特集1

業種の壁を越えた連携で新ビジネスをつくる!あきた産学官連携フォーラム2008開催概要


 今年度のフォーラムは「業種の壁を越えた連携で新ビジネスをつくる!」というテーマのもと開催させていただきます。製造の海外移転、商店街の不調、アメリカ発世界同時不況の影響など、地域産業の活性化に早急な対策が求められるなか、農、商、工、食、医、観光まで、異業種が連携して新ビジネスを作り出す可能性を示していきたいと思います。また、2007年に地方再生戦略が策定され、農商工連携による地域産業の活性化プログラム、88件が認定され、秋田県からは本日ご講演いただくポークランドグループ様が選ばれています。このような背景から、今回のフォーラムは非常に意義あるものと思います。講演を引き受けてくださった講師のお三方に、お礼申し上げます。また、このフォーラムがご来場の皆様のお役に立てば幸いです。

背景

  経済停滞地域が増え、更に金融危機の影響が出るなど、厳しい状況が続くなか、東京や愛知の好調に比べて地方の低迷が拡大している。
  内需の拡大が求められ、公的補助金も、産学官連携など、地域の力を結集させる優れたビジョンに交付されるものが増えている。また、地域再生のため、ビジネスリーダー育成に向けての教育プログラムが計画されている。
 一方、食の問題が注目されている。安全と考えられていた生協も例外では無く、より地域に密着して食の安全に貢献しなければと議論されているところ。地域再生にも、食と農の連携、食の安全確保、自給率を高めるなどの取組が必要だ。
 社会主義の変様、生産の海外移転などの経済のグローバル化、少子高齢化による生産能力低下、財政依存による財政危機、中小企業数の減少により、地域間の格差は1990年代から拡大し続けている。人口減少と市場縮小の悪循環により、限界集落などの問題地域が拡大している。こういった地域では、新たな移出を創出し、域際収支の赤字を解消しなければならず、秋田県もこういった問題が当てはまるだろう。
 こうした問題の解決に向け、産学公の連携は、地域が能動的に動かないといけない。

新産業の創出

  新産業の創出、移出の強化、既存企業の新事業進出・転換と創業の促進が地域再生の方法として考えられる。
  新産業の創出には、「作ってから売るのではなく売れるものを作る」という市場志向を持つこと、大学を活用し知的財産を開発すること、前方連関効果と後方連関効果に配慮し新しいビジネスモデルを構築すること、などのポイントが役立つ。たとえると、前方連関効果とは、柚子をジャムやジュースに加工して売ることで、後方連関効果とは、柚子の栽培に使用する肥料を生産すること。

産学公連携のポイント

  新産業の創出には、産学公連携が機能する。産学公連携には、円滑な連携を可能にするプラットフォーム組織と、連携の方向付け、参加者の信頼関係を築き、組織と事業をマネジメントする有能なマネージャーが必要になる。
  産学公連携は、地域力を明確なビジョンの元に結集させ、地域のビジネスリーダーを育成することができる。産学公の固有の使命・役割を尊重しながら、一致できるところで連携しよう。
  ターゲット産業を絞り込んだ政策としてビジョンを提示し、クラスターを形成し、「農商工連携の意義」と「需要側の発想」を持って取り組む。公には、政策構想力の向上が期待される。

  ポークランドグループは平成7年2月に設立され、養豚事業を中心に、現在94名が農業(畜産)に従事し、年間11万頭出荷される「十和田八幡平ポークSPF桃豚」を生産・販売。薬品を使わずに健康な状態で豚を育てることで、安全で安心できる美味しい豚肉の生産を目指している。病原菌を持ち込まないために、入場時の消毒などの衛生管理を徹底して実施している。

アニマルウェルフェア

  新たに、バイオベッド(発酵床)による養豚施設を建設した。腸内の優良細菌を育むBM完熟堆肥を含む、踏み込み発酵床は、ふかふかのベッドのようで、豚のストレス軽減にも役立っている。通常の豚舎も広々と造り、豚が駆け回れるように配慮している。食べられてしまう家畜も、生きている間はストレスの少ない幸せな環境で過ごして欲しいという、アニマルウェルフェア(動物福祉)の可能性を追求した取組の一つ。

地元資源の循環

  豚の糞尿は、かつて農家が豚を一頭ずつ飼育し堆肥に活用していたのと同じように活用し、当グループの有限会社小坂クリーンセンターで、町内の生ゴミとともに堆肥へと加工している。その堆肥を地元農家へ販売し、「化学肥料の使用を減らせた」という声をいただいている。

ICタグによる個体管理

  トレーサビリティに関する取組は、富士通さんと共同で、豚の耳に装着したICタグで、きめ細かい個体管理を実践している。エサを食べるための通路を通るだけで、計量とデータ登録ができるようになっている。いつ生まれたか、いつ豚舎を替えたか、何を食べたか、治療歴までも一頭ずつデータ管理している。このシステムにより、豚の健康と適切な出荷時期の管理ができる。

  小坂町の休耕田の多さを解消したいと、地元稲作農家と共同で飼料米の作付けも行っている。豚の飼料の約10%を米にして、関東圏で「日本の米豚」というブランドで発売している。
  今後は、廃校と耕作放棄地を活用して有機農業を教えるオーガニックアカデミーを作り、若者の就労につながるような新しいビジネスに育てたいと考えている。私たちポークランドグループは、これからも、農業でご飯を食べれるような仕組みづくりをしていきたい。

背景

   「観光」の語源は、儒教の教えの一つ「国の光を見るのは、もって王たるの賓によろし」という言葉に由来。日本で現在の意味で観光という言葉が使われたのは、昭和28年に、外国人に日本を見てもらおうとした取組が最初。
  今年10月に観光庁が新設され、観光がますます発展する期待が高まっている。観光立国推進基本法、観光立国推進基本計画が制定され、観光立国の実現は地域経済の活性化、雇用機会の増大、国民の健康の増進、潤いのある豊かな生活環境の創造に資するとされている。外国人観光客1000万人を目指すビジットジャパンキャンペーン、2000万人の海外旅行者を目指すビジットワールドキャンペーンもあるが、金融危機の影響も大きく、厳しい状況となっている。少子高齢化が進み、日本人だけでは国内産業の維持は難しくなってくる。外国人観光客を誘致することが大事になってくるのではないか。

観光ニーズの変化

  日本人の観光は、団体から個人・小グループ、宴会・周遊型から体験・学習型に変化している。
  日本観光協会の調査によると、同行者数は減少、宿泊数平均は1.6泊。
  これらの状況から、地域の資源を見直し、新しい観光メニューを開発し、情報を発信していくことが地方の観光振興に必要になってくるだろう。地域の人しか知らないようなポイントが観光メニューになりうる。従来の地理的な狭い枠にとらわれず、近隣地域と連携し広域的に観光資源を組み合わせ、補完し合うことで、観光客のニーズに応える観光地づくりをすることができる。
  他地域からの視点を取り入れて、観光資源の見直しをするべき。強力なリーダーが思いきり働けることも成功には不可欠だ。(例)湯布院、草津
  最近は、農林水産業、製造業、サービス産業、あらゆる業種が観光業に関わっており、裾野の広い産業であることが分かる。今は、有名な温泉があるだけでは観光客は来ない。現状を把握し、地域の住民も一緒になった「住んでよし訪ねてよし」の観光地づくりが求められる。

ニューツーリズム

  新しい切り口の観光として、ニューツーリズムがある。ヘルスツーリズム、エコツーリズム、グリーンツーリズム・・・それぞれ明確に区分されているわけではなく、重複する部分も大きい。

産業観光

  産業観光もニューツーリズムのひとつ。フランスで、産業製品の輸出を伸ばすために工場の見学ツアーを行ったテクニカルツーリズムが始まりで、日本では、名古屋などのものづくりが盛んな地域で推進が始まっていている。
  産業観光は、歴史的文化的価値のある産業文化財(産業遺構)や工場・工房及び経済製品、コンテンツなどのソフト資源を新しい観光資源とする観光形態であり、それらの価値や意味、面白さに触れることにより、人的交流を促進するもの。「テーマ性・趣味性が強く、知的好奇心を満たす」「持続可能な地域づくりになる」「見る・学ぶ・体験するの三つの要素を備える」「ふれあい満足(交流欲求)を満たす」といった特長がある。
  産業設備、製品から運河や鉄道などの産業・土木系インフラも観光資源になる。(例)小樽運河、横浜のレンガ倉庫群、北九州市、名古屋市、八戸市の漁業、会津若松の伝統工芸、台東区の提灯工芸、大田区の町工場群
  秋田にも、油田など珍しい資源がある。整理して磨けば産業観光のメニューになるのではないか。

ヘルスツーリズム

  ヘルスツーリズムは、自己の自由裁量時間の中で、日常生活圏を離れて、主として特定地域に滞在し、医科学的な根拠に基づく健康回復・維持・増進につながり、かつ、楽しみの要素がある非日常的な体験、あるいは異日常的な体験を行い、必ず居住地に戻ってくる活動。高齢化の進行、スピード化と情報化などによるストレス増大、生活習慣病への意識向上などを背景に、需要は高まってくると思う。(例)北海道のスギ花粉療養ツアー、脳トレツアー、ペット診療ツアー
森林浴+ストレスに関する数値測定、温泉+効能に関する数値測定というように、楽しみの要素に医療的要素を合わせることで観光メニューを作っていけばいい。滞在型の観光が可能になり、泊数の増大が期待できる。

  発地側ではカバーできない決め細かい観光メニューの提案を行う着地型観光に大きな可能性がある。新しい観光メニューを創造できる観光地づくりが必要。また、個人客向けにきめ細かい情報発信をすることがポイントになる。

1.進化する内視鏡手術〜磁石が可能にする遠隔操作の技術〜
秋田大学医学部附属病院第一外科(消化器外科) 講師/久米 真 氏

2.循環型社会に適合したフッ素分離回収システムの開発
秋田県健康環境センター環境部研究員/成田 修司 氏

3.バイオディーゼル燃料の冬季利用に関する研究
秋田県立大学システム科学技術学部 機械知能システム学科 准教授/須知 成光 氏

4.バイオディーゼル車の冬季運用試験について
秋田運送株式会社秋田港営業所 所長/新関 秀雄 氏

5.大豆由来血圧調節物資について
秋田県農林水産技術センター総合食品研究所席研究員/高橋 砂織 氏

6.誘電体と磁性体を組み合わせた情報記憶機能の開発
秋田工業高等専門学校物質工学科 准教授/丸山 耕一 氏

7.低炭素・循環型社会に適応した排水処理の新技術と適用
秋田工業高等専門学校環境都市工学科 准教授/金 主鉉 氏

8.健康な社会づくりを目指した医療機器の開発
秋田県産業技術総合研究センター 嘱託研究員/加賀谷 昌美 氏

9.DNA解析装置
株式会社アクトラス 代表取締役/眞田 慎 氏

 

(2008年12月 vol.329)

 
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財団法人秋田企業活性化センター