ITコラム

彼を知り己を知れば百戦 危うからず

 巷では、“「だから、B型だ」って言うな!―愛すべきB型人間の恋愛、結婚、仕事”(主婦と生活社)という本が売れているとのことでした。B型は、「飽きっぽい」「自己中心的」「忍耐力がない」等々あまり良い印象がないようです。私も様々な場面で「やっぱりB型だ」と言われ続けてきました。占いの多くは生まれた時点で決定される血液型や生年月日をもとに占いの結果を出します。占いを統計学と捉えるとある程度は納得できますが、そもそも生まれた時点で個々人の性格が決まるものなのかという疑問を持っておりました。私自身は「三つ子の魂百まで」ではないですが先天的なものと後天的なもので性格が決まるものではないかと考えておりました。
 現時点での考え方を図るツールとしてハーマンモデルがあります。ハーマンモデルとは、ノーベル賞受賞学者の大脳生理学理論を起源とする「脳」の研究をベースにした、人間の「脳」の思考プロセスにおける傾向(思考スタイル)を明らかにするツールです。
(ハーマンインターナショナルWebサイト http://www.herrmann.co.jp/)
 人は、手には利き手、足には利き足、目には利き目があるように脳にも利き脳があるという考えから、大脳と辺縁体をそれぞれ右脳と左脳に分けて4つの領域に脳の働きを割り当てて、脳の働きの中で得意な思考スタイルを可視化するものです(図1)。可視化する際には、いずれかのタイプに分けるのではなく、どのタイプの傾向があるのか「利き脳」の状態(コントラスト)を表します。「良い←→悪い」「正しい←→間違い」「優れている←→劣っている」を表すものではありません。
 図1:全脳モデルの例では、赤線で示した形からD、CタイプのほうがA、Bタイプよりもコントラストが大きいことを示しています。全体論が好きで革新的なことを考え、対人関係を重視するが分析や数値化することと人に指示されて計画通りやることを好まない傾向が見えます。この思考タイプを持つ人を配置する場合に、どのポジションが良いでしょうか?たとえば、品質管理部門に配置したとします。設計書通りに製造され誤差の範囲かどうか調査し納期までに出荷するために計画し品質をチェックしなければなりません。数値化、指示、計画通りの思考スタイルを持たないタイプには苦痛かもしれません。また、創造的、革新的な検査方法を見つけるかもしれませんが、それが正しいかどうか分析しないまま実行するかもしれません。そうなると本来やらなければならない品質管理ができなくなります。このタイプは企画部門や営業部門の方が力を発揮できると考えられます。
 また、企業では個人ではなく複数の人間でチームを組んで仕事をしています。仮に新製品開発の部署を立ち上げようとした場合には、どのタイプを集めると良いでしょうか?最初はDタイプの人に自由に発想させると良いでしょう。ただし、Dタイプの人は夢見がちで事実を無視して考える傾向があります。その場合は、Aタイプの人の意見を聴いてみると良いでしょう。ただし、Aタイプの人は数値や事実を重視するあまり、まわりの人のことを考えない傾向があります。そこでCタイプの人の意見を聴く必要があります。Dタイプの人は、AタイプとCタイプの意見を聞いた後に統合化、概念化して企画をまとめ上げます。どのように新製品を開発するかの計画はBタイプの人に任せて計画し実行していくことで、メンバーの長所を組み合わせて仕事を進めることができます。
 大風呂敷を広げる人と忠実に計画管理実行する人の間では、意見が衝突することは良くあることです。これは、思考スタイルの違いから生じることで、お互いの思考スタイルが違うことを認識すると相手の考えを受け入れやすくなります。また、自分に不足している考え方が何かを認識すると、考え方の幅が広がり複数の視点で物事を見ることができるようになります。更にチームで仕事をするときには、異なるタイプの思考スタイルを理解することで自分に不足している考え方を補完してもらうことが可能となります。
 「彼を知り己を知れば百戦危うからず」という有名な言葉がありますが、経営者としては己を知った上で社員を知り、最適な人的リソース配分が必要であると考えます。


(2008年6月 vol.323)
 
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