夢とロマンを求めて 目指すはハーブの町づくり

秋田ニューバイオファーム

代表 斎藤 作圓  氏


 自然志向、健康ブーム、癒しの時代といわれる中で、ハーブの愛好者が急増している。
 ハーブの歴史は、有史以前から世界の歴史と結びつき、ヨーロッパからイギリスへと進攻したローマ軍兵士の薬として、あるいは食用としても珍重されたという。
 平成7年、秋田県由利郡西目町に東北でも最大級のハーブ園「ハーブワールドAKITA」がオープンした。3.5ヘクタールの敷地内に約250種類のハーブが植栽され、最近のハーブ人気から、年間12万人を超える観光客が訪れている。近接する国道7号線沿いに「道の駅」(はまなすの里)も開設され、地域活性化の核として期待されている。
 「ロマンのある仕事、夢を実現できる仕事がしたい」と、地域おこしや町づくりの視点から企業的経営を実践する当社代表斎藤作圓さん(54歳)に話を聞いてみた。



−御社の生い立ちについて……
斎藤
●秋田の農業を考えると、積雪・寒冷地という土地柄、米に頼らざるをえません。しかし、米は大切にしながらも、新しい時代には新しい農業を開拓しなければなりません。そのためには、農業の担い手不足を補うために農業の組織化を図り、雇用の機会を作る必要があると考え、昭和62年に農事組合法人秋田ニューバイオファームを設立しました。現在、従業員はパートも含めると40名ほどです。


−産業としての農業とは……
斎藤
●秋田の農業の課題は、冬期対策です。1年中稼げる農業にするためには、加工・販売といった付加価値部門が必要です。生鮮品だけでは利益が低く、かつリスクが高い。ちょっとでも古くなるとゴミになってしまいます。
 平成元年に目をつけたのが、「きりたんぽ」です。西目には特産品というものがなく、逆に県外からみた秋田の特産品は何といっても「きりたんぽ」です。名称も「元祖秋田屋」とし、販売先を首都圏に絞って秋田のイメージを売り込みました。新規参入であり、販路開拓に苦労をしましたが、友人の紹介でニチイやサティに納入できたのを皮切りに紀ノ国屋スーパー、関東以北の生協へも納入しています。  その後、贈答品としてクルマエビ、アワビ、サザエなどの水産加工品の製造・販売事業も取り入れ、なんとか経営を軌道に乗せてきました。
 平成6年にはキャロットジュース、リンゴジュース、アイスクリーム製造部門として「夢づくり味工房」を設置し、それらはレストランで味わうこともできます。平成7年には創立10周年記念事業として、「ハーブワールドAKITA」を設立しました。
 このように、生産・加工・販売と、農業ほど一環した事業展開が可能な産業はないと考えています。


−なぜハーブに取り組むことになったのですか……
斎藤
●創立10周年記念事業として、「地域の活性化につながる交流の場づくり」をしたいと考え、観光農園に決めました。薬草にするかハーブにするか悩みましたが、ハーブのもつ多種多様の魅力、とくに心身の健康に役立つことでハーブに決めました。


しそ、せり、たで、よもぎは
日本のハーブ

 ハーブとは、固有の香りや色、味と薬効などをもつ植物。ハーブの語源はラテン語の緑の草“herba”といわれる。葉や茎、花などを生で使うのが本来で、乾燥は保存のため。しそ、せり、たで、よもぎなどは日本のハーブである。
 ハーブの楽しみ方は、実に多種多様である。

  1. まず香りを楽しむ。ポプリは、香りのある花やハーブを熟成・乾燥させて作る室内香のことで、いろいろな香りをブレンドし、香りのハーモニーを楽しみます。
  2. 食べる楽しみ。ハーブティーに代表される健康茶やブーケガルニ(芳香薬味草)としていろんな料理に使われ風味を引き立てます。
  3. 育てる楽しみ。今はやりのガーデニングに緑のフレッシュハーブは欠かせません。一粒の種から始まる緑の奇跡です。
  4. 作る楽しみ。リース、押し花、染色などはカルチャースクールで大人気。
  5. 使う楽しみ。香り豊かな入浴剤や石けんは、一日の疲れをやさしく癒してくれます。
    −ハーブのノウハウはあったのですか……
    斎藤
    ●ノウハウはまったくなく、結局人脈を頼って福島にあるハーブ園を紹介していただきました。ほとんど面識のない状態だったため、断片的な知識でも吸収したいといった程度の訪問でしたが、話し込んでいるうちに意気投合し、互いの商品供給や職員の派遣といった話にまで発展しました。
     現在、「ハーブワールドAKITA」は500円でパスポートを購入いただくと1年間フリーパスとなるシステムをとっていますが、提携先である福島県三春町の「三春ファームガーデン」と共通で利用できるように相互乗り入れにしています。
     オープンを控えて、新聞などで広告は打ったもののシロウト商売の域をでないため、果たして人が集まるか不安でしたが、予想をはるかに上回る盛況でした。「道の駅」開業の相乗効果も見逃せません。


    −経営面からみるとどういう状況でしょうか……
    斎藤
    ●ハーブガーデン単独では資金的に無理があります。「夢づくり味工房」で製造したアイスクリーム、ジュースなどを相手先ブランドで供給しており、県内観光地で取扱っているものの大半はこの工場から出荷したものです。ハーブガーデンの人出が落ちる冬場には「元祖秋田屋」のきりたんぽ製造がピークになるといったように、1年を通して仕事が平準化してくるような努力を続けています。


    −これからの“夢”は何ですか……
    斎藤
    ●ハーブの町づくりです。今、西目町の住民にハーブを2鉢づつ無料で提供しています。ハーブを育てる家がだんだんと増え、それを利用した住民が健康で長生きし、町がハーブの香りに包まれるような、そんな町づくりをしていきたいと考えています。


    町づくりは
    自分づくり、地域づくり

     秋田ニューバイオファームは、農業を一環した産業と位置づけ、地域に根ざした積極的な事業展開を実践して、町づくりに貢献している。「町づくりの基本は、そこに住む自分たちが変わること。そして、町をどう変えたいのか。そのために自分のできることは何なのか。町づくりはまず、自分づくりからであり、そして地域づくりである。」と、話す斎藤さん。“ハーブの町”と呼ばれるその日まで斎藤さんの努力は続く。その頑張りに期待したい。

秋田ニューバイオファーム
秋田県由利郡西目町沼田字新道下490-5
TEL: TEL:0184―33―4150

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