長引く景気の低迷により、限られた消費者のパイの奪い合いが激化している。こうしたことは当県においても例外ではなく、中央資本の大型店・コンビニエンスストアなどの相次ぐ出店により、地元商業者は厳しい戦いを余儀なくされている。そんな中、自らの生き残りと地元消費者の利便性に資するため、協同組合八竜ショッピングセンターが昨年12月8日、県内5番目となる共同店舗「八竜ショッピングセンターポポロ」をオープンさせた。今号では、同組合理事長の三浦長生さん(44歳)に話を聞いた。

協同組合八竜ショッピングセンター理事長 三浦長生 氏

県内5番目の共同店舗

 昨年12月「ポポロ」は県内では5番目、また山本郡南部としては初の共同店舗として、町内・近隣地域消費者の熱い期待を受けオープンした。オープン当日は、約250台収容の駐車場が開店から1時間で満車となり、最終的にはレジ通過数で約7,000名の来店を記録するなど、盛況のうちに閉店時間を迎えることができたという。

 理事長の三浦さんは「当初は、ここを近隣型ショッピングセンターと位置づけて考えており、平日の来店客数が多いと予想していましたが、ふたを開けてみる

と完全な土・日型(平日約500人、休日約2,000人)で、客単価も思ったより低いなどの違いもありました。

しかし、オープン記念セールから、年末商戦、お正月商戦とこなしてきた現在、当初計画の売上、来店客数などの見込み数は、ほぼクリアしています」と笑顔で語る。消費者はもちろん、三浦さんをはじめとする組合員全員が待ちに待った「自分たちの城」を順調に滑り出せた安堵感が言葉の端々に満ちていた。

地元購買の流出に歯止めを

 そこで湯川さんは、同じ境遇にある同業者に、スクラムを組んで新たな店舗で頑張ろうではないかと声を掛けたが、賛同は簡単に得られなかった。後継者難に加えて長引く売上高の低迷で、多くの商店が疲弊していたのである。そして、最終的に集まったのが現組合員の6社である。

 出店の話が出てからオープンまでに要した時間は、僅か2年半。共同店舗の開業には5年はかかると言われる中での超スピード開業だ。しかし、カリキュラムを明確にした延べ10カ月に渡る勉強会を織り込むなど、短時間ではあるが確実に準備を進めてきた。その間様々な問題をクリアしてきた訳だが、湯川さんの求心力とリーダーシップに負うところが大きい。

地元購買の流出に歯止めを

八竜町は県北西部に位置し、昭和30年の鵜川村、浜口村の合併により出来た町であり、日本海に面した平坦な地形を活かし、町土の約50%がメロンをはじめとした農地として利用されている農業町。

 商業的には、合併前の鵜川地区か浜口地区のいづれかの集落にしか商圏を持たない商店が多く、商店街の集積という点では他地域と比較し、若干の弱さが指摘されてきていた。加えて、能代・男鹿など当町を取り巻く周辺市町村に大型店・ロードサイド店が増加、消費者の流出が顕著になってきていた。こうした状況に危機感を抱いた地元商業者が「地元購買率の流出に歯止めをかけ、町の小売商業を活性化する」ことを目的として、本格的に共同店舗構想に着手したのが平成7年度のこと。しかし「ポポロ」オープンに至るまでの道のりは長く、数多くの紆余曲折があったという。

組合員に生まれた「団結力」

 芽生えた危機感を背景に、当初は全16名の有志が賛同者として名乗りを挙げた。だが、構想実現に向けて進んでいくうち、様々な理由で脱退者がでてきてしまい、その後新たな出店希望者を3回公募で募ったが、反応はほぼゼロに近かった。こうした厳しい状況において「出来るだけ町内の業者でやりたい」という参加者の気持ちは揺らぎ、悩んだという。そこに国・県から「これからの共同店舗は1町だけをターゲットにしたのでは立ち行かなくなる。もっと町外、そして全県を視野に入れた店づくりをしていくべき」との助言・指導があり、「あくまでもお客様の利便性に資するべき」という観点から、能代市からも2社の組合員を迎え入れた。

 しかし、最後まで残った地元の組合員にスーパーと競合する「鮮魚」を取り扱う方がいた。通常であれば「スーパーが入るので今回は加入を見送って欲しい」となるのだろうが、当組合では違った。加入組合員全員で出資、新会社を設立し「100円ショップダイソー」をこの組合員の方に任せた。「何事も組合員全員で話し合い、相談し、進めるのが当組合の有り方です」。『雨降って地固まる』、オープンまでに多くの苦労があった分だけ、それらを解決していくためにメンバー一人ひとりに団結力・協調性が生まれたのである。

「ポポロ」は「人々」

オープンに先駆け当組合では愛称の募集を行い、数ある候補の中から「ポポロ」と決めた。これはイタリア語で「人々」を意味する言葉であり「町民をはじめとするお客様が数多く集い、楽しめる場所にしたい」という願いがこもっている。

地域に密着した「みんなの店」

 「ポポロ」は「ゆったり・生き生き・安心・便利」を4本柱とした「くらしの応援団」がコンセプト。地域に密着した店にするため、現在7店舗で働く合計70名のうち、約9割の地元雇用創出を実施。また「八竜中学校美術部」の生徒さん達に、店内に飾る「壁画」制作を依頼。設置後も好評で「町民みんなの店」として着実に根差しはじめている。

 今後は「お客様にもっとご来店いただけるように、不足業種の誘致にも努めていきたい」、「組合が成り立たなければ、自分の商売も成り立っていかないという意識の定着をはかるため、7店舗の経営者が参加する会議および店長会議の毎週1回の定例開催を続けていきたい」と語る三浦さん。「ポポロ」を八竜町の「顔」として愛される店にするため、一層の研鑽に余念がない。

 

 

CORPORATION DATA
■組合名 協同組合八竜ショッピングセンター 
■所在地 山本郡八竜町浜田字東浜田324 
■理事長 三浦長生
■電  話 0185-72-1050
■FAX 0185-72-1051
■事業内容
生鮮食品館テラタ(総合食品スーパー)、
グルメコートわたぼうし(ファーストフード)、
リカーショップ荒川(酒類)、
菊宏(衣料品)、
くすりのサンキュウ(薬・化粧品)、
100円ショップダイソー(雑貨)、
ベーカリーメルシー(パン・菓子)
の7店からなる共同店舗。

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