「花・緑・造園」 目指すはエクステリアの総合プランナー

株式会社グリーンセンター
代表取締役
  杉澤 徹  氏


 日本は世界有数の経済大国に発展し、物質面では豊かになった一方で公園や道路、下水道などの社会資本は欧米諸国に比べて大きく立ち遅れている。今後は公園をはじめとする、地域住民にとって良好な都市環境の確保が必要とされ、長期的には造園業の需要は増加傾向にある。
 またオフィス内では、OA機器が所狭しと並ぶようになるにつれて、機能化・効率化の追及だけでなく人間が働く場所として、オフィス環境の見直しがされている。オフィス環境や生活空間に対する関心が高まるにつれて観葉植物や花の需要も増加している。
 能代市に本社のある(株)グリーンセンターは、そのような生活・社会環境ニーズを的確に捉えて事業をステップアップし、着実な成長を遂げてきた。当社は花・緑・造園を通じて“うるおいと安らぎのある生活”を提案するエクステリアの総合プランナーを目指している。
 今号では、当社代表である杉澤徹さんに話を聞いてみた。



−御社の生い立ちについて……
杉澤
●高校を卒業して家業である農業をやっていましたが、減反政策が厳しくなり、これからの農業は稲作中心では暮らしていけないと思いました。そこで考えたのは、花づくりでした。これからは世の中が豊かになるにつれて、生活にうるおいと安らぎが求められることから、花の時代がくると思いましたし、祖先からのせっかくの土地を活かしたい気持ちがありました。
 ところが、花づくりはハウスなどの設備投資がかさむ上、相場に左右されて価格変動が激しいといったリスクが大きく、断念せざるを得ませんでした。
 そこで植木栽培に目をつけ、植木の産地として名高い埼玉県安行(あんぎょう)に3年間住み込みで見習い修業をしました。ツゲ、マツ、モミジ、ヒバ、ヒノキといった代表的な樹木を始めとして、あらゆる植木の品種、名前、性質など植木全般にわたる勉強をさせていただきました。
 昭和50年に能代市に戻り、植木生産販売業としてグリーンセンターを創立しました。



空間にうるおいと安らぎを

−植木生産販売業は順調でしたか……
杉澤
●当初、植木が育つまでは製品を仕入れていましたが、折りからの造園ブームで順調に業績を伸ばすことができました。その後始めた観葉植物の貸鉢も時代の流れに乗り、喫茶店などを中心に200件ほどの契約が取れ、年間を通しての安定収入となりました。
 現在では、単にグリーンを飾るというだけでなく、一級園芸装飾士という室内庭園を造る技術を取得して「うるおいのある生活」をテーマに、ホテルや結婚式場における快適な空間づくりを手がけています。お客様には、室内でのリラックス効果、インテリア効果という点で大変に喜ばれています。
 また最近では、住居やオフィスなどに使われる建築材料から放出される有害物質により、呼吸困難や目の痛み、皮膚病などのシックハウス症候群と呼ばれる症状を訴える人が増えています。このため、これらの症候群対策として有効な空気清浄効果を高めた観葉植物も注目されるようになってきました。


−造園業を始められたきっかけは……
杉澤
●植木生産販売業を営む関係で、必然的に庭づくりに関与するようになりました。自分でも事業を拡張したいと考えていたので、昭和55年にステップアップして造園業に着手しました。
 造園工事の主要資材は緑化用樹木であるため、造園技術者には造園学のほかに植物学、土壌学、肥料学、土木学、建築学などのさまざまな知識が必要とされます。
 また造園工事の施工管理には、建設省認定の造園施工管理技士の資格が必要となり、併せて労働省認定の造園技能士も取得するなど、その当時は一生懸命に勉強しました。
 おかげで県や市の入札参加資格も取得することができ、おりしも能代市では「緑豊かな町づくり」を目指しており、公園や街路樹の整備を受注することができたことは幸運でした。


−これまででもっとも苦労したことは……
杉澤
●平成2年に待望の花の店「植花夢(ウエルカム)フローラ」を国道沿いに開店し、「花四季彩便」(花の宅急便)として記念日に花を届けるサービスを始めました。
 出店する際に調査を行い、車両通行量の多い場所に開店したのですが、花屋単独店舗では、わざわざ花を買いに来てもらえず、3年間赤字が続きました。造園部門が好調だったので何とか苦境を凌ぐことができましたが、今思い出しても冷や汗が出ます。
 平成4年、テラタ南バイパス店に全面改装移転し、名称を「フローラ」に変更しました。
 幸運にもテラタ様では、ちょうど花の店が施設内に必要だったことから話はスムーズに進み、良い条件で出店することができました。現在では固定客もでき、順調に売上げも伸びています。
 また、お客様にきめ細かなサービスも必要と考え、植木1本から造園設計までどんな相談でも受ける「緑の救急車」を巡回させています。



情報が経営資源で一番重要

−インターネットに大変興味をお持ちだとか……
杉澤
●平成7年に秋田大学、県工業技術センター、わらび座の3者により試験的にインターネットの商業利用の研究が行われた際に、その勉強会に参加させていただきました。そのとき、世界にわが社を紹介したい一心でホームページを作成しました。
 それ以前からパソコンには興味があり、自分でシステム開発なども手掛けていましたが、あまりの技術革新の速さに、苦労して覚えたことが無駄になったこともしばしばです。
 これまでの経営活動を通じて、情報こそが経営資源の中で一番重要と考え、インターネットの地域プロバイダーの設立に奔走したり、現在ではインターネット協議会の活動の中で情報交換や人脈づくりに努めています。


−今後の課題は……
杉澤
●これまで造園業をやってきて、住宅の外廻り(門、塀、庭など)全体のバランスを考える人がいないことに気づきました。それぞれ専門業者が自分の範囲で仕事をし、完成するまでどんな外廻りになるのかわからない状況なのです。
 お客様のなかには、あとでやり直す方もいて無駄なことも結構あるということに気が付きました。
 住宅の外廻りも住空間として捉え、住宅とのバランスを図りながらレイアウトを行う、エクステリアの総合プランナーを目指しています。そのために、来年にも造園CADを導入し、ビジュアルシュミレーションすることで、外廻りのレイアウトが造園の専門家でなく、一般のお客様にも一目で捉えられるようにしたいと考えています。
 またインターネットでは、双方向性を活用して園芸Q&Aや外廻りデザインの提案も可能だと考えています。

 「地域が活性化するためには、地域の中小企業が良くならなければいけない。地域の中小企業が良くなるためには、経営者や管理者の資質の向上が必要。また経営者は時代の流れと方向性を見極めることも大事。」と話す杉澤さん。本業の傍ら、精力的にインターネットやマネージメントゲームの講演も行う。趣味の弓道は五段の腕前とか。心に迷いがあると的に当たらない、という杉澤さんの次に放つ矢が標的にみごと命中するか、大いに注目したい。

株式会社グリーンセンター
秋田県能代市字大瀬侭下18-1
TEL:0185(54)5000
http://:www.shirakami.or.jp/~greenc

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