独自開発のオキシライザー
基本特許と薬事承認を取得


三浦電子株式会社
代表取締役 三浦 俊雄 氏



 景気は回復局面にあるというものの、中小製造業の経営環境は依然として力強さに欠け、厳しいものがある。各企業は第二、第三の経営の柱を確保するため、あの手この手の経営戦略を展開しているが、成功を収めている例は少ない。そんな中にあって異分野で新製品を開発し、第二の柱に育てあげたのが象潟町の三浦電子株式会社(由利郡象潟町字上狐森184−5)である。電子部品メーカーの当社は、強酸性水「アクア酸化水」とその生成装置「オキシライザー」を独自に開発した。
 そしてこの4月にはアクア酸化水が「電解生成殺菌水」の基本特許を取得。また同時にオキシライザ−はPH設定・表示付きとして初めて、厚生省から薬事承認を受けた。
 今号では、当社の代表取締役である三浦俊雄さんに話を聞いてみた。


アクア酸化水とは変わった名前ですが…。
三浦
●水に微量の食塩を加え、特殊な電極を使って電気分解して生成したPH値2.7以下の酸性水をアクア酸化水と呼んでいます。
どのような効果があるのですか…。
三浦
●アクア酸化水は、活性塩素や活性酸素の働きによって強力な殺菌効果を持つ反面、原料が水で薬品を使用しないため廃液処理が不要なことから自然環境に優しく、しかも、発癌性や皮膚への刺激の心配もなく人体にも優しいのが特徴です。アトピーに効く、肌にいい、果物が甘くなるなど、まさに魔法の水といえましょう。



開発に踏み切った経緯について…。
三浦
●昭和48年12月の創業以来、TDKの協力工場として小型コイルを中心に生産してきましたが、経営の主力が電子部品一辺倒のため、電子・電気業界の景気変動に大きく左右され、万全な経営体質とは言えませんでした。そこで、多角化と自社製品確保による経営の安定性向上を目指し、新製品の開発・研究に乗りだしました。先代である私の父が非常に研究心旺盛な人間だったので、その影響もあったかもしれませんね。
 
研究のターゲットは最初から水に絞りこんだのですか…。
三浦
●当初から水にこだわっていたわけではありません。外部の研究者から銀イオンを利用した殺菌水の事業化を依頼され、共同で取り組んだのが水にかかわるきっかけとなりました。


無からのスタートだったわけですね…。
三浦
●長年、電子部品の製造に携わってきてはおりましたが、電気分解の知識はほとんどありませんでした。昭和61年に事業化推進のため本社内に製作技術部門を設け、電気・機械技術を持った若い人材を集めました。その中から数名を選び、電気分解の基礎を学ぶことから研究はスタートしました。研究員に対しては就業時間を拘束せず、できる限り自由に時間を与えました。

オキシライザーを商品化する上で最も苦労されたことは…。
三浦●
度重なる実験を経て試作機が完成し、これで商品化に向けてスタートができると思った矢先、安定した殺菌効果を発揮する酸性水は生成できたものの電極が200時間程度で溶け出してしまうという現象を引き起こしてしまったのです。電極を長持ちさせるのが課題となり、解決するのに丸3年も要してしまいました。

 平成2年に商品化に成功。第1号機がいよいよ市場に出回ることになるが、新しい装置と不思議な水はなかなか受け入れてもらえなかった。

三浦●いざ営業活動をしてみると、危なくて使えないなどの理由でなかなか取り合ってくれませんでした。しかしアクア酸化水の説明書を作り何度となく足を運ぶうちに、研究してみようか、使ってみようかという人が出てくるようになりました。理解を示してくれた人たちの協力を得ながら、食品、農業、そして医療の各分野で使用ソフトのマニュアル化が図られていきました。

 販売を開始してから、これまでに750台を納品。その分野は医療や食品衛生関連が主だが、面白いものでは、ゴルフ場の芝やハウス栽培の野菜・果物の殺菌・消毒など多岐にわたり、それぞれの分野ですぐれた効果が実証されている。


アクア酸化水生成装置「オキシライザー」

他のメーカーもかなり参入しているようですが…。
三浦●
全国で約30のメーカーから強酸性水生成装置が市場に出ています。しかし、生成された強酸性水は同じではありません。オキシライザーで生成された強酸性水だけがアクア酸化水なのです。また大手資本の参入により価格破壊も始まっています。現在1台200万円からですが、受注が拡大すれば低価格化も可能となるでしょう。


今後の展望について…。
三浦●
厚生省の薬事承認によりオキシライザーは医療器具として正式認定されました。医療機関への正式納入が可能になったのを機会に、医療分野に積極的に参入しようと考えています。現在は、手指の消毒に限定されていますが、透析や内視鏡の消毒洗浄など多くの分野への適用を申請中です。また飲食店や宴会場あたりにも注目していきたいと思っています。 開発を進めていたコンパクトな新型機もほぼ完成し、6月中には発表できる予定です。それと現在市販されているアクアナップ(※)もパッケージにファッション性を加えるなどして販売の強化を図っていく方針です。

 ※アクアナップは肌にやさしいアクア酸化水を主成分とした一般家庭用のウエットティッシュ。アクア酸化水の特性を生かす為、アルコール、化学薬品、香料は一切使用していない。


健康ウェットティッシュ「アクアナップ」

 三浦さんは「私は研究者ではない。あくまでもその成果を商品化し、それを売って次の製品に挑戦することが仕事。」と強調する。大企業の中ではできない独自の研究開発をという志、ポリシーにこだわり、「受け」から「攻め」へと転じてきた。自社製品の売上構成比はまだ30%程度。三浦さんはその独創的な技術を生かし今後も挑戦し続ける。

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