タイトル-ビジネスレーダー
建築会社が作った木製歩行器が新しい販路を開拓
 代表取締役社長 長谷山忠誠さん
有限会社長谷山建築工業
〒015-0211
由利本荘市東由利老方字後田62-6
TEL0184-69-3311
FAX0184-69-2227
Email haseyama@h9.dion.ne.jp
URL http://www.h2.dion.ne.jp/ ~hase_t/
 
 これまで歩行器というとアルミや鉄を素材としたものがほとんどだったが、全国的にも珍しい木材で作った歩行器の商品化に由利本荘市の(有)長谷山建築工業が成功し、販路を広げている最中だ。
 (有)長谷山建築工業は、住宅建設やリフォーム、公共事業などを行うごく普通の建設会社だったが、数年前に一般住宅リフォームの仕事をした際、施工主から「段差を上れる歩行器も作ってくれないか」と依頼を受けたのがきっかけで、木製歩行器の制作に取りかかった。「初めは簡単にできると思ったのだけど、予想以上に難しく時間もかかった…試行錯誤しているうちにどんどんハマってしまって、次第に、完成した木製歩行器を製品化して売り出せないかと考えるようになった。社名は“建築工業”なんだけどね」と長谷山社長は笑う。
 同社の歩行器の特徴は、なんといっても“木製”という点だ。「家の中に置いても違和感が無く、使い心地にも木製家具のような温かみがある。さらに金属製のものより軽く、持ち運びがしやすい」。高齢者や障害者など、利用者が抵抗を感じずに使用できる商品に作り上げた。長谷山社長は、木製のメリットを存分に活かしながら安全に安心して使えるものでなければならないと改良を重ね、アルミや鉄製のものと同等の機能性を持たせることに成功した。上から体重をかけることでブレーキが作動するシステムなどの工夫、製品としての完成度の高さから、これまで『秋田県発明展』や『秋田県バリアフリー推進賞』などで表彰を受けている。また、商品化当初の歩行器が4年経った今も由利本荘市内で変わらず使用されており、耐久性も充分とのことだ。
 当初は、秋田県長寿社会振興財団などの協力を得ながら県内の福祉施設、一般家庭に向けて営業を展開していたそうだが、平成17年に当(財)あきた企業活性化センターの『目利き倶楽部』事業へ参加したのがきっかけで、介護福祉機器レンタルの大手、日本ケアサプライと商談を持つようになったのが大きな飛躍の始まりだった。プレゼンテーションや折衝を繰り返し、足掛け2年の商談期間を経て、19年4月に室内用木製歩行器の『段ら〜く5号』の販売契約を成立させたのだ。顧客からレンタル会社に注文があった数量を製造・販売していくことになるが、介護福祉機器レンタルの商品に木製歩行器が採用されるのは、他に例がないという。「製品の良さが浸透するまで時間はかかると思うが、今後、注文数量が増えることを期待している」と長谷山社長。実際に使用している方の評判も良く、木のぬくもりが喜ばれているそうだ。
 同社では、現在6種の室内用木製歩行器と、室外用木製歩行器、小児用木製歩行器を製造・販売中だ。福祉用品の大手ネットショップなどとも契約し注文を受けている。長谷山社長に今後の展望を伺うと、「大きな会社ではないので数が安定するまではこれまで通り、無理はせずにできることをやっていきたい」と語ってくれた。
 建設業の新分野挑戦。小さなきっかけが業態の変化を生み、熱心な研究が販路を広げた。介護福祉の世界に温かさを届ける木製歩行器が、(有)長谷山建築工業の介護福祉用具製造という新たなステージへと向かう歩行をサポートしていくだろう。
【事業内容】
15年10月より介護保険対象福祉用具 木製歩行器を製造・販売。
高気密・高断熱住宅を基本に施工。
●オリジナル気密・断熱パネル施工(エアーサイクル工法)●オリジナルシステム工法(高気密・高断熱・高遮音)●無落雪屋根住宅

安全のため座面は特殊塗料で
滑り止め加工がしてある。

介護福祉機器レンタル大手、日本ケアサプライに採用された『段ら〜く5号』
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県有特許の使用で経営基盤の強化につながる新たな製品開発 代表取締役 松下一幸さん
サイチ工業株式会社
代表取締役 松下一幸
(昭和29年生まれ)
会社設立年月 平成9年
資本金 1,000万円
〒013-0326
横手市大雄字上田村東193
TEL0182-56-5003
FAX0182-56-5007
URL http://www.akita-saichi.co.jp
 
 主に電子部品製造装置や各種めっき装置と付帯するめっき槽、研磨機、乾燥機、さらに環境保全に配慮した排ガス洗浄装置の製作設置など、表面処理の一貫生産体制を完全サポートし、工場の合理化、自動化、省力化の提案もさせていただいている企業です。

 創業は、農業の傍ら農業資材販売の会社に勤務していた28歳ころに、同じ大雄村(現横手市)の知人が塩化ビニール製品の加工販売をしている現場に出会ったことから始まります。その後、農業資材販売の会社を辞め、知人と埼玉県にある企業の下請けをしながら技術の習得に努め、数年後に一緒に会社を立ち上げました。
 その会社の業績を順調に拡大させることが出来たこともあって、私は平成9年にサイチ工業(株)として独立させていただきましたが、お蔭様で、製品を国内のみならずベトナムや中国(上海)の企業にも納品するまでの業績をあげるようになりました。
 ところで、私どもの属する装置・設備業というのは、景況等の影響を受けやすく、安定的な生産販売が難しい面があります。はっきり言って波が大きすぎ、当社の業績も正にそのとおりです。経営者としては、安定的に生産販売が出来る態勢を求めるのは当然の成り行きともいえます。
 当社は現在、(財)あきた企業活性化センターの支援を受けながら、新たな事業の柱となる装置の開発を行っております。この装置は、電界研磨技術を活用したガラス研磨装置(正式には電界砥粒平面研磨装置)ですが、この技術は県の産業技術総合研究センターが特許として持っているもので、従来の研磨機に比べて1/2以下の時間でガラス研磨が可能になるというものです。
 開発に至ったきっかけは、平成17年の夏ころに縁あって知り合ったソニー(株)の関係者から、ガラス研磨装置のお話を聞く機会を得、しかもそのための最新技術に関する特許を秋田県の産業技術総合研究センターが所有していることも知ることが出来たことに由来します。
 早速、県産業技術総合研究センターに足を運び相談したところ、県内企業で、しっかりとした経営のもとで製造するのであれば特許の使用を承諾しても良いとの感触を得ました。
 平成18年度から本格的に研究開発に着手したのですが、なにしろ研究開発費だけでも数千万円に上ります。当社にとっては多大な投資になるわけです。そこで、(財)あきた企業活性化センターに相談したのですが、幸いにも企業活性化センターからは、平成18年度産学官技術開発促進事業補助金(上限500万円)を適応出来るという心強いご回答をいただき、研究開発に着手出来ることになりました。
 また、平成19年3月には、東北経済産業局から「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく特定研究開発等計画の認定を受けることが出来ました。これは、国の制度で本格的な試作機の設計・製作に要する経費を委託費(国費100%)としていただける戦略的基盤技術高度化支援事業への提案の前提条件となるものです。やはり、(財)あきた企業活性化センターのご支援を受けています。現在は、この認定を踏まえ応募しているところです。今は試作機がほぼ出来上がっておりますので、本格的な製造に向けて工場の拡張などを含めて準備中です。県産業技術総合研究センターと(財)あきた企業活性化センターとの一体となったご支援には大変感謝しているところです。
 昨今の国内におけるガラス研磨に関する機械装置製造等の市場規模は約600億円程度と見込まれていますが、その10%を獲得するだけでも当社のような中小企業にとってはきわめて大きいものになります。夢は大きく見るものと信じて、着実な歩みを取り続けてまいります。
【事業内容】
電子部品製造装置、自動めっき装置、公害防止装置の設計・製造・販売
塩化ビニール製品の加工・製造・販売

フラックス洗浄・乾燥機
 
(2007年7月 vol.312)