タイトル-ITコラム
IT投資とTCO(TCO削減するには…)
Profile:株式会社アキタシステムマネジメント 鈴木 暁(ITコーディネータ)IT投資とTCO(TCO削減するには…)

 先日経済産業省より平成19年の「特定サービス産業動態統計調査」が公表され、情報サービス業の売上高は前年比102.2%と昨年(平成18年104.6%)に続き売上げ増加という結果が出ていました。その中で「受注ソフトウェア」の割合が59.4%、ついで「ソフトウェアプロダクト」(下記表では「ソフトウェア開発」に含まれています)13.1%、「システム等管理運営受託」12.8%という構成結果となっています。

 今回はこの(システムに関わる)コストの観点から記述したいと思います。
 システム投資にあたり考慮しておきたい点としてTCO(Total Cost of Ownership)「総保有コスト」があります。TCOとは、導入費はもとより運用・維持などにかかる費用(電気代、設置場所にかかる費用、システム管理者の人件費、アップグレード費、有償サポート費などのランニングコスト)、システムダウンなどによる業務上の損失費や復旧対応費などシステムを運用していくのにかかる全てのコストが含まれます。
 システム投資ではハードウェア購入費、システム購入費(アプリケーション開発費)などの初期投資に重点がおかれる傾向があります。TCO全体を考えておかないと導入後にかかるコストが予想外となってしまうため、システム運用費が予想以上に高いという感覚に陥ってしまいます。昨今、TCOの削減を目的としたソリューションも多く見受けられます。

TCO削減のポイント

【初期(導入)コストの削減】
 TCO(初期コスト)の削減のソリューションとしてはOSS(オープンソースソフトウェア)の活用などいろいろなものが提唱されています。ここではシステム要件の無駄を省くことを考えてみましょう。
 要件をとりまとめていると理想が膨らみ、「重箱の隅をつつく」ようなレアケースや、実際に業務上発生しない「もしもこのようなことをされたら」といったケースなども頻繁に話し合われます。もとより何も考えていないよりは良いのですが、上記のような要件はシステムのライフサイクルや業務との整合性を考えると、システム要件から取り除くことができたりするものです。実際にリリースされた後に日の目を見ない機能だとしても要件にあれば開発者はそれを作成・納品します。しかし、「本当にこの機能は必要なのか」、「もし必要であれば後で機能追加すればよい」くらいの考えで初期コストを抑えることが得策と考えます。

【TCO算出】
 先述したとおり、システム導入にあたり、初期導入コストに比べ軽視されがちです。リース料やハードウェア保守料、ソフトウェアライセンス料等の直接的な費用のみがランニングコストとされ、電気代やシステム管理者の人件費、システムダウンや障害による損失などTCO算出のための重要な要因が見落とされがちです。

 たとえばPC1台をとっても以下のようなコストがかかります。
設置場所、ハードウェア、ソフトウェアなどの物件管理
導入ソフトウェアのライセンス管理
OS・ソフトウェアのバージョンアップ・SP適用など
ユーザー対応(教育、質問の受付・調査・回答など)
PC障害によるOS・ソフトウェアの再導入などの復旧作業
資産管理(リース、減価償却など)
移設、人事異動に伴う設定変更 など

 まずは、現実に即した形でのTCO算出がTCO削減への最重要要件となります。

最後に
 IT運用におけるTCO削減は重要な課題と言えますが、ITサービスレベルの低下を招くようではTCO削減は考えられません。サービスレベルの向上とTCO削減が一体となり、より良いIT活用が得られると考えます。是非TCOの観点からIT投資を見直してみてはいかがでしょうか。

  
TCO削減のポイント
 
(2008年3月 vol.320)