気象予報サービスがヒット中
新規事業参入で躍進


株式会社計測技研
代表 田代 義曠 氏


 今年5月に発生した鹿角市八幡平の地滑り・土石流災害で赤川橋が埋没、国道341号が一時不通になった事故は、まだ記憶に新しい。今月に入って、通行止めが解除されたが、災害現場での監視・警戒態勢は依然続いている。
 秋田市の(株)計測技研(秋田市寺内字イサノ92−1)は土石流を感知するワイヤセンサーと連動するサイレン・警報装置を12ヶ所に設置するなど、水位を監視するシステムを一手に引き受け、関係各機関の高い評価を得た。土木工事の計測施工管理等を本業とする当社は、次々と新規事業を成功させるなど急成長を遂げている。
 今号では、当社の創業者である代表取締役田代義曠さんに話を聞いてみた。


地滑り調査に関してはかなりの実績があるのですか…
田代
●昭和60年の創業以来、建築土木工事関係の地盤調査や土質試験等に携わってきました。先月秋田自動車道と東北自動車道が連結、本県も全国高速道路網に本格参入しましたが、この秋田自動車道の全区間で、地滑り調査を始め計測施工管理を担当しました。


地盤強度測定のデータ・ロガーを自ら開発したそうですが…
田代
●従来型のデータ・ロガー(データ収録機)は、計測した数値の収録や印字をするだけで、データの加工や処理はできないうえ、バックホーなどの下に入って測定するため危険が伴いました。当社が約1年半の研究期間を経て開発したロガーLDL−1APは地盤の平板載荷試験・揚水試験(段階揚水試験・帯水層試験・地下水観測)らの専用計プログラムを搭載、また切替スイッチにより5チャンネルの長期データ収録機としての使用もできるほか、測定地点から離れて自動的に計測でき、危険も回避できます。このように1台で3役というのは世界でも初めてなんです。


フィールド用データロガー

  価格も従来の装置が100万円以上するのに対して、70万円台と低く設定している。今年5月の発表以来、県内外から問い合わせが相次いでおり、既に10数件の成約があるという。


マルチメディア関連の事業にも参入されていますが…
田代
●平成7年5月にマルチメディア関連の業務を行う株式会社エス・シー・シーを設立し多種のパソコンソフトを開発し販売しています。中でも電話帳データベースを応用した選挙後援会活動支援システム「当選太郎」は反響を呼びました。

 


具体的にどういったソフトなのですか…
田代
●後援会や支持者の名簿作りは選挙に欠かせません。運動員が集めてきた有権者の名簿をまとめ、データベースに入力するのは大変な作業です。このソフトは製品化されている電話帳データベースと連動させ、電話番号を入力するだけで住所、氏名、郵便番号が自動入力されるというものです。名簿作成や郵便物発送など、多分野で活用されています。


現在開発を手がけているものは…
田代
●地方自治体向けの「緊急災害支援システム」の開発に取り組んでいます。地震などの災害が発生した時に備え、支援できるボランティアの名簿や備蓄物資などをデータベース管理し、各自治体間のネットワークを構築しようというのが目的です。


新規事業の地域気象予報を流すウェザー事業が人気を博しているようですが…
田代●
昨年4月から気象庁予報業務許可を取っている(株)アースウェザー(本社:横浜市)の東北代理店となりまして秋田県内外の気象予報サービス事業を行っています。限定された時間・地域のきめ細かな海洋や陸上の気象情報を提供しようというもので、屋外の作業現場を持つ建設業者を中心に、現在30社ほどと契約しています。


企業側にしてみればどういったメリットがあるのでしょうか…
田代●
気象予報データを事前に知ることにより、企業の経営効率がアップするほか、経営戦略も組み立てやすくなります。例えば雨天日を事前に知ることで工事の工程を効率よく計画できます。またスーパー、コンビニなど流通面でもその日の気象条件で商品の売れ筋が変化することからPOSデータと気象データを併用し、製造企画・販売促進・在庫管理などに直接役立てようという動きが出ています。
 天気予報を「かなり必要な情報」とする人が男女とも60%以上いるとする民放連のアンケート結果、また電話サービスの天気予報(177)が、1日で100万回もの需要があることなども考えると、気象情報に対するニーズは、今後ますます広がることは確実です。

 今年2月に行われた鹿角国体で36時間先の予報データを選手滞在先の宿舎に自動送信したが、コンディション作りなどに役立ち、選手達には大変好評だったという。 このように事業の適用範囲は 広範囲に及んでおり、その用途は無限の可能性を秘めていると言えよう。


今後の事業展開について…
田代●
この8月にコンパクトタイプの新型データ・ロガーの販売を開始します。モニター機能内臓で、NTT回線でデータ転送が可能なハイテクロガーです。8月下旬に大分県で開催される平成9年度地滑り学会総会で自社開発ロガーの研究発表を行うとともに、9月には東京に営業所を開設し全国展開を図っていく方針です。また情報発信することが肝要と考え、ホームページも開設する予定です。
 さらに計測機器の海外での需要が拡大していることから、中国、東南アジア等への輸出も検討中で、来年度中には実現できそうです。ウェザー事業の方も今後はレジャー、イベント、農業、流通など天候に左右されやすい業種に利用拡大を図っていきたいと思っています。

 独創的な技術を持ち、開発力を持つ、いわばベンチャー型の企業は多くあるが、その成功条件は、製品・技術の作り込みと同時に、それ以上に売り込みが重要であるとし営業マンの育成にも余念がない。

 田代さんは「チャレンジ」、「成せば成る」をモットーに、次々と新規事業に挑んできた。
 自他ともに認める“好奇心のかたまり、トコトンやりぬくねばり強さ”が新たな構想の原動力となっていると話す田代さん。今後の活躍に期待したい 。


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