新方式による積雪情報システムを開発・自慢の最先端技術で地域貢献

株式会社日本技研 代表取締役
協同組合アキタニューフロンティア理事長      柴田 治郎  氏


 電気計測器は、新技術・新製品開発や品質・生産性向上、さらに生産現場の合理化、省力化を促進するマザーツール(基本的な用具)として、電気・電子工業だけでなく全産業に貢献している。製造業者は常にその時代の最先端技術と結びついているため、高度の技術力、商品開発力、情報収集力が求められる。
 横手市に本社のある株式会社日本技研は、創業以来得意の電子技術を駆使して、特殊な電気(電子)計測機器等の研究・開発業務に取り組んでおり、最近では音叉(おんさ)式接触センサーを利用した寸法測定装置「マルチメジャー」を開発した。また、同社が組合員でもある協同組合アキタニューフロンティアは、レーザー光を利用した新積雪計測システムの開発が認められ、このたび東北ベンチャーランド協議会が創造的な企業活動を支援する第3回「東北ベンチャーランド奨励金」の交付先に選ばれた。
 今号では、当社代表であり、組合の理事長でもある柴田治郎さん(51歳)に話を聞いてみた。



−御社設立の経緯について……
柴田
●根っからの技術屋で、創業前から前東北大学総長の西沢潤一先生に師事して、西陣織りの布の水分を計る、半導体を使った計測装置などの研究開発をやっていました。西沢先生は、半導体の大家で、半導体レーザー、光ファイバー、光検波器の発明と研究で今日の光通信の基礎を創案した方です。
 そういう経緯から技術開発の会社なら何とかやれると考え、昭和63年に設立しました。業務内容は、大手企業からの受託開発が中心で、主たる製品は積雪深計、レベルメータ、水分計測装置などの各種計測装置のほか、溶接ロボット、各種コンピュータボードなどがあります。


−電子ミニ仏壇という大変にユニークな 製品もあるとお聞きしましたが……
柴田
●電子ミニ仏壇は、豪華な漆塗りケースに液晶画面とコンピュータを内蔵しており、個人の法名・命日・回忌・経歴・縁故・思い出の写真などを永久的に保存するとともに、所定の日時になると自動的に所望の画面表示ができます。
 開発当初は、親元を離れて暮らす息子・娘家族にとって、都会の狭いマンションなどに置くのにぴったりだと考えましたが、いかにハイテクの時代とはいえ、普及するまでには至りませんでした。


−新開発の寸法測定装置「マルチメジャー」とは……
柴田
●音叉式接触センサーを利用した測定機器で、測定部のセンサーヘッドの形状や材質を選ぶことにより電子部品を始め、金属やセラミックスの寸法検査、また樹脂フィルム、食料品、生体などの柔軟材の硬さ計測といった幅広い計測ができます。
 これまで、電子部品の計測は光計測や静電容量式などの方法がとられてきましたが、複雑形状品への対応や、測定物質が導電体に限るなどの制約がありました。
 価格は1台100万円程度で、販売先としては電子部品をはじめ金型、理化学機器、食品などの比較的広い業種へ売り込みを図っていきたい。


−異業種交流に積極的ですが……
柴田
●中小企業の特徴は、洗練された固有技術に基づく特殊な事業展開にあります。したがって、事業によっては戦略的または戦術的に、自社単独で間に合うものと異業種交流が必要なものとに分かれます。


雪をテーマに研究
−協同組合アキタニューフロンティアと事業について……
柴田
●平成4年に国・県から異業種交流を促進する「知識融合化開発事業」に指定され、県南地方6企業で設立しました。地域に密着し、地域に貢献するという目的から、「雪」をテーマにして、道路管理や気象観測などに使われる積雪情報システムの開発を行いました。
 積雪地帯では、正確な積雪量を迅速に把握することは、雪崩防止などの安全対策や的確な除雪体制の整備にとって非常に重要な情報となっています。ところが、従来のシステムは大型で高価なため普及しにくく、また精度的に暴風雪や濃霧などの気象条件の影響を受けやすく信頼性に欠けています。
 その点を何とか解決しようと、これまでに何度もテストと改良を繰り返してきました。このたびは、レーザー光とフォトダイオード(光信号を電気信号に変換するダイオード)アレーを使用した、新しい方式による高精度で小型の「光学式積雪計」を完成しました。
 構造上から太陽光、温度、風などに影響されないほか、自動計測や遠隔通信の機能が取り付けられます。さらに、融雪設備や除雪情報システムなどとの接続も可能であり、多くのメリットを有しています。


−商品化と販路については……
柴田
●たくさんの情報ネットワークを利用して、積雪計を製造する提携企業を募集しています。販路については、道路管理や防災分野などの公共部門に普及を図っていきたい。公共部門では実績がないとなかなか採用してもらえず、信頼性や価格面において勝っているのに残念で仕方がありません。


共同開発プロジェクトが始動
−今後の展開については……
柴田
●このたび東北ベンチャーランド協議会から奨励金を頂き、大変光栄に思っております。その協議会の新規事業として、東北地方でベンチャー企業同士の共同開発プロジェクト11件が動き始めました。この事業は、固有の技術などを応用または多角化したい企業をプロジェクトリーダーにして、会員から賛同者を募り、事業化や製品化を図るものです。
 当社では、自社開発の接触センサーの用途開発をテーマに賛同企業を募集する予定です。

 「これまで培ってきた技術を何とか地域に役立てたい」と話す柴田さん。異業種連携から生み出される新製品や新技術が、近い将来に我々の生活や安全を陰で支える技術になっているかもしれない。これからの活躍に期待したい。

株式会社 日 本 技 研
協同組合アキタニューフロンティア

秋田県横手市赤坂字大道添3-2
TEL: TEL:0182-32-0506

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