本音でぶつかってきます。うわべだけの付き合いでは、到底よい取り引きは生まれません。しかし、そうした中から素晴らしい出会いがあり、それが私の財産となっています。

 その出会いの中に、東京は下北沢で本多劇場をはじめいくつかの劇場経営をする本多一夫さんがいた。後に、アイホーム本多劇場を建設する引き金ともなる出会いである。


前々からお芝居が好きだったのですか・・・
渡部●
特に芝居にこだわっていたわけではありませんが、当社のモットーである街づくりには、単に土地を造成して売るだけではなく、地域住民に文化を提供し情操面を演出することも大事な役目と考えてきました。そして6年前、男鹿半島のリゾートマンション「ロイヤルマリン男鹿」を売り出したときです。秋田に観光で訪れていた本多さんに、そのマンションを購入したいただいたのがそもそものきっかけです。本多さんの「芝居はもうからないけどいいものだ。秋田にも小劇場があれば・・・」のひと言が、その後の私の方向性を決定づけました。

 その後、渡部さんは上京の折に本多劇場で観劇し、いたく演劇に興味を持つことになる。そして、創業以来の懸案だった地域還元の思いに重なった。


渡部● 芝居そのものは勿論、劇場内の若者の熱気に一種の感動を覚えました。大劇場でのスターシステムとはまた違った独特の魅力があるんですよ。こうした文化を秋田の人たちにも伝えたいという思いが募り、劇場の建設を決意しました。

 その当時、中央資本の大企業による劇場建設ラッシュには目を見張るものがあった。松下、東急、サントリー・・・。いずれも資本力を背景に、格好の立地条件とハイテクを駆使した舞台装置で話題をさらっていた。しかしながら、いかに事業が順調でも、地方の小さな企業がこうしたメセナに取り組むには、大きなリスクを伴うだけに相当な覚悟が必要だったに違いない。  アイホーム本多劇場のキャパシティは150名。最後列の客席でも舞台から10m足らずと、役者の息づかいを肌で感じられるのが特徴だ。経費の面から地方への進出が難しい小劇場演劇の底上げにもつながるはずだ。


アイホームが企画しての主催公演が多いですね・・・
渡部●
小屋を作るだけではなく、いかにソフトを投入するかが大切です。単なる貸し小屋に終わることだけはしたくないんです。年間7〜8回、一公演150万円以上の持ち出しにはなりますが、できる限り継続していきたいと考えています。

アイホ-ム本多劇場 今年のラインナップ
日にち劇団(個人)名公演名
3/28・29うろのひびき(横浜)あまつちのはざま
4/26・27伊沢勉の会(名古屋)審判-ホロ苦きは、キャラメルの味-
5/25じいちゃん劇団(川崎)演芸
6(未定)未定アイホーム寄席Vol.6
7(未定)宮崎美奈(東京)クラシックコンサート
9(未定)ハッタリ劇団笑人料理(東京)未定
10(未定)劇団かえってきたゑびす(東京)未定


駆け込み需要が一段落した今後の目標は・・・
渡部●
現在、八幡平リゾート計画を進めています。「大自然の中に分譲地を造りたい」というのが私の長年の夢でした。24区画を別荘地として販売するもので、玉川温泉との相乗効果が狙い目です。これからの不動産業は、いかに特色を打ち出すかが鍵になると思います。また、身寄りのない子供の里親施設と老人ホームとの複合施設を造れないかとも考えています。老幼の弱者の力になることで、さらなる社会貢献ができると自負しています。

「良いところに住めて幸せ」「芝居を観て感動した」という手紙をもらうことが何よりの励みという渡部さん。夢を与え、励ましを受けての15年間だったという。もう後戻りはできない。これからも渡部さんは、見果てぬ夢に向かって邁進するはずである。

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