経営探訪 千代田興業株式会社
鉄骨を原点に建設業界を縦横無尽に駆け回る質実剛健な技術、製品、人材、経営
千代田興業株式会社 千代田興業株式会社
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鉄と向き合う
 千代田興業株式会社は昭和26年、建材・鋼材の販売会社として創業する。昭和30年に鉄骨製作加工を開始し、数年後には鉄骨が業務の中核となった。これまで鉄骨を供給したものには、県内では、秋田県庁第ニ庁舎、秋田拠点センター(アルヴェ)など、県外では、アクアマリン福島など多数がある。
 鉄の溶接について、その歴史はまだ浅く、日進月歩の技術的革新を経てきた。今日の鉄は、私たちが考えているよりも遥かに汎用性のある物質となっている。靭性(ねばり)が高く、様々な加工に耐え得る。構造材としてのみならず、デザイン面からも広く用いられている。また、環境という視点からも、溶鉱炉にかけることで再形成できるという高いリサイクル性を持っている。千代田興業は、この鉄に真正面から向き合い、鉄骨製造・加工などの品質向上を実現させてきたのだ。「品質を重視し、高めることによって、自然と手がける仕事の種類や地域が広がっていく」と藤澤社長が話すように、現在も大手企業からの協力依頼が絶えない。「難しい仕事でも、逃げずに真剣に取り組んできた」という結果が、今の技術力と品質を築き、信頼される企業へと成長したのだろう。
新しい取り組みも基本となる品質あってこそ
 平成17年には、産学官連携により開発した新しい鋼管摩擦杭「グランドホールドパイル」を国土交通省の性能認可を受けて売り出している(国住指第505-1号 TACP-0177)。鋼管外周面に取り付けられたスパイラルと、鋼管内部から杭軸直角方向に突き出すアンカーにより、高い支持力、引抜き耐性力を発揮。通常よりも少ない杭の本数で施行が可能なため、経済的で、工期短縮にもつながるということだ。
 「グランドホールドパイル」は、木造、鉄骨、鉄塔、防雪柵、地盤改良、等様々な用途に活用できるが、中でも注目したいのは、一般住宅向けに提案している「千代田興業株式会社式耐震補強システム」である。「日本に住む限り、地震対策を考えずに暮らすことはできない」。大型ビルも一般住宅も地震対策には手を抜きたくないものだ。この耐震補強システムは、今ある住宅の外部にグランドホールドパイルによる耐震補強を施し、地震発生時、沈下を防止するとともに揺れを抑え倒壊や崩壊を防ぐというものである。外部補強なので、部屋の間取りや通気、採光の障害にならず、工事中もそれまでどおりの生活ができるという特徴がある。
 新しい鋼管杭や、それを活用した耐震補強システムの開発も、それを可能にする鉄骨の品質と、ニーズに応えられる技術力が基本にあってこそできるもの。まったく新しいアイデアから開発を行うというより、今持っている品質と技術の可能性を広げるという感覚が強いようだ。藤澤社長からも「品質」という言葉が何度も聞かれ、誇れる品質とそれを支える技術力の研鑽に努力を惜しまない姿勢が窺えた。
千代田興業株式会社
能動的に仕事ができる人材
 近年、ものづくり企業では、技術の承継が熟練者と若年者の間でスムーズに進まないという課題があると言われている。
 千代田興業も、CADによる精密設計が進められ、生産ラインは機械化され、細かい数値での製造や加工が可能となっている。元来、技術者は、小さな問題を解決する日々の経験の中で、大きな問題が発生した時でも対応できる応用力を自然と磨いてきた。ところが最近、現場が機械化されるに従って、応用力を磨く機会となる、不具合やトラブルが激減してしまった。
 こういった状況の中でも、技術者の力が低下しないように、労働環境の整備はもちろん、資格取得を全面的に応援するなどしている。実際に、建築、施工、溶接、鉄骨製作など多くの資格保有者を抱えるにいたっている。
 また、新入社員はまず工場に配属され、営業も総務も全員に現場を体験させることとしている。「どうやって作っているのか分からないものは売れないし、電話一本回すにも製造現場を知らないと」。扱う分野が多岐に渡るようになり、注文通りの仕事だけでなく、「グランドホールドパイル」のような提案型の仕事が可能になった今、技術職員にも事務職員にも、ひとつ隣の部署、そのまた隣の部署でやっていることへの知識と理解が重要になってくるのだろう。
千代田興業株式会社 千代田興業株式会社
着実に
 会社全体としても、ISO9001を取得、現在は秋田県経営品質賞に取り組み、さらにISO14001取得も検討しているとのこと。それらのノウハウを吸収し、日常業務に反映させてこそ本当の効果があるという藤澤社長の考えは、社員一人ひとりまで動かしているようだ。
 藤澤社長は2代目。創業から続けてきた歩みを一歩も止めず、技術を守り育ててきた。当たり前のようだが難しい、なにひとつ後退させないその経営姿勢は、新鮮に映る。鉄骨のように、地味ながらも確実に光り、周りを安心させる存在であり続ける。質実剛健な千代田興業株式会社に今後も注目していきたい。
CORPORATION DATA
千代田興業株式会社
代表取締役社長 藤澤 正義
本社
〒010-0941 秋田市川尻町字大川反170-49
TEL:018‐864-6200
FAX:018‐863-1307
建設事業部
〒010-0941 秋田市川尻町字大川反170-19
TEL:018-888-3666
FAX:018-888-3667
仙台営業所
〒981-0923 仙台市青葉区東勝山三丁目5-34
TEL・FAX:022-271-3542