新しい石の文化と美の創造に幅広く貢献

株式会社秋田石材  代表取締役

  清瀧 和敏 氏


 石は私たちの生活に古くから密接に関わっている最も古い資材の一つであり、住宅をはじめとする建築や公共空間、芸術品、墓石など様々な用途として使われてきた。堅くて耐久性抜群という自然的長所に加え、近代加工技術の発展と進歩により、その美しさ、重厚感は人々に大きな安らぎと満足感を与え続けている。
 本荘市に本社がある(株)秋田石材は主力商品である墓石を中心に、記念碑、石像彫刻物など各種石材商品の販売・施行から建築石工事の設計・施工まで、石材関連の多彩な事業展開を行い、地域文化創成の一翼を担っている。今号では、当社の代表取締役である清瀧和敏氏に話を聞いてみた。



この業界に入られたきっかけは……
清瀧
 地元の銀行に10年間勤務した後、行政書士や社労士等の資格を生かし昭和42年に個人で事務所を開業。元来、鑑賞石に興味があり、休日は石を求めて県内各地を歩いていましたが、茨城県の展示会で海外の銘石を見たのをきっかけに本格的に入り込むようになりました。結局、これが引き金となり業界への参入を決意。わが国における石材の3大産地の一つである茨城県の業者に出向いて修業を重ね、昭和48年3月に当社を設立しました。


市場の特性・特徴は………
清瀧
 電子部品や衣類などと同様、海外での石製品加工の依存度は高く、9割近くになっています。5〜6年前より、中国から製品が大量に輸入されるようになって、石材産地の加工業者に頼まなくても、安くて、良い製品が仕入れられるようになりました。機械化による加工技術の進歩が大きな要因です。当社でも輸入業務を行っており、選定から加工、検品まで商社を通さない、直接仕入、直接販売をしています。


販売のターゲットは………
清瀧
 当社では売上の80%が墓石であり、現在は50〜60代の男性が主な購買層ですが、これからはお墓を守る人、次世代の人、特に女性をターゲットにしていきたいと考えています。石は堅くて、長持ちで、冷たいといったイメージがつきものですが、最近は柔らかく、あたたかく、美しくしたり、石を表現する技術が向上しています。そこで現在商品化を検討しているのが「ファントーニ」。日本ではまだ開発されていないアメリカの彫刻技術で、石の柔らかさを生かし、芸術作品のような完成度を誇り、多彩なオリジナルデザインを創ることができます。平成12年3月より、秋田県内では初めての商品として販売していく予定です。


墓石用のタイムカプセルを開発されたそうですが……
「墓石用のタイムカプセル」写真 清瀧
 亡くなられた方々のご遺族は故人の供養を行う義務があります。“故人が一番喜ぶものをお墓に”といった供養の心の表れを形にしたいと願い、高岡市に本社のある(株)竹中製作所と共同で開発しました。このタイムカプセルVanguardU型には愛用のメガネやお孫さんの写真、好きだったタバコやお酒を入れることができ、内蔵の位置は実用新案登録により墓石本体の全部や土台、門柱等に自由に設置できます。


首都圏にも進出されているようですが……
清瀧
 墓石用タイムカプセルについては、直接一般のお客様へ販売するものではなく、石材業者をターゲットとしているため、県内では販路が狭く、首都圏の業者を中心に営業展開しています。東京ビッグサイトで開催されたJAPAN STONE FAIR'99にも出展しました。また、8月からは(財)秋田県中小企業振興公社が管理・運営している東京・有楽町にある「秋田ビジネスサポートセンター」へ入居。専用ブースの他に共有の会議室や商談室もあり、活動拠点としては最適な条件が整っていますので、大変気に入っています。何といっても交通の便が最高ですね。


ブランドプラザ「石の七福」について……
清瀧
 今までは、自動車でも家電品でも各メーカーが自社の製品を売るために販売専門店をつくるといった小さな発想しかなかった。しかし、お客様のニーズを考えるといろいろなメーカーが1カ所に集中したほうが、よりベターなのです。そこで、今年3月秋田市新屋にブランドプラザ「石の七福」をオープンしました。ここでは国内外の石材メーカー10数社が参加し商品を展示しています。全国でも初の試みであり、各社が競い合って商品を展示しているため、価格的にも安くて、良い商品が手に入いることからお客さまには大変好評を得ています。家電品がそうであるように、いずれ自動車メーカーもこのような販売形態になるのではないでしょうか。


ブランドプラザ「石の七福」


今後の展開について……
清瀧
 世帯数の減少などで、今後は墓石需要の急激な増加は期待できませんが、最近は本物志向の高まりで、コンクリート製品から石へと自然の石が見直されてきています。歩道や河川の土留めブロックでも活用されるなど、石工事の将来については明るい条件が揃っています。そこでタイルの価格で石工事(玄関のはり石)を、大谷石と同じ価格で石塀工事をやっていくなどして、石の価格が高いというイメージを払拭し、石を建築の中にどんどん取り入れていきたいと思っています。石でつくられた文化、木でつくられた文化、コンクリートでつくられた文化がありますが、最後に残るのは石と木の文化であると考えています。


リジナル墓石の開発や建築石工事分野での新規事業展開など、清瀧さんは今後も石材産業を基盤として様々な新しい可能性に挑み続ける。

経歴:
昭和14年東京都生まれ。
秋田高校、産業能率短期大学
財務部(通信課程)卒。
本荘市在住。
株式会社 秋田石材
  本荘市出戸町字東梵天263-1
  電話:0184-22-2459

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