タイトル-ITコラム
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のビジネス活用
Profile:株式会社秋田銀行 審査部 荒牧 敦郎 (ITコーディネータ・中小企業診断士)SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のビジネス活用
1 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)とは?

 「ミクシィやってますか?」
 私が知人からそう尋ねられたのは、数年前のことです。その時はその存在を知らず「ミクシィって何だろう」としか思いませんでしたが、昨年、友人からの招待で私もミクシィ(mixi)に参加しました。これを読まれている方の中でも、参加している方がいらっしゃるでしょう。
 mixiに代表されるインターネット上のコミュニティーを総称してSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)といいます。日本での最大手mixiは1,000万人の会員を擁していると言われますし、アメリカ最大のSNSであるMySpace(マイ・スペース)の参加者は一億人を超えています。
 SNSで何ができるかというと、自分のプロフィールや日記を公開して情報発信を行ったり、知人の日記にコメントを書いたり、また趣味・関心を同じくする人たちと一緒に内部コミュニティを作って意見・情報のやりとりをしたりという事が可能です。SNSの参加者たちは、このような機能を使って、SNS内の友人・知人とコミュニケーションをとったり、新しい友だちを増やしたりしているのです。

2 SNSをビジネスに活用

 このSNS、ネット上の友だち作りという個人的な趣味の世界のツールと思われがちですが、実はビジネスのツールとしても活用されています。
 私の知り合いが経営しているIT企業では、SNSの中で社員を募集しました。そして、目的にかなった人材を採用することができたということです。これはSNSの特質を良く活かした事例だといえるでしょう。すなわち、参加者が多いという点と、その中で何らかのつながりを持っている人たちの「口コミ」をうまく活用できたということです。SNSを利用することで、現実の世界で口コミを頼りに人材捜しをするよりはるかに効率的に目的を達成することができたというわけです。
 人的ネットワークを作るというSNS本来の目的に着目し、現実のビジネスに活かせる人脈をSNS上で作るという方法も考えられます。
 これには、内部コミュニティを活用する方法が有効でしょう。ビジネス上の課題・問題をテーマにしたコミュニティを作れば、そのテーマに関心のある社外の人たちと意見交換ができ、それが現実の仕事にもつながる人脈に育つ可能性があるのです。ひところ異業種交流会という集まりがブームになりましたが、SNS上では容易に異業種交流会を開催することができるのです。
 またマーケティングにおけるSNSの活用も考えられます。たとえば、mixiでは「商業用の広告、宣伝」は禁じられています。したがって、あからさまな広告を行うことはできませんが、マーケティング上有益な情報を収集することは可能です。えたとえば、日記に自分が行った仕事について記載し、それに対する知り合いのコメントによって他人の考えを知ることができるでしょう。
 また、コミュニティの利用も効果的なマーケティング・ツールとなり得ます。私が知っているSNSのコミュニティにある料理屋のファンが集まるところがあるのですが、このように自社や自店のお客さんをメンバーとするコミュニティがあれば、そのメンバーとの意見・情報の遣り取りの中で、顧客が求めていることや不満、評価を知ることができます。

3 新しいSNSを作る

 mixiのような既存のSNSを利用するという方向以外に、新しい自前のSNSを作ってビジネスに活用するという方法もあります。SNS構築のソフトウェアが開発・提供されたことにより比較的簡単にSNSを作ることが可能となりました。
 実際に行われている例としては、自社の社員や就職内定者、退職者を対象とするSNSを作り、社員や就職内定者・退職者間のコミュニケーション・ツールとする事例があります。職制上の情報伝達の制度の外にいわばインフォーマルな情報交流の場をつくり、社員などの一体感を醸成しようという目的を果たそうとするものです。
 また、自社の顧客や潜在的な顧客(これから顧客と成り得る人たち)をメンバーとするコミュニティを作るために自前のSNSを利用するという事例もあります。前述のようにmixiでは、商業上の広告、宣伝が禁じられていますが、自社で作ったSNSならばマーケティング・ツールとして自由に利用できるという訳です。ある程度の参加者数を確保することが前提となりますが、現在の顧客や潜在的な顧客と密度の濃いコミュニケーションを行うことにより、マーケティング戦略上きわめて有益な情報を収集できるでしょう。
 身近になってきたSNS、ビジネスへの応用を考えてみてはいかがですか?

  
(2008年2月 vol.319)