タイトル-ビジネスレーダー このコーナーでは、積極的な経営展開を図り市場から評価を得ている企業や、商業者の新たな取り組み、アントレプレナー(起業家)の挑戦などを紹介します。
株式会社 鹿角観光ふるさと館
株式会社 鹿角観光ふるさと館  近年日本の観光は、急激に多様化・個人化が進んでいる。団体旅行から個人旅行へ、画一的なプランから多様なプランの提案へ。団塊の世代という大きな需要に応えるためにも、魅力ある商品やサービスの提供が期待されている。
 そんな中、鹿角市花輪の株式会社鹿角観光ふるさと館(通称「あんとらあ」)が、2006年7月に旅行業第2種の登録を行い、10月からはふるさと館の一画にカウンターを設け、旅行商品・JR券・航空券の販売などの旅行業を行っている。1989年の営業開始以降、地域の特産品販売、レストランでの地場産品提供、きりたんぽ作りなどの体験、花輪ばやしを始めとする伝統芸能の展示など、観光複合施設として観光客をもてなし、1995年からは国土交通省登録の「道の駅かづの」としても地域観光の中心となってきた。
 「旅行業を始めたのは、団体から個人へ、見学から体験へといった旅行形態や観光需要の変化に対応するため、鹿角地域の温泉や自然、イベント、体験メニュー、案内人などの観光資源を組み合わせて、商品として提案する機能を充実させたらどうかと考えたからです」と、同社統括部長の杉山さんは話す。青森、岩手にまたがる大観光地である十和田八幡平エリアの魅力を味わうには、複数の観光地を周遊し2泊、3泊と滞在してもらいたい。旅行のプラン作りから、宿泊・交通予約、現地での対応などを行ってくれる同社旅行業部門は、まさに鹿角観光のコーディネータ。観光消費を伸ばし、地域を活性化させるためにも、立ち寄りではなく着地型の旅行を提案する機能は欠かせない要素の一つ。ちょうど、鹿角市を始めとした周辺市町村、県鹿角地域振興局、観光協会などが、観光振興により強力に取り組み始めた時期でもあり、それらと連携しながら順調に活動が進んでいる。
 地元住民の利用も多く、「観光拠点を目指すには、観光客だけでなく地元住民に喜んでもらえる、集ってもらえる施設でなければ。観光客の方と地元の方が、この施設で交流できるような環境が理想」という。
 現在力を入れているのが、オリジナルの旅行商品開発とPR。この1月には鹿角地域振興局の委託を受け、大手旅行社と組んだ、東京発着「ぬくもり鹿角モニターツアー」を実施し、観光資源の再評価、観光ニーズの把握に活かしている。ツアーの参加者からは、「自分の手で収穫した寒じめほうれん草は格別だった」、「きりたんぽ作りが楽しかった」など、好評を得ることができた。地域の魅力を実感できるメニューは地元の旅行業社ならではで、手応えは上々だったようだ。
株式会社 鹿角観光ふるさと館 株式会社 鹿角観光ふるさと館
 現在は、杉山さんのほかに、2名の職員がカウンター業務を行っている。「長年旅行業に従事してきた職員がいるので、そのノウハウを若手にも吸収させ、サービスの質を高めていきたい」という。地域性あふれる旅行商品と、集約された地域の観光情報を武器に、一人一人に最適な旅をコーディネートしていってほしい。鹿角観光ふるさと館が鹿角を訪れる人の「ふるさと」になる日まで、応援を続けたい。

株式会社 日商産業
株式会社 日商産業  下水道推進工事及び地盤改良工事を中心に土木建設業を経営している株式会社日商産業代表取締役岩出學さんは、業界の景気の冷え込みを敏感に感じ取り、「何とかしなければ」と考えていたという。
 「今から10年ほど前ですね。私どもが得意とする推進工事などは、業界では『特殊施工』と呼ばれるもので、比較的経費がかかるものです。景気が低迷し、工事単価がどんどん下がっていく。採算割れしかねない状況になりました。それでも『今に良くなるだろう』と楽観していたわけですが、世の中はそれほど良くならなかった。経営者として、従業員の生活を守っていくための方策を思案した結果、今行っている『ガラス工芸』に出会ったのです」。
 石川県の著名なガラス工芸職人が、技術を他者に伝承したいと言っていることを人づてに聞き、詳しく話を聞くと、その職人の技法が、「バーナーワーク」というガスバーナーを使用するものであると分かった。もともと土木作業で使用する道具ということもあり、取扱いに慣れている点で、「これは商売として身に付くかも知れない」と直感的に感じたそうだ。
 さっそく、技術指導者としてその職人を同社に迎え入れ、2年近く指導を受けたところ、従業員の1人が見る見るうちにその技法を習得し、平成18年9月、(株)日商産業の附属機関として、ガラス工房「ハーベスト」を立ち上げるに至った。
 「『バーナーワーク』は、耐熱ガラスを使った製品を作るという点で優れた技法です。そういった意味では、フラスコや試験管といった理化学製品の生産に使用されている技法なのですが、耐熱ガラスという素材がインテリア照明用具としても有用であると思い、そういった作品を多数試作しています」。
 工房には、LED用の小さなものから、花や動物の形を施したものまで、多種多様の照明用具が並んでいて、そのすべてが手作業でひとつひとつ丁寧に作り上げられている。
 「技術を習得すること。これが第1ステージでした。第2ステージは、こういった取り組みを行っていることを世間に知ってもらうこと。これをクリアして、最終的に採算ラインに乗せていきたいです。現段階は、まさに第2ステージであり、どうやって売り先を確保するかが課題です」。
株式会社 日商産業
株式会社 日商産業
 現在は、岩出さん曰く「自分で東京に行って営業回りでかかるコスト程度」で出展できる展示会に参加して、実際に商品を見てもらうことと、県内のアクセサリーを扱う小売店に掛け合って店頭に置いてもらうという作業を地道に行っているが、今後は酒造メーカーや生花店などにも商品を持ち込んで企画提案を行っていくつもりであるとのことである。