あらゆるメディアから情報発信

株式会社興文堂 代表取締役(J・トーク)

  竹ノ内 和久  氏


 97年の「第13回NTT全国タウン誌フェスティバル」の参加タウン誌が777誌。実際には、おそらく全国に1000誌は有るといわれている。
 タウン情報誌は、各地域に密着して情報発信するメディアで、地域の特性を活かした誌面づくりを行っている。誌面には、飲食やファッションなどのショップ紹介や音楽、映画といったエンターテイメント情報の他、エッセイや読者参加の投稿コーナーがあるのも最大の特徴となっている。
 ターゲットは、情報に敏感で消費者として最もパワーのある20代・30代の年齢層で、彼らの口コミ情報が時代のトレンドを創り出しているといっても過言ではない。
 また広告媒体としても、エリアやターゲットが明確なため、読者のレスポンスも高く、タウン情報誌ならではの効果が期待できる。
 秋田市に本社のある(株)興文堂は、タウン情報誌「J・トーク」を発刊する他、ホームページの作成を手掛けるなどインターネットを通じたビジネスを展開している。
 今号では、同社代表取締役である竹ノ内和久さんに話を聞いてみた。



−創業までの経緯について……
竹ノ内
●大学卒業後、一貫して出版・印刷業界にお世話になりました。東京の出版社では、刊行物のレイアウトや割付の仕方など雑誌編集のイロハを教わりました。
 秋田市の(株)三戸印刷所では、営業を5年間やりました。そこでは実際に印刷物を依頼される側になり、出版と印刷の両方の立場を経験したことは、今の雑誌づくりにとても役立っています。
 その後、(株)あきたタウン情報に移り、7年間ほど情報誌の編集に携わり、現在のタウン情報誌のスタイルを築くことができたと思います。


−独立の理由は……
竹ノ内
●最大の理由は、情報媒体として「紙」だけでなく、例えばHP(ホームページ)やもうすぐ立上がる予定のコミュニティFMなどのいろんなメディアに対応した情報発信をやりたいと思ったことです。
 実際に今の業務内容は情報誌半分、インターネット半分になっています。私自身、雑誌の編集はほとんど任せきりにして、インターネットにウェイトを置いています。


−タウン情報誌の商圏について……
竹ノ内
●秋田県では、中心経済圏が秋田市なので、それこそ鹿角から湯沢までが情報誌の商圏といえます。J・トークでは、イオンSC(ショッピングセンター)の広告を大きく掲載しています。これは、イオンSCとJ・トークの商圏が重なっているというイオンサイドの判断からです。今の若い人は新聞を購読しないので、広告は情報誌に掲載する方が効果的なようです。



インターネットで誌面づくり

−情報誌づくりはどのように……
竹ノ内
●情報源は、やはり口コミです。日々、スタッフが動いて探し出しています。また雑誌づくりには、インターネットを最大限に活用しています。エッセイなどは作者と電子メールで原稿をやりとりするし、読者からの投稿コーナーは依頼先にハガキなどをそのままFAXすると翌朝にはメールで返送されてきます。
 広告については、飛び込みで広告をとるのは難しいので、最初は取材をさせてもらいます。媒体の強みは、紹介すると読者からそれなりの反応があることです。それを広告につないでいくという古典的な手法をとっています。


−現在の問題点について……
竹ノ内
●情報誌のネックは、流通コストがかかることです。情報誌に限らず、すべての雑誌はその約70%がコンビニで販売されています。委託販売方式をとっており、1店舗ごとに直接納入するため、発送業務と送料の負担が大きいのです。多くの経費をかけて情報発信をしているといえます。
 これからは、J・トークのHPを広告媒体として活用するやり方をとらないと、紙の媒体だけではビジネスとして生き残れない時代です。インターネットユーザーは比較的お金持ちが多いので、広告を出す企業にとっては販売につながるのではないでしょうか。



情報はスピードが勝負

−今後の課題は……
竹ノ内
●情報誌は月刊なので、情報のスピードが遅いといえます。新聞でも遅いといわれる時代であり、紙媒体の限界といえます。
 そこで、月刊誌は紙でも、それ以外は電波やインターネットでリアルタイムに対応しようと考えています。電波は一方的な情報発信ですが、インターネットでは見る側が見たいときに好きな情報を見るというように、見る側の立場に立った情報提供を考える必要があります。そのためにも情報のスピードアップが必要です。現在、取材写真の半分はデジタルカメラを使用しています。その日デジカメで取材をして、帰って文章を書けば、翌朝にはHPに掲載できるのです。
 このように常にHPをリニューアルし、最新情報を発信する方向を目指しています。問題は、インターネットのユーザーが県内に約1万人程度と、まだ少ないことです。


−最後に今の若い人の印象は……
竹ノ内
●基本的には、自分たちの若い頃と変っていないと思いますが、取り巻く環境が大きく変ったのでは。とにかく流行ものの情報には敏感で、その消費スピードが速い。まさに流行を消費しているイメージです。コミュニケーションの取り方も大きく変りました。ポケベルから携帯電話というように、コミュニケーションすら消費している感じ。たまに会って話すのではなく、始終コミュニケーションツールを使って話していなければ落ち着かない。ツールがないと話にならないし、友達にもなれない。自分の趣味というのではなく、「流行の趣味」「ブームの中の趣味」を消費している感じがします。


 「情報とは、その人にとって可能性を持った事柄で、どう扱うかによって宝石にもゴミにもなる」と話す竹ノ内さん。また「あらゆるメディアを使い、同じ情報を繰り返し発信することで、より多くの人の役に立つ情報を伝達するとともに、常に情報をリニューアルすることが生き残りの鍵」とも。
 最近では、UCカードが主催する電子商取引の実証実験に参加し、HPを活用したインターネット通販も手掛けるなど活躍の場を広げている。これからも地域住民にとって、本当に役に立つ最新情報をリアルタイムに提供してくれることを期待したい。

株式会社興文堂
秋田市川尻御休町9-33-2F
TEL:018(866)7751
http://www.merea.or.jp/jtalk

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