タイトル-ビジネスレーダー
新鮮卵と卵菓子類の直営販売を、小規模養鶏場としての経営戦略に取り入れた
代表 瀧田 稔さん
「たまごの樹」
秋田市河辺北野田高屋字黒沼下堤下108-3
TEL018-882-3015
営業時間
10:00〜18:00
10:00〜16:00(水曜)
瀧田養鶏場
秋田市河辺大張野字道ノ下72
TEL・FAX018-882-3113
 
 秋田市河辺和田の国道13号線脇に「たまごの樹」という名前の瀟洒な店がある。この店は、同地区の瀧田養鶏場が直営するもので、新鮮卵とその卵をたっぷりと使った菓子類を中心に販売しており、地元をはじめ近隣の消費者から好評を得ている。
 平成16年10月に、この「たまごの樹」をオープンさせた瀧田 稔 代表にお話を伺った。

 直営店「たまごの樹」をオープンして3年目となりましたが、お陰様で順調に売上げを伸ばすことが出来ています。オープンに当たり私なりに営業業績の目標を立てたのですが、オープン1年目で3年目に上げようとしていた目標をクリア出来ましたし、3年目だけでも約40%増の業績を上げられるようになりました。私どものコンセプトを、地域の皆様をはじめとする多くの方々に理解していただけた賜と感謝しているところです。
 現在、当社の飼養規模は約3万羽で、家族的経営の限度とも考えられる規模ですが、県内でも最大規模の養鶏場は約40万羽の飼養を行っており、規模のメリットを発揮するという面からは太刀打ちできません。経営者として何もしないで黙っていれば淘汰されることは必至であり、そこで生き残るためにはどうするかということを真剣に悩み考えざるを得ませんでした。小規模養鶏場だからこそやらねばならないこと、出来ることが必ずある、との思いで考えついたのが、新鮮卵と卵菓子類の直営販売という、これまでの養鶏場経営から一歩踏み出した事業展開だったわけです。
 卵の販売といえば、スーパー等では安売りの目玉にもなり、市場価格に大きく左右される定番商品になっています。これらと差別化した卵の販売、新たな消費者市場を開拓する必要があったのです。このため、「鶏にこだわりの飼料を与えることで生み出される安全・安心な新鮮卵の開発」、「その卵を使った高付加価値加工品の開発」、「問屋を経由しない、消費者への市場価格に左右されない定価直売」の3つのコンセプトで考えました。その結果が、「24時間以内に新鮮な卵をお届けする」、「たまご菓子の開発と販売」、「そのための直営店の開設」でした。
 しかし、その中でも「たまご菓子の開発と販売」は素人にしてみれば難しいことでした。家内や長男に相談したところ、一緒にやってみようということになり、卵菓子の開発と販売を担当してもらうことになりました。折良く私の考えていることを既に展開している会社が群馬県にあることが分かりましたので、早々に研修に行って、シュークリームとプリンの製造技術を学んできてもらいました。
 そして「たまごの樹」をオープンするに当たっては、卵屋らしく普通品の2倍の卵黄を使用したこのシュークリームとプリンをメインにすることにしました。この際には、地元で販売し地元の人を中心に買ってもらわないと商売としてもうまくいかないだろうと、私や家内の友人・知人に集まってもらい、味や食感などの風味について率直な意見をもらうためのモニター会を開くなどして商品を鍛えました。そのお陰で、自信を持って販売できる商品を開発することが出来ました。商品アイテム数が増えた今でも、売れ筋の定番は新鮮卵を除くとこの二つです。
 今後の展開ですが、現在、鶏卵の販売については知人の会社のホームページを通してインターネットでも行っておりますが、今後は新鮮卵の情報提供と販売を見据えて自社でインターネット販売のサイトを立ち上げるなど検討しているところです。
 今後とも「たまごの樹」をよろしくご支援、ご愛顧を賜りますようお願いいたします。

【事業内容】
養鶏場直送の新鮮卵と卵のお菓子の販売
タイトル-ビジネスレーダー
天然酵母パンへのこだわり!
代表取締役 森岡 正裄さん
有限会社
天然酵母パン アンシャンテ
〒 010-1425
秋田市御野場新町1丁目27-17
TEL・FAX018-839-5818
 
 今回は秋田市御野場新町にあるパン屋さんをご紹介。その名も「天然酵母パン アンシャンテ」。
 このアンシャンテは、フランス語で「初めまして、とても嬉しい、満足する」等を意味し、お客様に対して、いつも謙虚な気持ちを忘れず喜んでもらえるような店にしたい、との森岡さんの思いから店名にしたのだそうだ。
 代表の森岡さんは、以前広島県内でユース・ホステル及びペンションを経営していた経歴を持っており、その頃からパン作りをしていたが、1980年に天然酵母で作ったパンと出会い、食感の違いに驚いて以来天然酵母の魅力に引き込まれたという。
 その後、故郷である秋田に帰ってきて、1998年12月に本格的に天然酵母を使用したパンの店「天然酵母パン アンシャンテ」を秋田市御野場新町の住宅地にオープンさせた。店舗は小規模だが、天然酵母はじめ徹底的に素材にこだわり、“地産の原料を取入れた、おいしい、安全なパン屋さん”を目指している。
 天然酵母の研究を続けた森岡さんは、2004年、パンの歴史を紐解き、パン酵母として最も多く使用されてきたのが“ぶどう”の酵母であることを突き止めた。そこで、秋田が世界に誇る自然遺産、白神山地に自生する山ぶどうを採取し、県総合食品研究所と共同研究を行った。その結果、パンの製造に適した新株を発見し、「世界遺産06酵母」と名づけた。
 この「世界遺産06酵母」を使ったパンは、もっちりしていて、焼くとサックリ感があり、冷凍での保存が可能。また、生地は冷蔵での保存が可能だそうだ。
 ここでパンの命ともいうべき酵母について一言。パンの酵母は大きくイーストと天然酵母の二つに分けられる。イーストは果実や穀類からパンに適した菌を採取し化学物質により培養したもので、発酵が安定していて使いやすい。一方、天然酵母は多種多様な菌を化学物質を使用せずに培養したもので、環境や製造過程の影響を受けやすく様々に変化する。天然酵母は雑菌が入ると酸味が発生し、安定した発酵ができないため、無菌状態で培養しなければならない。天然酵母を使って安定した味を生み出すには、熟練した技術と徹底した管理が必要となる。
 アンシャンテでは全国で初めて、特別の技法による山ぶどうの酵母菌の培養から種起こし、その培養した酵母での製パンまで一貫して行っている。食べ物である山ぶどうから採取した酵母のため、食品としての印象度はこの上なく高いらしい。
 しかし、この天然酵母は、採取した酵母を無菌状態の中で一定の湿度を保ちながら約5日間培養を続けなければならない。そのうえ、1回に培養できる量は少なく、同社では1日あたり食パン12斤分しか出来ない状態。この培養量を増やすことが、同社の今後の最大の課題となっている。
 この「世界遺産06酵母」は、世界遺産である白神山地から採取し、2006年に実用化された酵母という意味でこのように名付けたそうなのだが、森岡さん曰く、「今回の06酵母はまだ第一弾、パンの酵母になるものはまだまだ沢山あり、特に果物などに多く存在している。第二、第三弾を目指し、常にチャレンジしていく」そうだ。
 お近くにおいでの際は「天然酵母パン アンシャンテ」に立ち寄ってみては如何でしょうか。
(2007年8月 vol.313)