情報化社会に対応した「ソフト事業」参入で、一層の飛躍を狙う

株式会社ウエーブ  代表取締役社長

  工藤 慶悦 氏


 通産省の平成10年版「工業統計表」によると、印刷業の製造品出荷額は平成8年には7兆3,286億円と、前年より1,810億円程度上回ったとされる。
 しかし、印刷業の需要先は全産業にわたっており、好不況の波に大きく影響を受ける業種であることは間違いない。こうした中、印刷技術の進歩はめざましく、大企業ではこれまでの「従来印刷分野」から、ICカード、CD-ROMなどの情報処理加工等の「拡印刷分野」にそのウエイトをシフト。大企業の情報産業化、中小企業の在来印刷固定化という「すみわけ」が進んでいる。今後、中小企業がこの業界で生き残るためには、ソフト化、情報化への対応が急務といえる。



御社の業歴について……
工藤
 学業を終えてから、演劇を志して神奈川県・川崎で10年ほど暮らし、回りの勧めもあって「地元に演劇を根づかせたい」とUターンしてきました。 戻ってきてからは、生活の糧とするため地元の印刷会社に勤務し、この業界に入りました。そこには約2年間お世話になり、妻と二人で独立したのが昭和56年です。
 創業当時は6畳と4畳半の借家で、玄関に印刷機械、大家さんの薪小屋に製版機を置き、狭さや冬の寒さなどと戦いながら働いていました。その後、業容の拡大とともに昭和63年に(有)工藤印刷に法人成り、平成8年の現社屋新築を機に社名を現在のウエーブとし、現在に至っております。


株式会社ウエーブ(本社工場)


御社のターニングポイントは………
工藤
 当社は地域でも後発の業者で、当時オフセットカラー印刷の分野でも立ち後れていました。そこで当社独自の強みを発揮し、差別化をはかるため、当時隆盛を誇っていた「テレカ」に注目し、昭和63年に「オリジナルテレホンカード」印刷を県内でいち早く業務に取り入れました。営業努力の甲斐あって、当県を始めとして青森・岩手・山形各県のNTT代理店になることができ、年商の約半分をこの「テレカ」印刷で占めた時期もありました。
 しかし、携帯電話の台頭で「テレカ」市場が衰退していくのは予期できましたので、これに代わる次の一手を模索していました。そんな時、社員から「これからの時代はDTPが主流になる」との提案を受け、平成4年に当時県内の印刷所で2番目に導入に踏み切りました。
 当時でも3,000万円ほどの設備投資でもあり、「本当に導入していいのかな」と内心は不安でいっぱいでしたが、現在はこの「DTP」システムを利用した印刷が、全売上の8〜9割を占めるまでになり、完全な柱として成長しています。


この度、iモードを利用した新事業を開始されたそうですが………
工藤
 この事業も、社員からの提案を受けいれて開始したものです。こうしたサービスは、すでに東京・大阪・札幌で始まっており、東北では岩手県に次いで2番目のサービス提供開始です。
 簡単にいえば「iモード携帯電話」で見ることのできるホームページを作成し、秋田県の観光・飲食店・宿泊施設・市町村などといった多岐に渡る情報を県内外に発信するものです。利用者側にとっては、全国どこでも無料(通話料は有料)で秋田の情報を入手でき、掲載者側にとっては、情報を掲載することでの広告効果が期待できます。秋田を売り込み、秋田を活性化させるために是非とも本事業を成功させたいです。
 サイト名は「サニーサイド秋田」、URLは「http://www.3231.com」となっています。是非1度アクセスしてみてください。


反響はいかがですか……
工藤
 おかげ様でサービス提供開始以来、アクセスは約1ヵ月で6,000件を超えており、利用料金のかからない利用者は口コミ等で着実に増加していると思いますが、正直申しあげて掲載者である企業側の反応は鈍い状況です。まだまだ新しいツールに対する認知度は低いのかなと感じています。
 今後は、情報の一層の充実をはかるのはもちろんですが、人員の拡充による営業力の強化、メディア等を積極的に活用した認知度アップに向けた努力、飛躍的なアクセス件数増加が見込める「iモード基本メニュー」への掲載実現に向けた努力をしていくことで、こうした問題をクリアしていきたいと考えております。


今後はこうした新事業にウエイトを移すのでしょうか……
工藤
 当社では、これまでもカラー印刷のほか、ホームページ制作、看板制作、デザイン制作、企画事業等を手掛け、今回情報のソフト的事業が加わりました。
 これまでの業務は、お客様からの受注を受け、納品して完結でしたが、この新事業は継続反復的にビジネスチャンスを得られますし、これによって獲得できるお客様は、当社と初めてのお取り引きの方が多いであろうという点で多いに期待しています。
 しかし、私たちは「自分の手は2本しかない」ことを良く理解しています。本業はあくまでも「印刷」です。この事業では儲けなくても、これをキッカケにこれまで当社が培ってきたノウハウを活かし、お客様に様々な提案ができればいいと考えています。


「こうした新しい事業は、当社社員の時代を先取りした情熱によって次々に実現されてきました。経営者の経験や固定観念から『自分の出来ないことはやらない』という姿勢では企業は長続きしません。でも、こうしたことを許せたのは自分が創業者だからでしょうか」と明るく語る工藤社長。あくまでも本業を大切にしながらも、日々進展する情報化社会に対応して新しく生まれ変わっていく、今後も目が離せない当社である。

経歴:
昭和25年生まれ。
二ツ井町在住。
株式会社ウエーブ
  山本郡二ツ井町海道上70
  電話:0185-73-5602
 秋田オフィス
 (サニーサイド秋田事業部)
 秋田市八橋大沼町3-3
 電話:018-888-1616

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