総合ブライダル企業を目指して

株式会社イヤタカ 代表取締役社長

   北嶋 正  氏


 通産省の「'94サービス産業年鑑」('98年刊)によれば、全国に結婚式場は5千3百程度あるといわれている。ある銀行の調査では、挙式会場および披露宴会場ともに、ホテルでの開催ウェイトがここ数年で一段と高まり、平成6年で約5割を占めている。その一方で、専門式場および公共施設のウェイトは、総じて低下傾向を示している。
 また、婚姻件数は昭和47年の110万組をピークに、出生率ならびに婚姻率が低下するなかで減少傾向にあったが、昭和62年の69万6千組でようやく底を打ち、以降徐々に増加してきている。今後は、団塊ジュニアといわれる第2次ベビーブーム世代が、ブライダルエイジといわれる年齢になり、80万組に向けて上昇することが予想されている。
 秋田市に本社のある(株)イヤタカは、市内でもっとも歴史のある本格的な結婚式場「彌高会館」として親しまれ、着実な成長を遂げてきた。当社は、時代の潮流を敏感にキャッチしながら、総合ブライダル企業を目指して新しいチャレンジを行っている。
 今号では、当社代表である北嶋正さん(昭和23年生れ)に話を聞いてみた。



−御社の生い立ちについて……
北嶋
●かつて結婚式は、家庭内行事として執り行われていたものが、挙式は神社で、披露宴は料理店や旅館などで行う形態に変っていきました。本格的な結婚式場が登場してきたのは戦後になって、明治記念館がオープンしたのが始まりで、その後料理店や旅館など飲食設備をもつ業者が結婚式場へ転換していった経緯があります。
 昭和40年代当時、秋田市でも結婚式場は少なく、彌高神社の付属施設としての結婚式場でした。時代の要請もあり、結婚式場を神社の活動と切り離した方がよいとの結論で昭和49年に栢\高会館としてスタートしました。


−結婚式場業界の状況は……
北嶋
●結婚式場は、専門式場、ホテル・旅館、公共会館、神社等の宗教施設の大きく4つに分類されます。それぞれ生い立ちは異なりますが、宴会場をもっている施設が結婚式も行うようになったといえます。
 特に40年代の高度成長時代と団塊の世代の婚礼適齢期が重なったおかげで、空前の結婚ラッシュが起こり、年間110万組が結婚しました。それに伴い専門式場も増え、ホテルも本格的に参入してきた時代といえます。
 秋田では、彌高会館と平安閣がほぼ同時に開設された時期で、ホテルでは第一ホテル(現キャッスルホテル)が結婚式を行っていたくらいです。
 50年代後半に入ると、都市開発の関係で大きなホテルが建つようになりました。ホテル経営は、宿泊だけではとても採算が合わず、どうしても宴会部門のウェイトが大きくなります。なかでも婚礼部門がとても重要なポイントとなります。
 従って、婚礼に力を入れた営業戦略をとり、施設も婚礼を前提にした施設づくりになっています。この辺から結婚式場業界が本格的な競合時代に入り、4つの部門が入り乱 れてシェアを争うようになりました。


−式場としての対策は……
北嶋
●結婚式場は、一種の装置産業であり、建物・設備が商売道具です。リニューアル、増改築をして対抗するしかありません。ハードをきちんと整備し、積極的に営業活動を行うことでこれまで需要を拡大させてきました。
 もともと結婚式場としてスタートしましたが、これからは結婚だけでなく、多種多様な宴会・会合に対応していかなければなりません。結果的に、宿泊設備がないだけで、ホテルと全く同じ土俵でがっぷり四つに組むことになりました。



結婚式が様変わり

−最近の結婚式のスタイルについて……
北嶋
●若い人の結婚に対する考え方が変わったことで、最近の結婚式は様変わりしたといえます。1番大きな変化は、式を挙げないカップルが増えてきたこと。その次は、海外旅行を兼ねて、本人たちだけで式を挙げることです。
 そうはいっても、まだまだ従来からある、大勢の人たちを呼んで披露するスタイルが多いのですが、挙式するにしてもそのスタイルは明らかに多様化しています。
 たとえば、仲人なしや花束贈呈しない、ケーキカットに本物のケーキを使うなど、形式にこだわらない結婚式が増えています。


−レストラン部門が好調のようですが……
北嶋
●現在は、秋田市山王地区で「楽座」、中通の市民市場近くで「楽市」というビアレストランを営業していますが、この前にも3つほど飲食店を手がけています。あれこれ試行錯誤しながらここまできました。
 我々の商売は、「集いの提供業」と考えて事業を行っています。「イヤタカ」はどちらかというと、挨拶が伴うようなフォーマルな集いの場。一方の「楽座」「楽市」はカジュアルな集いの場と考えています。
 どういう理由でお客さまが集まって、それに対してどういう場とサービスを提供すればお客さまが喜んでくれるのかという観点から始めたもので、同じコンセプトでやっています。たまたま業態がちがうだけといえます。
 小グループのお客さまが、気軽に集まって楽しんでもらえるような、カジュアルな雰囲気の店をつくりたいと思いました。幸い好評で、お客さまの支持が得られたようです。


−婚礼衣装のレンタルについて……
北嶋
●昭和62年、外旭川に婚礼衣装のレンタルと販売を行う「マリエ」という店をオープンしました。彌高会館以外で結婚式を挙げるお客さまでも、取扱い商品の魅力を高めれば利用していただけるのではと考えたからです。
 お客さまは、これまで式場専門の衣装屋さんを利用するケースが多かったのですが、ドレスの好みが多様化したおかげで対応しきれなくなっているのが現状です。そこで桂由美と提携して、ドレスを主体とした専門店をつくりました。ハイレベルなドレスも揃えることができ、おかげさまで全県からお客さまがいらしてくださいます。



婚礼のあらゆるニーズに対応

−婚礼プロデュースについて……
北嶋
●一昨年、式場以外で結婚式を挙げたいというカップルの、婚礼プロデュースを行う「カリヨン秋田」という会社もつくりました。たとえばレストランで挙式する場合、レストランでは料理は作れるがその他はわからないし、当人たちもどうやっていいのかわからないわけです。そういう段取りをすべてつけてあげる会社です。秋田でもそこそこの需要があるようですが、場所が限られてくるのが難点といえます。


−来年4月にチャペルが完成するそうですね……
北嶋
●やるからには本格的なものをと考え、独立した建物で、使用するステンドグラスはティファニー製のアンティークをイギリスまで出かけて買ってきました。パイプオルガンはドイツ製です。
 彌高会館の付属施設ではなく、もっとオープンにして、どこで披露宴を挙げようが使える施設にしたいと思っています。
 これまでは業者側の都合で、便宜上、挙式が前段で披露宴がメインというようにセットされていましたが、これからは挙式と披露宴は分離されてくると考えています。


 ブライダル産業は、婚礼に対する考え方が大きく変化し、それに伴い結婚式のスタイルも様変わりしていくなかで、新しい潮流をうけとめる人づくり、ものづくり、サービスが求められている。
 「県内一の総合ブライダル企業を目指し、ブライダルマーケットで求められる多様なニーズのすべてに応えられるよう、そしてお客さまから十分な満足を得られる商売をやっていきたい。」と熱っぽく語る北嶋さんの次なるチャレンジを注目したい。

株式会社イヤタカ
秋田市中通6-1-13
TEL:018(835)1188

バックナンバー集へ戻る