タイトル-経営さぷりメント



企業コンプライアンスについて 秋田弁護士会 近江直人法律事務所 弁護士 近江 直人



企業コンプライアンスについて 秋田弁護士会 近江直人法律事務所 弁護士 近江 直人

 秋田県の法人数は、平成18年4月現在(新会社法施行前)、株式会社6,111社、有限会社12,591社、合資合名会社2,290社存在しています。そのほとんどの経営者はエネルギーのコスト削減を意識していますが、どのように管理していったらよいのか分からないこともあり、なかなか実行されていないのが現状です。
 そこで今回は、エネルギーのコスト削減の指標となる『原単位管理』についてご説明させていただきたいと思います。
◎原単位管理とは?
 エネルギーの使用量を管理する場合、多くの企業が前年同月比の増減表を作成して管理をしているのを見受けます。特に間違っている訳ではありませんが、製造業であれば、毎月の生産量が一定しているとは限りませんし、サービス業、例えばホテル業であれば、毎月の婚礼・宴会・宿泊の売上が一定してはいません。当然これらにかかるエネルギーの使用料金も変動しているはずです。
 そこで、この一定していない生産金額あるいは売上金額に対して対応できうる適正なエネルギーの合計使用金額を設定して管理することが原単位管理というものです。すなわち、以下のような計算から原単位を導き出すことができます。


 各業種の平均原単位をご紹介しますので、参考にしていただきたいと思います。。

◎業種別平均原単位一覧表


◎原単位平均高比率業種


◎適正な原単位管理をするには
 各企業の実情に合わせて適正な原単位を設定するには、様々な観点から検討を加えなければなりません。
 そこで、エネルギーの使用比率の大きい電気使用量について適正な原単位管理をするにはどのようにすべきか、力率と最大電力についてご説明いたします。

※力率は適正であるかどうか。
 力率=有効電力(実際に負荷により消費される電力)÷皮相電力{有効電力2乗+無効電力(電源回路の間を往復する電力)2乗の平方根}で表せますが、この力率が高いと電力を有効に利用していただいていることになりますから、電力会社としてもその代謝として、力率100%=基本料金の15%割引の最高をもって、力率1%増減に基本料金割引1%上下としています。ですから、力率がもし90%だとしたら、適正なエネルギー使用量とはいえず改善する必要があるということになります。
 力率を改善するためには一般的に力率改善コンデンサを導入します。設置場所として受電点、電気室高圧母線、変圧器二次母線、負荷並列などがありますが、負荷並列は力率改善以外に変圧器損失の軽減、配電線損失の軽減、変圧器余裕、電圧降下の軽減などが期待できます。導入金額として取り巻く環境が変化する事を前提にして、回収年2年内投資とすべきでしょう。
 
※最大電力は適正であるかどうか。
 最大電力が現状の数値で適正なのかどうかを調査するには、施設のすべての電力使用機器の消費電力を把握したうえで、なおかつ適正なコントロールがされているのか検討しなければならないことになりますから、大変な時間と労力が必要になります。
 最大電力を抑制する場合、デマンドコントローラーの設置が一般的に考えられます。最大需要電力を目標値に管理する目的で開発された測定器兼警報発生装置がデマンドコントローラーで、設定した目標最大電力を超過しそうになるとアラームが作動します。この時、あらかじめ定めておいた負荷を遮断することにより電力の使用量を下げます。負荷コントロールを人為的に行うことが不確実な場合には、自動制御機器も用意されています。このことについては一般的に周知されているところですが、これらの設備について、製品の影響度又は営業上支障のない箇所を考慮しなければなりません。導入金額については力率改善コンデンサ同様、回収年2年内投資とすべきでしょう。その上で適正な最大電力を設定し、原単位の指標数値を導き出すことになります。
 このような管理をすることにより、コスト削減につながることはいうまでもありません。従業員全員に管理意識を浸透させることになりますが、経営者のトップダウンでなければ進まないのも現状です。
 原単位を指標として、自社の現状把握やそれを受けての改善行動を実施するなど、エネルギーのコスト管理を効果的に行ってみてはいかがでしょうか。
(2007年5月 vol.310)