経営さぷりメント
コンプレッサー・ボイラーの省エ

堀川 義春
●秋田県商工会連合会
  エキスパート専門家


 平成19年の5月にエネルギーのコスト削減の指標としての「原単位管理について」「力率の適正」「最大電力の適正」について寄稿いたしました。
 昨今の燃料費の高騰等、企業にとってコスト削減は経営に直接関わる重要な課題といえます。そこで今回は、より具体的に「コンプレッサーの省エネ」「ボイラーの配管保温による省エネ」について解説いたします。参考にしていただければ幸いと存じます。

 工場・事務所等で、「節電」などの張り紙をよく見かけます。しかし、「この電気を1時間節電すればひと月に何円削減になります」と具体的には表示されていません。実は、省エネに必要なことは、数字で表して理解・納得してもらうことなのです。

コンプレッサーの省エネについて

 コンプレッサーの使用用途は企業によってさまざまですので、一般的なところで、注意が必要な管理事項と吐出圧力の低減による効果を解説いたします。

〈管理事項〉
1.配管からの空気漏れ
 コンプレッサーの配管から空気が漏れると、当然圧縮空気の無駄であり、圧の低下にもつながります。
2.吐出圧力の適正化
 通常5kgf/cm2〜7kgf/cm2の吐出圧力が適正とされていますが、配管圧損等の再確認が必要です。
3.設置場所・設置台数
 適正な設置場所(配管が複雑にならないように)、設置台数(使用用途に見合っているか)の検討が必要です。
4.点検・清掃等
 使用前点検表はあるのか、清掃の管理者は誰なのか、具体的に取り決めされているでしょうか。

〈吐出圧力:現状9kgf/cm2から6kgf/cm2に低減した場合の削減金額〉
1.条件
 コンプレッサー100kw、負荷率80%、高圧受電A、力率100%、その他季(10〜6月の電気料率)、1kgf/cm2削減消費 電力7%、運転時間1000h/年とした場合
2.計算
 基本料金:100×0.8×0.21×1200×0.85×12ヶ月×1.05(消費税率)≒210,000円
 電気料料金:100×0.8×0.21×900×9.71×1.05(消費税率)≒150,000円
 年間電気料金削減額:210,000円+150,000円=360,000円

 単に吐出圧力を低減すれば良いというものではないのですが、削減額を確認することにより検討材料になると思います。

ボイラーの配管保温による省エネについて

 ボイラーについても、その燃料はさまざまですので、ここではA重油を使用しているボイラーの配管保温の省エネ効果について解説したいと思います。

1.条件
 (1)裸配管部分20m(40A放射削減量270/hm)、裸バルブ5箇所(裸配管の1.2倍)
 (2)蒸気圧力5kg(158度飽和蒸気)、蒸気使用時間5h/日×260日、効率0.85
 (3)A重油小型ローリー仮定価格70円/r、発熱量8,700kcal

2.計算
 (1)裸配管換算放射量 (20+5×1.2)×270≒7020kcal
 (2)A重油発熱量 0.85×8,700≒7,395cal
 (3)燃料代削減量 (7,020×5×260)÷7,395≒1,234
 (4)燃料代削減金額 1,234×70≒86,380円(年間)

3.保温工事費用
 (1)裸部分の表面積 0.4×(20+5×1.2)≒10.4cm2
 (2)断熱材塗布費用 3.31cm2≒60.000と仮定
           3.31:10.4=6:X
           X=192,000円
 (3)費用対効果 192,000円÷86,380円=回収2.2年

 配管の保温をすれば燃料削減につながるというのは誰でも分かることですが、こういった試算をすることで、具体的に削減金額がいくらになるからどうしたら良い、などの検討ができる訳です。また、投資する場合は、その費用対効果を考えることも当然ですが、取り巻く環境の変化を前提にして、回収2年内を目途にした投資とすべきでしょう。


 

 

(2008年6月 vol.323)
 
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