冷凍加工米飯が好調
多様化する食生活に定着


アスカフーズ株式会社

代表取締役 遠藤 芳徳 氏


 電子レンジや大型冷蔵庫の普及、さらには調理が簡便で品質が向上したこと、生鮮食品に比べ価格が安定していることなどが後押しし、冷凍加工食品のマーケットは1980年代後半から急激な拡大が続いている。最近は、「お袋の味」に代わって、加工食品の「袋の味」が家庭の中にすっかり浸透してきた。
 また、市場拡大の勢いが新製品開発に刺激を与える一方、新製品そのものが市場拡大にさらに拍車をかけるという相互補完の図式で、冷凍加工食品の新製品は活発に登場している。
 平鹿町にある冷凍食品加工製造・販売業のアスカフーズ(株)は、地場資源を活用しながら次々と製品開発を行いマーケットを首都圏に広げている。
 今号では当社の創業者である代表取締役 遠藤芳徳さんに話を聞いてみた。


創業されたのはいつ頃ですか…
遠藤
●昭和40年代から精米業を営んでいますが、近年における社会環境の変化や、食生活の多様化現象、消費者ニーズに対応するために、多角化経営の一環として、平成5年11月にアスカフーズ(株)を設立しました。冷凍加工米飯類が主力の、調理済み加工冷凍食品の製造・販売を行っています。


加工食品に参入されたのは…
遠藤
●元々は精米業者ですので米に対する知識が豊富にありました。米の加工に関するノウハウはそれほど多くはありませんでしたが、原料の米に関する知識は誰にも負けないほど持っていました。加えて、「あきたこまち」という良い米があり、その名前を最大限に利用することができました。


ところで「アスカ」という名称は…
遠藤
●親会社である秋田精米(株)の社名(AKITA SEIMAI COMPANY)と英語のAMBITION(大志)SYSTEM(組織) CREATE(創造)の頭文字(ASC)を合成したものです。
 社員一人ひとりが、夢、希望を達成する同志として共に感じ、共に考え、共に行動する「人間共感共育企業」を目指しています。

 同業者の企業は西日本には数社あるが、関東以北では全く初めての工場であり、業界でも注目を集めている。

 


先発メーカーとの競合が厳しいのでは…
遠藤
●平成6年11月の本格操業以来、冷凍焼おにぎり、冷凍ピラフを中心に県内外のスーパー等に納入してきました。しかし冷凍ピラフなどの冷凍加工食品は先発メーカーが大手を含めて既に営業をしており、知名度が低いため、どうしても販売面で苦戦を強いられました。そこで、先発メーカーが販売していない丼物に着目し、平成7年末より冷凍丼の商品化に着手しました。秋田県総合食品研究所の研究指導等を受けながら、平成8年7月に冷凍カツ丼を完成させ、これを他社ブランド名でPB商品の形態で首都圏を中心に販売したところ、大変好評で高い評価を得ました。


製品の特徴について…
遠藤
●当社製品の特徴はご飯を一粒ずつバラバラの状態で凍結させる「バラ凍結」にあります。この手法で製造された白飯は従来品よりも短時間で解凍することができ、均一にレンジの熱が伝わるためふっくらとした仕上がりになります。この白飯と別工程で単独凍結したかつ丼上具を組み合わせ、一体型容器に入れることで、レンジアップした際に炊き立てのご飯に後から具をかけたような“食感”が再現できます。


食材にもこだわっているようですが…
遠藤●
アスカフーズの製品は、米産県秋田でもとりわけ良質米優良産地である仙北平野でとれた「あきたこまち」「ササニシキ」などの秋田米を製品のすべてに使用しています。また、近隣で飼育している無菌豚や有機栽培玉ねぎなど、地場産の素材を原料として使用しています。

 現在関東、関西に約600店舗を持つ大手コンビニと取引中で、季節に応じた商品提供を行っており、売上げも順調に伸びている。

遠藤●技術開発の成果を活かし、冷凍丼シリーズとして、今年新たに冷凍中華丼を開発し、市場に投入しました。コンビニのPB商品という形態で製造し、現在月10万食を提供しています。需要は上向きで、生産体制の拡充を進めているのですが、他製品の製造がなかなか追いつかないといった状況です。


現在開発中の製品は…
遠藤●
郷土色を生かした冷凍きりたんぽ、冷凍稲庭うどんの開発を進めています。きりたんぽの生地自体の冷凍は既に市場にありますが、具や汁と一体化した商品を考案し、生地の煮くずれを防ぎながら、レンジ適性のある商品を目指しています。また先発メーカーが投入し、ヒットしたさぬきうどんに比べ冷凍が難しいといわれる稲庭うどんの冷凍版を考案。いずれの商品も首都圏をターゲットにしたいと考えており、幕張メッセで開催された「フーデックス'97(国際食品・飲料展)」にも試作品を出品しました。


今後の展開について…
遠藤●
現在は、主としてコンビニエンス等のネットワークの中で製造・販売していますが、いずれは「アスカフーズ」という名前で多くの自社製品を市場に出したいと考えています。これからも市場ニーズに合った製品開発、製品の信頼性確保、そして販路開拓を図ると同時に、既存製品を含めた生産ラインの省力化を推進し、コストダウンを図っていく方針です。

 冷凍加工食品はもはや、新しい食品でも、特別な食品でもなく、食生活にすっかり定着した“あたり前”の食品となっており、今後とも堅調な伸びを示し、食品業界では依然成長部門であると言える。
 「美味しいお米にどこまでもこだわった商品づくりを目指していく。」と話す遠藤さん。
 今後もさまざまな加工米飯の商品を通して、人々の“食”のこころに彩りを提案し続ける。

アスカフーズ株式会社
本   社/ 秋田県平鹿郡平鹿町中吉田字上藤根110
TEL 0182-24-3939
東京営業所/ 東京都千代田区有楽町2-10-1
東京交通会館11F
秋田ビジネスサポートセンター内
TEL 03-5221-8816

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