クリーンエネルギーで新分野にチャレンジ

株式会社アイセス 代表取締役社長

  齊藤 健悦 氏


 ソーラーシステムとは、一般に太陽の熱エネルギーを利用して、給湯や冷暖房を行う仕組みをいう。昭和48年と54年の2度の石油危機をきっかけに急速に普及したが、石油価格が安定するにつれてブームが沈静化した経緯がある。
 最近では、地球環境の保護が強く叫ばれるようになり、省エネ効果に加えてクリーンで地球に優しいエネルギー源として、再び注目されるようになった。
 ソーラーシステムの新展開として期待されるものに、太陽電池(ソ−ラーモジュール)・太陽光発電システムがある。太陽電池の利用は、電卓に使われてから身近なものとなったが、今では住宅用として瓦に組み込んだ太陽電池や換気扇が実用化され、ソーラーエアコンも開発されている。このほか、外灯や広告塔などへの利用も進んできている。
 南秋田郡井川町に本社のある株式会社アイセスは、電子及び電気制御機器などの設計・製造を行う傍ら、ソーラーや風力による発電システムの開発も手掛けるなど、自然環境との共存をテーマとして新分野にチャレンジしている。
 今号では、同社代表取締役社長の齊藤健悦さんに話を聞いてみた。



−創業の経緯について……
齊藤
●かねてから、地元(井川町)で何か事業を起こしたいと考えていました。ちょうど昭和50年代に入り、テレビ、ビデオ、オーディオといった電気機器の量産化時代を迎えた頃で、電子・電気部品の基板づくりから始めました。幸い、土木関係の仕事で施工管理士の免許を取得していたので、電気については一通りの知識がありました。
 昭和60年代になり、少数精鋭で可能な事業をと考え、設計・開発を主たる業務とした(株)アイセスを設立しました。業務の受注先は地元ではなく、最初から東京方面を中心に営業活動を展開してきました。


−最近ではソーラー発電システムに力を入れているそうですが………
齊藤
●当初からクリーンエネルギーということで注目をしていましたが、実際に取組むきっかけとなったのは、大潟村で行われているワールド・ソーラーカー・ラリーのためにソーラーシステムを自社開発したことです。
 今後の課題は、商売として新産業としてどう展開していけばよいのかということです。住宅での利用が注目されていますが、実際にはそれほど増えていないのが現状です。この商品は住宅だけの発想ではなかなか利用が広がらず、もっと市場を大きく考える必要があります。
 外灯に関しては、井川町だけで5基のソーラー外灯を設置しています。震災などの防災用に威力を発揮すると考えています。心配される悪天候時の点灯時間ですが、不日照日が10日間続いても日没後8時間の点灯が可能です。10日以上、不日照が続いたときは8時間の点灯はできませんが数時間は点灯します。蓄電池はメンテナンスフリーなので、年1〜2回の簡単な点検で済み、とても経済的です。


本社社屋とソーラー外灯


−ソーラー発電システムは輸出需要が多いそうですが………
齊藤
●パネルそのものはアメリカから輸入し、当社でシステムとして加工して、中国や東南アジアに数千枚単位で輸出しています。それらの国では、まだ電気のない地域が多いためか、安価な照明設備として期待されており、特に大学で省エネやクリーンエネルギーの研究材料として使われているようです。



異業種交流で新製品開発

−異業種交流に積極的ですが……
齊藤
●同業種の集まりでは、どうしても発想に限界があります。電気屋は電気のことしか考えられない場合が多いのです。その点、異業種の集まりではいろんなアイデアが出され、新製品や新市場が生じる可能性があります。
 最近の成果として、異業種交流会《クリエーション21》(平成6年発足、会員20名、会長・齊藤健悦)では「電気や水道が引けそうにない地域での水洗トイレの実現にむけて…」をテーマに、エコロジートイレを製作しました。製作には、(財)秋田テクノポリス開発機構から技術研究助成金(平成8年)をいただき、トイレは井川町の日本国花苑に設置して、平成10年4月からの実験スタートになりました。
 全国的にみても公衆トイレは、汚い、臭い、暗い、怖いの4Kといわれています。観光立県を目指す秋田県においても、公園などの公衆トイレを改善することは観光客や地元にとっても大変に意義のあることだと思います。


−エコ・トイレの特徴は……
齊藤
●このトイレの特徴は、トイレの照明、水の循環、バクテリアの繁殖などに太陽光発電を利用することと、水洗の水としてし尿を活性炭とアルカリ性物質で完全に浄化し、循環させていることです。幸い、においはまったくありません。
 この事業は、まさに異業種連携の産物といえます。完成には、電気、衛生、ハウスづくり、デザイン、造園といった専門家の技術が不可欠となっています。今後の課題として販路開拓があげられますが、従来品の半額程度(約4〜5百万円)と安価なのと、その機能性を前面に出して、特に公園やキャンプ場などの公共的施設を中心に働きかけていきたいと考えています。


−企業経営上で最も困っていることは……
齊藤
●「企業は人なり」といいますが、やはり人材育成に頭を痛めています。業種的に理工系大学等の出身者を採用していますが、日本の大学生の場合は、卒業してもすぐに戦力にならず、採用して育成する必要があります。対照的に東南アジアの大学生などは、実践的教育を受けているので即戦力になり、日本の方が先進国でありながらとても残念なことです。
 自分で積極的に勉強し、提案しながら仕事を進めていけるような人材づくりに苦労しているところです。



「ISO」は国際化のパスポート

−将来展望について……
齊藤
●電気・機械製造業では、日本でつくるモノが少なくなってきました。今国内で忙しいのは、自動工作機械製造の分野です。自主技術を高めて全世界へ発信し、世界どこへいっても通用する技術、製品づくりが大切です。もはや国内では、研究施設と試作工場程度があれば量産工場は要らなくなるでしょう。日本の優秀な人材は、みなサービス業へ職を求め、製造業には人が集まらない時代です。
 これからの製造業は、製造から開発主体へと方向転換せざるをえません。幸いインターネットの世界では、会社の所在地はほとんど関係ありません。むしろ、地方の方が経営コスト的にも通勤面でも有利なくらいです。仕事においても仕様書さえあれば、世界中の相手と顔を見ずに仕事ができます。
 当社もこの4月にISO9001の認証を取得できる見込みですが、今後はこのような世界標準を取得しているかどうかが取引の条件になってくるでしょう。


 環境問題はさらに深刻の度合いを深め、クリーンエネルギーを活かす場はますます重要となってくるだろう。「企業活動と自然環境との共存を図りながら、自然エネルギーの利用を広く普及させていきたい」という齊藤さんの次なるクリーンヒットに注目したい。


ソーラー電源式道路用看板

株式会社アイセス
南秋田郡井川町北川尻字下田面替場11-1
TEL:018(874)3252

バックナンバー集へ戻る