経営探訪 株式会社 セーコン
生分解性樹脂を利用した「環境にやさしい花火の玉皮の開発」
株式会社 セーコン 株式会社 セーコン
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環境にやさしい花火の玉皮とは
 花火の容器となる玉皮は、厚紙などをプレスまたは積層したものが一般的で、この玉皮は打ち揚げ後、燃え尽きなかった破片が空中から落下する。破片は尺玉など大きな花火では1キロ以上になる場合があり、実際に破片が見物客に当たる事故が発生した例もある。また、落下した破片はゴミとなり、回収に多くの労力が必要になるなど、表舞台の華やかさとは裏腹に、環境面、安全面に問題を抱えている。
 株式会社セーコンが開発した玉皮は、トウモロコシの澱粉から作った生分解性樹脂に木屑やもみ殻を配合したもので、打ち揚げ後の破片が非常に細かく、しかも落下後は微生物の働きにより分解され自然に帰るため、回収の必要がない。また、玉皮が細かく粉砕されることで、花火がより円形に近い状態で開くという優れた製品である。環境にやさしく安全で品質のよい花火という意味を込めて、「BEST」(Beautiful Eco-friendly Safety Technology)と名付けて販売している。
商品開発までの道のり
 新しい玉皮の開発には、実際に打ち上げて実験する必要があり、花火製造業者の協力がなければ製品は出来ない。当初は、樹脂を使った玉皮を理解してもらえず協力を得ることが出来なかった。運よく知人を介し協力してもらえる大仙市の花火業者と出会うことができ、スタートラインに付くことができたという。
 開発当初は、生分解性樹脂だけで作ってみたが、爆発後の破片が大きく、花火が円形に開かないという基本的な問題が発生。試行錯誤の結果たどり着いた結論は、爆発時の圧力で細片化させるため分子構造を弱くする、そのため樹脂の構造を不均一にする、というものであった。さっそく秋田県工業技術センター(現秋田県産業技術総合研究センター)に相談し、何をどのくらい樹脂に配合させるべきかという共同研究が始まった。何種類もの玉皮を作り、何度も実験を繰り返した結果、玉皮をより細かく粉砕し、丸く広がる花火が完成した。
 製品の検証実験では、1秒間に500コマの炸裂の瞬間映像を撮影し、玉皮の破片と星(光を彩る火薬)の速度を解析、破片形状の確認と爆風圧の測定など爆発現象の解明を行った結果、玉皮の破片形状が細かく均等に炸裂し、細かくなることで花火が丸く大きく開くことを確認することが出来たという。
ものづくり日本大賞優秀賞受賞
 この環境にやさしい花火の玉皮は、第1回「ものづくり日本大賞」で優秀賞を受賞した。この賞は、政府が産業や文化の発展を支え、豊かな国民生活の形成に貢献してきた「ものづくり」の中核を担う優秀な人材を表彰するもので、環境・安全・品質という、ものづくりに必要な要素を満たした製品づくりとして優秀賞に選定される栄誉を受けた。
環境と安全とトータルコスト
 近年、海外から安価な花火の輸入が増加していることもあるが、当社の玉皮を利用している業者は滋賀県などの真剣に環境問題を考える一部の業者を除くと全国的にはまだ少ないという。子供のころから花火が好きでいつか花火に関わる仕事がしたいと思っていた今社長は、「当社の玉皮は、製造工程で何度も紙を貼り合わせ乾燥させる必要や、ゴミとして回収する必要がなく、トータルコストとして考えれば必ずしも高いものではない。何よりも、環境にやさしく破片落下による事故発生を防止するという、社会に貢献できる商品。『大曲の花火』という全国規模の大会を持つ地元業者にももっと利用して欲しい」と力を込める。
株式会社 セーコン
花火の玉皮から派生する様々な商品
 環境に優しい商品としてマスコミにも広く取り上げられたことで、様々な分野からの引き合いがあり、派生商品も生まれている。大阪府警の強盗犯対策の秘密兵器「ウォーターミストチャージ」は、警察庁主催の「警察装備機材開発改善コンクール」で警察庁長官賞を受賞したという。また、河川改修にともなう法面工事で緑化工事に使用する止め具「ECOPIN」も既に商品として販売している。現在、生分解性樹脂を使ったダイナマイトの筒も商品化に向け話が進んでいるという。そのほかにも、建築資材への利用について引き合いが出るなど、環境問題に対する社会、企業の関心の高まりとともに、花火の玉皮のノウハウが活かされた商品開発が様々な分野に広がりを見せている。 株式会社 セーコン
ものづくりに対する思い
 「環境に配慮することは企業の社会的責任」との思いを強く持つ今社長は、メディカル工場を市街地から少し離れた空気のきれいな小高い丘の上においている。「単に装置で工場内のクリーン度を保つだけでは製品の品質を保てない、精密機器の生産には自然環境も影響している。環境にやさしい製品づくりには、周囲の環境も重視したものづくり体制の整備が必要」だという。
 「秋田の環境の良さを活かした製品づくりにチャレンジする事業者が増え、秋田が環境にやさしい、ものづくり先進県となることを願っている」と締めくくった。
CORPORATION DATA
株式会社 セーコン
代表取締役 今 東久雄
本 社: 〒230-0062 横浜市鶴見区豊岡町14-24
TEL:045-573-0094
秋田工場: 〒019-1702 大仙市北楢岡141-2
TEL:0187-72-4588
メディカル工場: 〒019-1701 大仙市神宮寺字八石90-1
TEL:0187-72-2830