タイトル-経営さぷりメント



職場のセクシュアルハラスメントを防止するのは事業主の義務です



臨床心理士 佐藤順子
1.赤字受注は損か得か?
P(社長):甲社から既往のA製品に加えて新規にB製品の受注引き合いがありました。
C(コンサルタント):それは良かったですね。
P:それが、B製品は単価が安くて困っています。
C:なるほど。A製品は売値が100で原価が80(うち変動費50)ですが、Bの引き合い価格は売値が50なのに見積原価は60(うち変動費40)ですか、これでは完全に採算割れですね。
P:上得意なのですが、B製品は断ろうかと考えています。
C:ちょっと待ってください。工場の稼働率はこのところ70%と余裕がありますね。A製品類似のB製品の生産に機械の増設、社員の増員(つまり固定費の増加)は必要ないのではありませんか。
P:それはそうですが、作るほど赤字ではとてもやっていられません。
C:B製品の見積原価が赤字でも、この場合は工場全体の利益は増えますよ。 簡単に計算してみましょう。
原価内訳@売上高A変動費B付加価値⇒{C固定費+D利益}(=@−A)
既存A	100	50	50(100−50)	{30 20}
追加B	50	40	10(50−40)	{20▲10}
(単純化するため、製造原価を総原価とし一般管理費は考慮していません。)
 見積りの原価計算はこのとおりですが、御社の今の状況なら、B製品の追加生産に固定費の20は不要ではありませんか。そうすると付加価値増加分10だけ全体利益は増えることになります。
P:なるほど・・・
C:B製品の追加生産による固定費増加は、厳密には0ではないと思いますが、増加額が付加価値増加額よりも少なければ全体利益は増えるということです。

 生産設備や人員に余力のある場合には、個別の見積原価が赤字でも、次の式に当てはまる受注の場合は、工場全体の利益は増加する。
付加価値額の増加 ≧ 固定費の増加(付加価値額とは売上高−変動費)

ポイント2 力関係に差があるところで起きる
(1)水産加工業乙社の社員は、業務改善に熱心な社長の呼びかけに応えて、まず自分たちの仕事の見直しをすることにしました。
P:パートのAさんが大発見をしました。彼女は「エビの背筋の伸ばし器」で丸くなっているエビを真っ直ぐにする仕事を担当しています。
C:なるほど、それで大発見とは?
P:今まで思いもしなかったのですが、仕事中にふと「仕事の見直し」が頭に浮かび、頭から機械に入れていたエビを尻尾から機械に入れてみたというのです。
C:・・・・
P:そうしたら、頭から入れたエビより0.5p身長が伸びたというのです。エビは長さで値段が決まります。そこで慎重に何回も試してみたのですが、同じ結果がでました。
C:それはすごい。それで尻尾から機械に入れることに統一したのですね。
P:そうです。おかげで業績も跳ね上がっています。
C:なるほど、「小さな仕事の見直し」が大きな成果につながったわけですね。

 業務改善はいきなり大きな改革を目指すのではなく、自分の担当している仕事や、小さな身の回りのことを見直してみるということから始めます。小さな改善でも積み重なると大きな成果につながることも少なくありません。まず、実行してみることが重要です。

(2)訪問後、乙社社長と近くの居酒屋でコンサルティングの続き(懇親会)を開催。
P:この店はうちの魚を使っていただいています。
C:それで肴もお酒もおいしいのですね。それに、この店はとても気が利いていますね
P:どんなことですか?
C:日本酒を注文したら、一緒に冷たい水を持ってきましたね。
P:そういえば、他の店では頼まないのに水を持ってくることはありません。
C:水をだすと、お酒の量が増えないと考えるのが普通ですから、居酒屋で水を出さないのでしょう。しかし、水を飲むと口がさっぱりする、二日酔いになることが少ないと感じ、店のヘルシー指向を好感する客も少なくないと思います。
P:店員の提案だそうです。
C:商品(飲食物)そのものではなく、その提供の仕方で差別化するのも「ビジネスモデルによる競争優位」の有効な方法です。

 新製品開発や新技術の導入は大きなテーマですが、競争力強化の方法はこればかりではありません。製品やサービスは従来同様でも、その提供方法を工夫することで、新たなビジネスモデルを構築するのは中小企業にとって取組みやすい競争力強化策といえます。

ポイント3 組織全体の責任が問われる
P:次の株主総会で工場長と営業部長を役員に就けようと考えています。ついては2人の研修をお願いします。
C:わかりました。テーマは「役員の責任と権限」でいいですか?
P:それも大切なのですが、「役員の役目は社長の考えていることを社内に伝える」ことだということを理解させてください。
C:社長自身に代わって社長の「思い」を社内に伝えるということですね。
P:事業の展望、利益や売上げ、コストや品質などについて社長の考えを分かってくれる社員が増えて欲しいと思っています。
C:役員だけに任せるのではなく、社長自身もさまざまな機会に繰り返し社員にビジョン等を語ることが大切です。

@管理者養成とは社長が自分の分身を作ることです。
A良い企業風土とは、経営者と社員が「同一の危機感」と「共通の価値観」の二つを持っていることです。
 ・同一の危機感⇒現状打破の考え方
 ・共通の価値観⇒ものの見方、評価基準の共通性
B共通の価値観を持つには「経営理念」を作り社員全員に繰り返し語ることが重要です。

(2)社長の健康
C:社長、元気そうですね。この調子で100歳まで長生きし、いつまでも経営の第一線で活躍してください。
P:老害にならないように、健康に注意しています。
C:何か健康法を実践していますか?
P:何もしていません。「社長の健康は業績次第」です。
C:なるほど、それで最近、顔色がいいのですね。経営に全力投球することが健康にもつながっているということですね。

 社長の健康は業績次第とは、ある顧問先の社長から聴いた言葉です。
 中小企業の経営者の本音だと思います。
 経営も健康もサプリメントに頼りすぎず、日常活動や食事に気配りすることが大切です。
(2007年12月 vol.317)