経営探訪 日の丸醸造 株式会社
今ある技術で、酒の世界を大きく広げる。麹を活かした酒造り。
日の丸醸造 株式会社 日の丸醸造 株式会社 日の丸醸造 株式会社 日の丸醸造 株式会社 日の丸醸造 株式会社 日の丸醸造 株式会社
日の丸醸造 株式会社
麹を見つめ直す
 平成6年には約126万キロリットルあった清酒の国内消費量は、その後減少を続け、平成16年には約75万キロリットルにまで減っている。「日本酒専業に固執するより、昔からの技術を活かして、新しい需要に応える酒造りをしたい。「まんさくの花」などの清酒が我が社の軸であることはこれからも変わりませんが、新しいことにチャレンジし続けることが伝統を守り、発展させることに繋がると考えます」。佐藤譲治社長の言葉通り、日の丸醸造株式会社は酒造りで培われた麹作りの技術を活かして、ここ数年、新しい魅力を持つ製品を開発している。
 日本酒造りに欠かせない麹。酒米のデンプン質をブドウ糖に変え、アルコール発酵を可能にするのがその役割である。なくてはならない材料だが、単体では特段注目されるものではなかった。佐藤社長は、「麹の発酵食品としての機能は非常に高い。健康志向、こだわり志向の消費者にアピールできる素材である」と着目し、麹を使った付加価値の高い製品作りに取り組んできた。
酒の世界を広げる
 社内にコージーズプロジェクトチームを設置し、平成13年には米麹だけで仕込んだ純米酒「麹’s」を開発・販売。通常、清酒に使う米麹と白米の割合は約2:8である。佐藤社長は、「なぜその割合でなければならないのか。日本酒の原点である米麹のみで美味しい酒はできないか」と考え「麹’s」の製造にチャレンジ。これまでにない味に日本酒が苦手な人からの反応も良好で、県内初の製品化に注目が集まった。
 さらに、平成17年には麹で作った甘酒で仕込んだ梅酒「梅まんさく」を開発・販売。「よこて発酵文化研究所」の事業として、1200年以上の歴史がある横手市の大屋梅を守る「大屋梅保存会」と共同で開発した製品だ。市販されている梅酒の多くが、氷砂糖で甘みを持たせたものであるのに対し、「梅まんさく」は氷砂糖の量を極力抑え、甘酒を加えることで、よりまろやかな甘さに仕上げている。数量限定で生産した初年度はあっという間に完売となったそうだ。
 また、甘酒を独り立ちさせ、「吟醸あま酒」として発売。甘酒は必須アミノ酸、ブドウ糖、ビタミンB群など多くの栄養成分を含む発酵食品で、いわば「天然総合サプリメント」だ。まろやかな甘みと豊かな風味、なめらかな口当たりは、混ぜ物の多い甘酒とは一味も、二味も異なる、酒造のこだわりが詰まった製品である。
酒蔵の伝統を育てる
 日の丸醸造は、元禄2年(1689年)の創業と、その歴史は古い。昭和18年に廃業に追い込まれるが、5年後、現社長の父親である先代の佐藤光男氏等が買い取り、酒蔵の歴史を継承してきた。静岡県出身で仕事もまったく畑違いだった先代が、秋田で酒を造るのは並大抵の苦労ではなかったことだろう。佐藤社長は、先代のチャレンジ精神を受け継いで、8年前に銀行勤めから転進し蔵の伝統を守り育てている。
 「秋田には、自然、人、もの・・・いいものがたくさんある。せっかくの素材をもっと研究し、磨き上げて、積極的に発信していければ」。同社は、支援制度の活用、他社や研究機関との連携から、埋もれている魅力を発見し、製品化に結び付けてきた。さらに、「酒ができてから「さて、どう売ろう」と考えるのではなく、伝統の中で培った技術を活かしながら、丁寧にマーケティングを行い、消費者に求められる製品を送り出す。これがこれからの酒造りに大事なことではないでしょうか」という。
日の丸醸造 株式会社
和醸良酒
 酒造りは11月末〜12月上旬に始まり、約半年かかる。今では珍しいが、酒造りの指揮を執る高橋良治杜氏始め10名の蔵人たちは、この期間は酒蔵に住み込み、日々の作業に専心している。「和醸良酒」。家族のように寝食を共にして和を育み、心を一つにして酒に向かう。その愛情と真剣さは、蔵人さんが「なんにもないけど」と言って差し出してくれた大きな柄杓いっぱいの仕込み水の味のように、透明で気持ちのいいものだった。
 「酒は工業製品ではなく、農業製品」という社長と蔵人さんが造る、こだわりの酒。しっかりと秋田に根を張りながらも、大空に枝を伸ばす酒蔵の姿がそこにあった。

 国際線の機内や海外でのレセプションなどに日本酒が登場するというニュースも聞くようになった。日本の酒蔵は、今、新しいステージに進もうとしているのではないか。日の丸醸造の、そこにある伝統を大切にした新しい酒造りが、その一翼を担うことを期待したい。
 平成19年3月17日(土)には、毎年恒例の蔵開きが行われる。誰でも酒蔵見学と新酒の試飲ができるとあって、この機会に蔵人と新酒を訪ねてみては。(詳細・お申し込みは、日の丸醸造株式会社にお問い合わせください。)

日の丸醸造 株式会社
CORPORATION DATA
日の丸醸造株式会社
取締役社長 佐藤 譲治
〒019-0701 横手市増田町字七日町114-2
TEL:0182-45-2005
FAX:0182-45-2006
URL:http://www.hinomaru-sake.com/