秋田杉を原料に 無公害の土木建築用化粧型枠を開発

三和コンクリート工業株式会社

代表取締役社長 金  祺次  氏


 コンクリートを成形、硬化させて製品化したコンクリート2次製品は、土木・建設工事資材のうちで最も重要なもので、建築、道路の舗装、河川の護岸工事など多岐にわたり大きな役割を果たしている。従って、コンクリート製品製造業界の需要はその用途上、公共投資や民間建設工事の動向に左右されやすい。
 財政構造改革にともなう公共工事の削減や景気の足踏みにより、今後の業界の需要動向は不透明な環境下にあり、各企業とも体質の強化、得意分野の創出などが求められている。
 羽後町に本社がある三和コンクリート工業(株)は新製品の開発による製品の差別化と多角化をはかり、より付加価値の高い需要の創出を目指している。
 今号では、当社の代表取締役金祺次さんに話を聞いてみた。



−御社の創業は……
●地元の高校を卒業。埼玉県のコンクリート製品工場で経験を積んだ後、昭和43年9月に、個人で創業しました。昭和53年7月に法人化し、現在従業員は39名ほどです。


−製造している品目について……
●空洞コンクリートブロックの生産から始まり、下水道用、一般道路用及び地域特性のある農業・土木工事用のコンクリート2次製品を製造しています。平成5年4月に下水道用組立マンホール側塊(エバホール)の認定工場になりまして、天王町にある同業者と2社で県内分の70%を生産しています。

昭和54年
道路幅表示標識用ポールで発明賞受賞


 「コンクリート生産で培った技術力を活用し時代の要請する製品を創出し、建設工事の省力化、合理化を支援する」という経営基本方針に則し新製品開発にも積極的で、昭和54年に「道路幅表示標識用ポール」で日本発明特許学会より発明賞を受賞。平成3年、廃タイヤ処理の「タイヤボイラー」を開発している。

●タイヤボイラーは、古タイヤを利用したガス発生炉。古タイヤを蒸すことによって発生するガスを燃焼させコンクリートの乾燥工程の熱源に利用するというものです。


−特許を取得した側溝もあるそうですが……
●平成8年に、上に水路、下に貯水槽の構造をもつDS側溝(Double Structure)を開発しました。これを使用すると、従来のように貯水槽を設置するための専用の土地を確保する必要がないうえ、従来の貯水槽の施工コストに比較して大幅に安く仕上げることができます。防火用水や渇水時の補給水、冬場の消雪や流雪などに利用できることから、地価の高い都市部や積雪地域での普及を見込んでいます。

土木建築用景観化粧型枠の
製品化に成功


 ところで、近年は、景観保護・自然保護などの社会ニーズの高まりに対応して、自然石張りなど意匠性・機能性に優れた各種環境ブロックの需要が急増している。一般的に、新製品の製造には型枠の調達を必要とするが、同社は中小企業庁の「地域技術改善費補助金」を活用し、土木建築用景観化粧型枠の製品化に成功している。


●土木建築用化粧型枠「WOOD CUT(ウッドカット)」は河川改修や護岸工事、ダム工事の土留めやビルの外壁など、景観を保つためにコンクリート壁面に模様をつけるための型枠です。


−ウッドカットの原料は……
●地元資源を有効活用できないかと考え、原料には秋田杉の間伐材からとれる繊維や麻糸などを無公害の硬化剤で固めたものを使用しています。焼却処理や地中に埋め戻すことができるので廃棄コストもほとんどかかりません。


−従来の型枠との大きな違いは何ですか……
●これまで土木建築用化粧型枠には発泡スチロールが使用されてきましたが、発泡スチロールの型枠の場合、裏側に合板で補強する必要がありました。また、コンクリートから化粧枠を外す際に、発泡スチロールが固まったコンクリートに付着してしまい、それを剥す作業が必要だったり、剥離した発泡スチロールが工事現場に飛散し問題となっていました。
 これに対してウッドカットは、型自体に強度を持たせましたので、剥離材や補強用の合板が不要となり、工事現場の作業効率を大幅に向上させることができます。最大の特徴は廃材を活用した“無公害商品”であることです。


−型枠のデザインにはどのようなタイプがありますか……
●割石・ランダム・鉄平・谷積みの4パターンを開発し販売しています。
 型枠1枚は約6キログラムと軽量で取扱いが容易、大きさは900×1800ミリと大型で施工性に優れています。さらに、コンクリートの仕上がり面は自然石に近く、自然環境の保全にも貢献できます。建設省東北地方建設局の平成9年度パイロット事業にも指定されており、これからの主流となる画期的な製品と自負しています。

 同社ではウッドカットの販売を強化するため、現在代理店づくりを進めている。


●発泡スチロール製に比べて、1平方メートル当たりの単価は型枠処理費用を含めて1,300円ほど安くなります。今年に入ってから北海道と東北6県に販売店網を確立しました。また昨年仙台市で開催された「夢博覧会」を初めとして、全国各地の展示会にも出展しており、引き合いも増えてきました。いずれは全国に販売網を広げたいと考えています。

 今年2月には、中小企業事業団が企画する全国ネットのテレビ番組「ビジネスズームアップ」でも同製品が紹介され、大きな反応があったという。


−御社の今後の展開について……
●公共物からコンクリートの肌を無くそうということで東北地方建設局より、ウッドカットに苔や草を生やせないかという研究を依頼されています。開発できれば、公共工事で使っていただけそうなので、がんばっているところです。また住宅関連業者からも外壁材として使えないかという引き合いもあり、現在耐火性や断熱、遮音性などを研究中です。今後も新製品や高付加価値商品の開発を進め、脱コンクリート業を目指したいと考えています。

ヒトにマネの出来ないモノをつくり続けたい


 異業種交流会やアサノセメントの研修機関(アサノ大学)に社員を派遣するなど、人材育成にも積極的に取り組んでいる。「工場内の生産ラインはほとんどが自社製作。ヒトにマネの出来ないモノをつくり続けたい」と話す金さん。三和コンクリート工業は、今年で創業30周年を迎えるが、その独創的なアイデアと技術力でさらなる飛躍を目指している。

三和コンクリート工業(株)
秋田県雄勝郡羽後町大戸字水里171−2
TEL:0183-62-1141  FAX:0183-62-3290

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