廃棄物処理のコンサルタントを目指して

秋田協同清掃株式会社 代表取締役

  長門 二三夫 氏


 廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物とに大別される。前者は、家庭などから出るごみとし尿に大別され、産業廃棄物以外のもの。後者は、企業活動から発生するもので、燃えがら、汚でい、廃油、紙くず、建設廃材など19種類が法律で定められている。
 廃棄物業者は厚生省管轄で、一般廃棄物業者は市町村に業の許認可を申請し、産業廃棄物処理業者は都道府県に対して申請することになっている。しかしながら、両者は明確に区分されるものではなく、双方並びに建設業などとの兼業も相当数存在している。
 また、事業内容から収集運搬業・中間処理業・最終処分業の3つの業態に区分される。業者数は4〜5万と推定され、そのうち収集業が9割程度を占めている。最近のごみの減量化要請に応えて、単なる収集運搬業から脱皮し、中間処理を併せて行う業者も増加傾向にある。
 秋田市に本社のある秋田協同清掃(株)は、廃棄物の減量化やリサイクル化といった時代の流れを的確に捉え、リサイクル施設や中間処理施設を設置するなど積極的な事業展開を行っている。
 今号では、同社代表取締役である長門二三夫さんに話を聞いてみた。



−創業までの経緯について……
長門
●昭和39年、秋田市で一般廃棄物処理業第1号として長門商会を創業しました。この年は、ちょうど東海道新幹線の開通と東京オリンピックが開催された年です。時の池田内閣は所得倍増計画を発表し、まさに高度成長時代の真最中でした。大量消費時代の急速な経済発展は、一方において公害問題やごみ問題も発生しました。東京都知事の美濃部さんが、急速に肥大する都市ごみに手を焼き、「ごみ戦争」を宣言したのもこの頃です。
 全国地方都市においても「ごみ」の問題は共通の難問題で、秋田市における清掃行政も急激に増加する「ごみ対策」に苦慮していました。当時の秋田市清掃センターの収集体制は規模も小さく、秋田市全域に渡って完全収集することは不可能でした。「家庭ごみ」でさえこの状態でしたから、事業所などから排出される「事業ごみ」については、全く対応しきれず、混乱状態にありました。
 この時、「これは仕事になる」と直感し、これが、この職業と私の出会いといえます。



ごみ問題で需要が増大

−創業後、事業は順調でしたか……
長門
●創業期においては誰でも経験することですが、私も同様に「人・物・金」が無く、実績も無い。実績が無いから、信用も無い。こうしたなかでの創業でした。有るものといったら、健康な体と情熱だけでした。実際に「ごみ処理」の仕事は、想像以上に困難で辛く、職業としての社会的地位も非常に低いものでした。
 昭和40年になって、秋田市清掃センターは焼却炉の老朽化や埋立地の確保難などで収集業務が限界に達し、パンク寸前に陥りました。これは市民にとっては、非常に困ったことですが、私ども業者にすれば不幸中の幸いで、おかげさまで事業は着実に成長することができました。


−昭和45年の法改正で何が変りましたか……
長門
●従来の「清掃法」に変って、新しい環境に対処するため「廃棄物処理及び清掃に関する法律」が制定されました。この法律は、廃棄物を一般家庭から排出される「一般廃棄物」と、工場等の生産過程から排出される「産業廃棄物」に分類し、一般廃棄物については市町村に、産業廃棄物についてはこれを排出する事業者に処理責任があるとし、業者に委託して処理することも可能であることを明確にしたことが大きな特徴となっています。
 この法律の制定により、廃棄物処理業者は行政の管理監督下に置かれることになり、ようやく社会的に認知され、職業としての地位を確立したといえます。
 当時秋田市では、財政の削減と収集業務の効率化を図るために、民間委託を計画しており、45年に設立した「秋田協同清掃(株)」は4月1日に土崎中央地区を対象に委託業務を開始しました。
 しかしながら、当時の委託条件は非常に厳しく、委託業務だけに依存していたら生き残れないという危機感を持つようになりました。そこで経営の安定化を求めて学校、病院、ホテル、スーパーなど一般の事業所や工場などから排出される産業廃棄物の分野まで、積極的に営業展開を図り今日に至っています。



廃棄物の減量化やリサイクルは時代の流れ

−業界を取り巻く環境は……
長門
●経済成長や国民生活の向上に伴い、廃棄物が大量に排出される一方で、産業廃棄物の不法投棄は跡を絶たず、地域住民とのトラブルが大きな社会問題になったり、医療系廃棄物の特別管理の必要性が指摘されたりと、大変に厳しい経営環境にあります。
 また、最終処分場の許容量に限界があることから、平成3年には廃棄物処理法の改正にあわせて再資源利用促進法(リサイクル法)が成立しました。いまや廃棄物の減量化やリサイクルは時代の流れとなっており、これに対応しなければ生き残れない状況にあります。


−中間処理事業を始められたそうですが……
長門
●現在、当社では、発泡スチロール溶融施設、汚泥処理施設(脱水)及びビンカン分別処理施設等によって、リサイクル事業を推進しており、昨年のリサイクル実績は年間4,500tであります。
 近年の法改正によってダイオキシン排出削減のための濃度基準が設定されたため、廃棄物は安易に焼却できなくなりました。
 そこで当社では、この度、この事態に対応するために発泡スチロールを溶融し、リサイクル化する中間処理施設を増設し規模拡大を計りました。大きなコストが伴なう事業ですが、これからは避けて通れないことと考えています。


発泡スチロールのリサイクル施設

−12月1日に施行されたマニフェスト制度とは……
長門
●不法投棄対策として、すべての産業廃棄物に産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度が適用になります。これは、廃棄物の種類や特性などを記載した6枚つづりの伝票で、排出事業者から収集運搬業者へ、さらに処分業者へと渡り、最終的に排出業者へ戻ってくる仕組みになっています。排出業者は、この6枚目の伝票で廃棄物が適正に処理されたかどうかを確認できるようになっており、一定期間内に戻ってこない場合は、県知事に報告する義務が課されています。


−今後の課題は……
長門
●近年、地球環境問題が大きく叫ばれており、優良企業かどうかの市民の評価は厳しくなっています。大きな工場では、処理業者に委託しないで廃棄物を自己処理し、全てリサイクルする方向で取り組んでいます。これがいわゆるISOという基準で、これからの企業評価の尺度となります。リサイクルにどう取り組んでいるかが問われ、廃棄物処理を抜きにして商売はできない時代なのです。
 ですから、私どもは大企業ではなく、自己処理できない末端の中小企業を対象にお手伝いをしていこうと考えています。そのためにも、常に新しい技術やノウハウを開発し、より質の高いサービスを提供しなければならないと思っています。


 廃棄物処理業は、市民の日常生活に密着しているだけに、公共性が一段と強くその社会的責任は重いといえる。この職業を「天職」と言い切る長門さん。「これからは、廃棄物処理の専門家として、提案型のビジネスを展開したい」とも。また、同社は平成9年度、当中小企業情報センターの「情報化モデル企業」に選ばれ、情報化による経営革新に大きな意欲をみせており、これまでの自社の成果の普及にも力を尽くしている。
 「顧客第一の心」(社是)の理念のもと、長門さんの一層のご活躍を期待したい。

秋田協同清掃株式会社
秋田市新屋豊町4-30
TEL:018(864)7300

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