全国に800か所以上ある「道の駅」。機能の多様化が進む一方、飽和状態とも言える駅数、マイカー移動の敬遠、高速道路網の充実などにより、その運営は易しくない。徹底した人材教育と地域貢献の精神で、秋田の農産品を県内外の消費者に販売し成果を上げている道の駅十文字「まめでらが〜」。その運営を行う株式会社十文字リーディングカンパニーの代表取締役社長の小川健吉氏にお話を伺った。

株式会社  あお葉フーズ

 地域の元気拠点にしたいと開業

 道の駅十文字「まめでらが〜」は2007年9月に開業。小川社長は十文字町長を務めていた時に道の駅を作ろうと提唱し、開業時から運営の陣頭指揮を執る。「十文字は、交通便が良く、商業者も比較的多い、いい農産物もたくさんある。しかし、これまで外に「出る」ことをしなかった。これからは、この地域を発信する場所が必要だと思いました。それに、行くところが無く家に籠もっているお年寄りの「出る」先にもなると発想しました。市町村合併を経て、国、横手市、地元のみんな、多くの人の協力があって開業できたんですよ」。
 柔軟で効率的な運営のため社長が譲らなかったのが、完全な民間企業としての起業だった。「道の駅を地域の元気の拠点にしたい」という思いに賛同した地域有志が出資し、運営会社の株式会社十文字リーディングカンパニーが誕生したのだそうだ。

 入り口が一つの秘密

 同駅は、正面の入り口から入ると、観光情報と道路情報を発信する多目的ホールがある。奥には十分な数を備えるトイレ。多目的ホールの右手には、農産物等の産直コーナーやお土産販売店。左手には、横手やきそばも供するレストランコーナーがある。
 多目的ホールを地域のサークル活動に無償で貸し出し、毎日なにかが催される賑わいを作り、地域の人と観光客がともに楽しめるスペースとしても両者に喜ばれているという。
 「この道の駅は、出入口が1つなんです。実はこれが珍しく、コーナーごとに建設する省庁が異なるために、出入口もそれぞれに設置されていることが多いんです。しかし、お客様を迷わず誘導し、その動線を利用した直売コーナーやレストランへの誘客を実現するため出入口は1つでなければいけないと主張したんです」。社長の話すとおり、ちょっとトイレ休憩、と立ち寄っても、多目的ホールの催事、直売コーナーの品揃えやレストランのメニューを必ず目にすることができる造りなのだ。

 産直!ただの産直じゃない!

 同駅は、年商約4億5000万円。最も来客が多い夏の土日は産直コーナーは約120万円/日を売り上げる。好調の秘訣は人材教育だ。社長は、『うちはスーパーではない。地域から集めた商品について、お客様に語ることができるようになろう』とスタッフを指導している。生産者情報の掲示はもちろん、数多くの試食を用意したり、『今日入った〇〇さんのパウンドケーキ、おいしいですよおお〜』といった元気な商品のPRなど、勉強を怠らないスタッフの活躍によって、顧客が実感・納得して商品を選べる売り場となっている。
 産直コーナーの商品は、農産物の会員約172名、漬物や菓子など加工品の会員約80名から提供され、売上の15%(横手市外は20%)とラベル代の一部を同社に納める仕組みになっている。「会員さんから良いものを提供してもらうためには、安心して品物を出せるという信頼を得ることが不可欠です。商品の種類や価格設定を会員に一任することで会員が販売に積極的になれる仕組みを作る一方、他の会員の商品に触れてはいけない、といった決まりを設けたり、スタッフがどの会員とも公平に接するよう徹底するなど、管理体制を確立しています。会員とスタッフの役割をはっきりさせることで信頼関係が生まれ、より良い農産物を並べることができています」。

 十文字の産直、東京へ行く

東京での出張産直の風景

 同社が9月から新たに取り組んでいるのが、安全で安心な美味しい産地直送の果物や野菜を、都会の消費者に味わってもらおうという産直の出張だ。十文字の農産物の認知度アップと固定ファンの獲得を目指し、すでに県のアンテナショップなどで7回実施した。身の締まった県南産のリンゴ、知っている人には懐かしいいぶりがっこなどの漬物。「認知度の低い東京での販売は簡単ではないですね。でも、一度食べてもらえればその品質に満足してもらえると確信しています。秋田県の人口が減っているのですから、県内消費だけでは成長はありません。首都圏の人に十文字、秋田の味を知っていただくことが、産地に貢献できる産直だと思います」と社長は言う。
 十文字の人が「まめでらが〜」と言って道の駅に「出て」来た。生産者からは、高い品質の農産物が「出て」来た。今度は、全国に十文字、秋田の農産品を「出す」時だ。売れないのではなく、売っていなかっただけではないか。売れるものを売る挑戦は続く。

 

 

CORPORATION DATA

道の駅十文字 株式会社十文字リーディングカンパニー●道の駅十文字 株式会社十文字リーディングカンパニー 
〒019-0529 横手市十文字町字海道下21-4
TEL.0182-23-9320 FAX.0182-42-3847
国土交通省 道の駅HP http://www.michi-no-eki.net/


(2009年2月 vol.331)

 
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