経営さぷりメント
コンプレッサー・ボイラーの省エ

石川 聡
●秋田銀行 営業支援部上席副長
CFP(日本FP協会認定)

 

日々のビジネス活動のなかで、マーケティングという言葉はよく耳にするキーワードです。県内の中小企業者の皆様も、マーケティングを理解し、実践している方も多いと思いますが、一方で、言葉としてはとらえていても、実際にはあまり意識していないケースも多いのではないでしょうか。
 マーケティングは、事業活動に重要なことは言うまでもありませんが、ここではマーケティングの基本的意味を再確認し、より身近なものとして、分かりやすい形でとらえてみたいと思います。

1 マーケティングとは?(その1)

 マーケティング発祥地であるアメリカのAMA(アメリカマーケティング協会)によると、「マーケティングとは、個人や組織の目標を満足させる交換を創造するために、アイデア、商品およびサービスについての着想、価格設定、プロモーションおよび流通を計画し実施する過程である」となっています。
 また、JMA(日本マーケティング協会)によると、「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的な活動である」と定義づけています。
 いずれも、文章にすると、少し分かりづらい感はありますが、言い換えると、「顧客が真に求める商品・サービスを作り、届ける活動」全体を表す概念ということができます。

2 マーケティングとは?(その2)

 マーケティング(Marketing)の単語を
分解すると、次のようになります。

 つまり、マーケティングとは、そのマーケット(市場)に対して、何らかの働きかけをすることと理解できます。
 マーケティングをより簡単にイメージするために、池での釣りに例えることがあります。上記にあてはめると、マーケットは池(魚)で、働きかけは釣りになります。 
 事業者は釣り人で、池(マーケット)に釣り糸を垂れるわけですが、魚が一匹もいない池では釣れるはずはありません。ターゲットとする標的(魚)を明確にし、池(マーケット)の調査を行い、魚がいるところに釣り糸を垂れるべきです。仮に魚がいるか分からないケースでも、さまざまな情報収集により、マーケットの大きさ(魚がどのくらいいるか)等をリサーチし、その仮説に基づいた行動が重要です。実際に行う日々の事業活動は、その仮説を検証するためのものです。
 万が一、魚が釣れない時は、もう一度その計画・仮説を見直し、そして実行し、また結果によって見直すことになります。これは、まさに、経営活動の基本となるマネジメントサイクルを意味します。

3 マーケティング戦略

 企業経営、マーケティングは、企業間競争を勝ち抜くための技術であり、それを具体化するには戦略の構築が必要です。戦略は、組織の長期的大局的な活動計画であり、企業の経営目標と密着した関係にあります。企業の経営目標は、成果の具体的な指標であり、戦略はそのための方向づけということになります。
 マーケティング戦略立案の一例としては、次のような流れになります。

(1)マーケティング環境分析

 経営環境分析の基本に「SWOT分析」があります。

 自社の外部環境と内部経営資源を分析するための最も基本的なフレームワークで、企業を取り巻く顧客・競合企業・経済・法規制などの外部環境を把握し、自社にとっての機会と脅威を分析します。
 内部経営資源分析では、ヒト、モノ、カネ、情報に代表される企業内部の経営資源を分析し、自社の強みと弱みを把握します。

(2)ターゲットの明確化

 環境分析のなかで、事業活動のマーケットでの機会(チャンス)と問題点(リスク)を把握し、長所、短所を踏まえ、マーケットにおける最適な行動を考えます。自社が有利に展開できるマーケットを明確化したうえで、具体的な方策を検討します。

(3)マーケティングミックス

 マーケティングの基本として、必ずでてくるキーワードに4Pがあります。

 マーケティングの4Pとは、「顧客にとってよりよい製品やサービスを、適正な価格で、効果的な販売チャネルによってより多く販売し利益を得る」ことを実現するための4つの要素です。
 マーケティング活動を行ううえでは、4Pの要素がそれぞれ単独で存在するわけではなく、よりよい形で組み合わせて、「顧客満足度を高める」「利益を増加させる」ことを実現させていく必要があります。
 マーケティングミックスは、4P(製品・商品、価格、流通、販売促進)の4つの要素を最適に組み合わせるという考え方です。

4 中国古典に学ぶ

 中国の古典で、名君の誉れ高い唐の二代皇帝・太宗(李世民:在位626〜649)とそれを補佐した名臣たちとの政治問答集に「貞観政要」があります。太宗は、唐王朝300年の基礎を築いた名君として「貞観の治」として称されています。
日本でも、北条政子、徳川家康が愛読していたことでも有名ですし、明治天皇が深い関心を寄せられたと言われています。
その一節に、「君は船なり、人は水なり」という問答があります。これは、人民を豊かにしないと、国は乱れるといった意味にとらえますが、これは企業経営・マーケティングにもあてはめることができると思います。
 君を企業(事業者)、人を顧客と置き換えてみると、「企業は舟なり、顧客は水なり」となり、顧客ニーズを把握し、それに基づいた企業経営を行わないと、企業の存続は危うくなることを意味します。高度化・多様化する顧客ニーズを把握し、顧客側の視点にたって事業活動を行うことは、継続企業(ゴーイング・コンサーン)としての重要な要因であると言えます。

5 最後に

 マーケティングは、行動科学の学問に入り、社会学・経営学といった領域になります。
マーケティングの「神様」と言われるアメリカのフィリップ・コトラーの著書をはじめ、書店には多数の専門図書があります。マーケティングは、身近なものになりつつありますが、実はマーケティングの統一された見解は少ないのが現状です。マーケティング自体が広範囲な分野から成り立っており、時代、市場、企業等によって、その有効なマーケティングのあり方が異なるためです。
私自身も、日常業務のなかで、企業診断、商圏分析等、マーケティングの概念を実務に活用するよう心がけています。新たな事業展開や、既存事業の見直しをはじめ、日々の事業活動のなかで、マーケティングを意識していかなければならない時代であることは間違いないと思います。


(2008年7月 vol.324)
 
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