経営さぷりメント
販路拡大のステップアップと受発注商談会

稲葉 順一

稲葉 順一
●経営コンサルタント
有限会社北日本マネジメント代表取締役
(財)あきた企業活性化センター専門アドバイザー


中小企業の長期安定と成長を願って

 顧客や発注企業の真のニーズがつかみにくくなってきている現在、戦略的に取り組まなければならないのが情報収集と販路拡大です。なぜなら消費者等顧客の欲求が細分化してきた結果、マーケットもセグメンテーションされ、同業他社に対して差別化していかなければ経営目標の一つである「企業の長期安定と成長」が見込めないからです。
 そこで、何をもって同業他社と差別化を図るかというと、それは経営資源ですが、経営資源には4つの要素があります。ヒト、モノ、カネが有機的に結合され、そして忘れてはならないのが情報です。物不足の時代であれば、たったひとつの情報で付加価値のある取引ができましたが、競争の激しい現在では価値のある情報を探し当てるのが大変な時代となっています。
 常にその標的市場となる商圏や企業の動向・発注情報等にアンテナを張り巡らせることが重要なのです。本稿では一連の営業活動において販路拡大のステップ・アップをご紹介します。

 

販路拡大のステップ

第1ステップ

 第1ステップは、見込企業を見つける段階です。新規開拓の場合は見込企業を探し出すことから始めなければなりません。これをターゲットの絞り込みといいます。
 マーケティングや営業活動において、見込企業を見つける調査段階ではデータ分析やリサーチは避けて通ることができません。通常、これらの情報となる外部データの入手は、業界団体や各種企業名簿、業界誌や業界新聞、同業他社や取引先、インターネット、調査会社等から有料で収集します。
 当財団では、毎年2回、広域アドバイザーの首都圏発注企業訪問活動により発注案件の確保、発注案件の拡大に努めており県内登録企業の皆様へ発注開拓企業に関する情報の提供や発注企業への同行訪問等、新規の受注機会の確保につながる活動を積極的に実施しております。
 この首都圏発注情報報告会等において収集された発注開拓企業データを分析し、自社の標的市場やターゲット企業の情報収集を継続していくという姿勢が大事です。これらの発注開拓データは、第一線の社長や営業マンが苦労して足で稼いで集めてきた情報ではないため、ややもすると過小評価されがちですが、適切に用いれば非常に有効な情報源となります。具体的には発注開拓企業データ等はABC分析でランク付けします。

第2ステップ

 第1ステップで探し出した見込企業と初回面談するという段階ですが、第2ステップでは見込企業と面談の約束を取り付けなければなりません。
 企業の新規開拓方法には「飛び込み営業」、「電話営業」、「ダイレクトメール」、「展示会の出展」、「ルート営業」、「紹介営業」等があります。営業担当者の悩みのひとつである新規開拓について初回面談が難しい理由は、

(1)「飛び込み営業」の場合… 

アポなしは門前払い。担当者やキーマンと面談できない。面談できるまで年月を費やし効率が悪い。

(2)「電話営業」の場合… 

キーマンに取り次いで貰えない。知名度が低く相手にして貰えず断られる。居留守を使われる。

(3)「ダイレクトメール」の場合… 

会社案内等を同封しても処分される。キーマンに届かない。忙しい為、読んでもらえない。

(4)「展示会出展営業」の場合… 

キーマンと出会う機会が少ない。但し他社で取り扱っていない製品、特殊技術、特殊製作等でセグメントしている場合は効果がある。

(5)「ルート営業」や「紹介営業」の場合… 

情報待ちになるが、面談効果は最も高い。

 当財団では、平成19年度に受発注商談会を年3回開催し、7月は「青森・岩手・秋田3県合同商談会」、11月は秋田市において「受発注広域交流商談会」、今年3月には「あきた・大田区共同受発注商談会」を開催致しました。
 受発注商談会は見込企業と会って面談し営業効率を高めるメリットがありますので、営業活動の時間や日数、情報収集面でのロスを圧倒的に短縮できます。営業効率は面談率が高いほど良いので、次の公式で算出すると商談会の面談率はとても高くなります。

面談率=面談件数÷(見込企業件数、又は予定面談件数)

第3ステップ

 第2ステップの初回面談に対して、第3ステップでは2回目以降の面談で見込企業のニーズを把握すると同時に、そのニーズに対して品質、納期、コスト、技術的条件、受注量やロット、生産能力、機械設備、支払条件、距離的条件、経営管理能力等のどの部分が阻害要因になっているか把握します。
 受注阻害要因はタイミング的に対応できない場合と、現状の自社能力では対応できない場合があります。自社能力が不足の場合は、今後、能力不足を補うことで受注先の拡大や自社の技術的成長が見込めるかどうかを検討することが必要です。

第4ステップ

 第4ステップはニーズの提案をする段階で、発注案件の見積りを採り付けたいところです。この段階では自社製品や加工技術である強みを説明します。提案用ツールとして会社案内はもちろんのこと、試作部品や加工技術等を撮影したものやデータをファイリングし、常に自社製品、加工技術、機械設備等は最新に差し替え、インパクトを与えるものに工夫し変えていくことをオススメします。見積率は次の公式で算出します。

 見積率=見積件数÷面談件数

第5ステップ

 商談会においては見積り後、受注側・発注側が共に連絡をしないという事例が少なくありません。継続的な取引口座の開設に向けて努力してきた集大成として、受注阻害要因を排除し成約を決意させることが、営業マンとして最も重要な業務です。

第6ステップ

 契約成立後は生産開始、製品を納品、代金回収で一連の商取引が終了しますが、代金回収ができない事例も報告されております。試作品や少額であっても、必ず、基本契約書・注文書を取り交わすことが必要です。成約率は次の公式で算出します。

成約率=成約件数÷(見積件数、又は面談件数)

●おわりに
 科学的手法では営業は確率です。
 自社に合った確率データを営業改善に活用します。そして受発注商談会や各営業方法を組み合わせた効率のよい営業活動を展開することです。また、効率のよい営業とは営業ステップを改善し短縮することですから受発注商談会は効率の良い営業ステップです。是非、顧客獲得と受注拡大のステップ・アップを図ってください。

効率の良いステップ

 


 

 

2008年5月 vol.322
 
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財団法人秋田企業活性化センター